ジェームズ・キャメロン監督と言えば『タイタニック(1997。原題:Titanic)』や『アバター(2009。原題:Avatar)』などを製作した巨匠です。
『タイタニック』はもう22年前…当時、まだお高かったビデオデッキが自宅に導入されたばかりで、記憶している限りでは唯一タカノツメ家が購入したビデオです。懐かしい…
そんなジェームズ・キャメロン監督の最新作が『アリータ:バトル・エンジェル(原題:Alita: Battle Angel)』(2019年2月22日(金)日本公開)です。
本作は同監督の最新作ということで、映画館でも短い予告ではなく長めの予告が流されていました。そりゃ、「『アバター』の監督の最新作」と言えば、なんか観てみようかな?っていう人も出てくるでしょうからね。
かくいう自分もそのタイプ。正直、ジェームズ・キャメロン監督作品はまだほとんど見たことがないので、そういうことなら、という感じですね。
そんな『アリータ』。公開間もなく観に行ったのですが、観終わった直後の感想がコレ。
『アリータ バトルエンジェル』観終わった。
体感的にそろそろ終わる時間では?と思いつつ、展開的にはまだ終わらないよね?と思ってたけど、体感のほうが正解。
まさかの尻切れ…決着しない…
続編あるのか…?早くも今年初のモヤモヤ映画…
— タカノツメ (@takanotsume119) 2019年2月23日
うん…
面白いには面白かったんだけど…
えっ…?うん…えっ!?
という感じです。
なんでかはさすがにネタバレが過ぎるので伏せますが、とにかく「えっ?ここで終わり?」でした。ツイートしている通り、尻切れなのです。
インド映画の『バーフバリ 王の凱旋(2017。原題:Baahubali 2: The Conclusion)』でも、「まさかこれで終わらないよね?結構、時間経ってるけど…」となりつつも、無事完結したので、そのパターンを期待したのですが…(『バーフバリ 王の凱旋』はそもそも完結編だったので、終わるのは確実でしたが、「3部作だったっけ?」と不安になる展開でした)。
本作は続編がないと完全にダメなやつ。続編を作るに値する興行収入を得られるのか、続編を作る意思はあるのか…などいろいろな問題が絡んでくるので、これで終わりも十分あり得る話なのですが…
『アリータ:バトル・エンジェル』公開時点では前後編とか3部作とか、そういった話はまったく出ておらず、本作だけで物語が完結すると思っていただけにモヤモヤ感がハンパじゃないです。
そのため、中途半端な終わり方が好きじゃない方は観ないほうがいいと思います。
正直に言うと、以前記事を書いた『アクアマン』や『ファースト・マン』みたいに映画館で絶対観た方がいい!という作品ではないかなぁ…と思うので、レンタルなり動画配信なりが始まってから見る、あるいは続編が決まった頃になって初めて見るとかでも全然いいかな、とは思います。
『アリータ:バトル・エンジェル』配信先一覧 | |||
動画配信サービス | 配信状況 | 見放題 | 配信先 |
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構想から○年でようやく完成
予告を見たか、そもそも原作を知っている方であればご存知だと思いますが、『アリータ: バトル・エンジェル』はジェームズ・キャメロン監督のオリジナル作品ではなく、『銃夢(ガンム)』という日本の漫画が映像化されたものです。
『銃夢』は木城ゆきと氏がビジネスジャンプに1991年~1995年に連載していた作品です(後に続編として『銃夢 LastOrder』が2000年~2014年(ウルトラジャンプ連載開始、2011年3月22日よりイブニングに移籍)が連載されている)。
今回の『アリータ』はそのほんの一部分のみが描かれています。
本作を映像化したいと切望し始めたのは今から実に25年も前の話というのだから驚きです。2018年(第90回)アカデミー賞で作品賞などを受賞した『シェイプ・オブ・ウォーター』のギレルモ・デル・トロ監督から原作を見せられ、すぐさま映像化したいと考えたとのこと。
最終的に2000年暮頃に作者の木城ゆきと氏が契約書にサインをして契約が成立しました。
そこから公開まで19年ほど経っているわけですが、もちろん、なにもしていなかったわけではありません。
今回、ロバート・ロドリゲスが『アリータ』の監督を務めていますが、彼が言うには、本当はジェームズ・キャメロン本人が2005年に作るつもりだったそうです。
しかし、同時制作していた『アバター』が大ヒットした関係で続編を作らざるを得なくなったため、着手できなかったとのこと。
ちなみに、『アバター』は5作まで作られることが発表されています(『アバター2(仮)』は2020年12月18日、『アバター3(仮)』は2021年12月17日に米国公開予定。第4作は2024年12月20日、第5作は2025年12月19日に米国公開されると告知されている)。
なぜロバート・ロドリゲスが監督を務めることになったのか
実は、ジェームズ・キャメロンは、いつか自分が監督をするつもりで脚本を書き上げていました。同氏は自分が監督するためにしか脚本は書かない、つまり他の監督のために脚本を書くことはしないというタイプなので、自分で映像化する気満々だったわけです。
しかし、先ほど書いたように『アバター』に注力しなければならなくなったこと、さらにジェームズ・キャメロン監督が既に書きあげていた脚本のままだと3時間以上の映画になる長さだったそうで、手つかずのままになっていたわけです。
そんな脚本に手を加えて短くしたのが25年以上の付き合いであるというロバート・ロドリゲス監督。
2015年に遊びに行った際、脚本を読ませてもらい、長すぎることに悩んでいたのでそれを短くしたのがきっかけとのこと。
この時は仕事ではなく、自分の勉強のためにやった(勉強なのでもちろん無償で対応)ものを見せたところ、ジェームズ・キャメロン監督が気に入り、その流れでロバート・ロドリゲスに監督のオファーを出したという経緯があります。
当時の技術力ではアリータを表現できなかった…
『アリータ』と言えば、予告からも話題となっている大きな瞳です。
『銃夢』を映像化しようとした当時、この目を再現することが技術的にできなかったそうですが、それでもジェームズ・キャメロン監督は初期のアートワークから主人公のアリータを大きな瞳で描いていたそうです。
それだけ、同監督はアリータを忠実に再現することにこだわっていたのです。
感想を見ると、目が大きいことが気になる、あるいは怖いという声もあります。
目がでかすぎるんだよなぁあとちょっと目が小さかったら実写並み
— 隊長 クラロワ @本名はセフィロス (@Pwuqr9pSRGG42PF) 2019年2月21日
アリータ目のサイズが大きすぎて怖い
— カステラ (@kandentikasute) 2019年2月22日
なんか一緒にアリータ見に行くことになりそうだったからバイトあるって言って帰ってきた
アリータは目が大きいのが気持ち悪くて見たくなかったのよね— はら (@harada0018) 2019年2月25日
ただ、これは原作へのリスペクトであり、「これは絶対に実現しなければならない」といった意気込みからだとか。
私は映画を観る前に情報収集をしないタイプなので、このことは後日知りましたが、個人的には目が大きいことで人間ではなくサイボーグであるという認識を持たせるという意図があるように感じました。
そのため、アンバランスすぎる、目が大きすぎて人間っぽくない、という感想にはちょっと「う~ん…」と感じてしまうところはあります。感じ方は人それぞれなので、そこを否定するつもりはまったくないのですが。
一方で、最初は怖かったけど観ている内に引き込まれていった人もいるようですね。
アリータ目大っきすぎて不気味って思ってたんだけど、本編観たらめちゃくちゃ可愛いじゃんってなった。好き。 pic.twitter.com/bTFZWv4gt9
— ひま (@himajin_Milla) 2019年2月21日
この辺は完全に好みの問題なのでどう評価するかは人それぞれといったところでしょう。
時代がアリータを生み出した
先ほども書いたように、『銃夢』の映像化が考えられていた最初の頃は技術的にアリータを再現することはできませんでした。
しかし、現在はVFXという素晴らしい技術があります。
VFXとは…
ザックリ言ってしまうと、実写映像をコンピューターグラフィック(CG)もしくは合成処理する映像加工のこと。
今回、VFXを担当したのは『アバター』や『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズ、最近で言えば『アクアマン』や『アベンジャーズ』シリーズのVFXを手がけたWETAデジタルです。
WETAデジタルは『ロード・オブ・ザ・リング』のゴラムを初めて人間に近いレベルのCGキャラクターとして、メジャー映画の中に登場させたことで一躍有名になりました。
ちなみに、ゴラムはゼロからCGで作っていると思っている方もいるかもしれませんが、あれは人間(アンディ・サーキス)が演じて、それにCG加工を施して生み出されています。
そんなWETAが『アバター』のVFXを手がけた際、このデジタル技術があれば、『銃夢』の世界を描けるとジェームズ・キャメロン監督は確信したそうです。
アリータは人間が演じて生み出された
映像ではアリータ自身ははフルCGで描かれていますが、パフォーマンス・キャプチャを用いて主演のローサ・サラザールの動きをトレースしています。
これにより、ただ三次元空間における動作を取り込むだけではなく、表情の変化もデジタル化して取り込むことが可能になりました。
劇中でチョコレートやオレンジをかじるシーンがありますが、本気でCGかを疑いたくなるほどくっきりとシワができています。
チョコレートを食べるシーン(メイキング映像より)
実際の映像を見て、アリータを演じるローサは「見られたくない皮膚のくぼみや傷まで、何もかもあるの。私の顔のニュアンスが丸ごと乗り移ってた」と語っています。それぐらい表情をしっかりと捉えているということです。
先ほども書いたように私は映画を観るとき事前に情報を調べないので、実際に映画を観るまでは予告ぐらいしか目にすることはなく、メイキングなども後から見ます。
そのため、本作を観ている間、これはフルCG? それとも、モーション・キャプチャー? と終始考えていました。
肩を組んだり、抱き合ったりするシーンがあったので、おそらく後者だろうとは思いましたが、それほど表情がリアルだったということです。
ここまでできるのであれば、大きな目もよりリアルに近づけてもっと小さくしてもよかったのでは…? という声もわからなくもないですが、ジェームズ・キャメロン監督の原作のアリータを再現したいということを無視したとしても、それならそもそもCGである必要がない、と個人的には思います。
ちなみに、映画に全面的にCGを導入したのは『トロン(1982 原題:Tron)』ですが、この頃はあまりにもお粗末というか、いま見ると思わず苦笑いしたくなるレベルです。
こういうのを見ると、CGの技術の進歩を感じますよね。
日本の漫画が原作でサイボーグという共通点が多い『ゴースト・イン・ザ・シェル(2017 原題:Ghost in the Shell)』ですが、こちらはCGでキャラクターを造形せず、ミラ・キリアン少佐(草薙素子)を演じたスカーレット・ヨハンソンそのものの姿で作品が描かれました(長編アニメ映画『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』(1995)は『マトリックス』(1999)に影響を与えていることで有名。また、原作である『攻殻機動隊』は1989年が初出となっており、『銃夢』とほぼ同時期に始まっている)。
作品そのものが違うのでどっちがいいとか悪いとか一概に比較できるものではありませんが、テーマが同じということで見比べてみるのはいいかもしれませんね(個人的に『ゴースト・イン・ザ・シェル』は微妙すぎましたが)。
『アリータ: バトル・エンジェル』は実際よかったのか…?
尻切れすぎやしないか…!?
ということで肩透かしをくらったのは冒頭で書いた通り。
そのため、個人的にはストーリーとしては正直低評価です。中途半端な幕切れをするのであれば、某CMのように「それさぁ、早く言ってよぉ」と言いたくなりました。
本気の本気で続編なかったら、そりゃないわと言いたくなる作品です。
また、原作ファンはこの作品を別物として観たほうがいいでしょう。
主人公のガリィの名前がアリータに変わっているのは言うまでもなく、他にもイド・ダイスケがダイソン・イドになっていたり、さらにそのイドにいないはずの妻(厳密には元妻)がいたりと変更が加えられているためです。
原作に忠実ではないと認めない!という方は絶対に観ないほうがいいです。
映像でいうと、CGをふんだんに駆使して描かれるリアルな街並みや人々の生活、リアルな人間の中にCGのアリータを溶け込ませようとする試みは非常に面白かったです(これを違和感と感じるかどうかは人それぞれということで)。
個人的には物語の中身というよりも、映像技術の革新を楽しむ作品といった感じがします。
あとは、アクションシーンは爽快なので、そこだけ楽しむのもいいかな、といった感じかと。
監督のロバート・ロドリゲスはアクションシーンに定評があり、なによりも今回も重要なシーンであるバーのアクションシーンは『エル・マリアッチ』を始めとして監督の得意とするところ。
『今までのどのバーファイト全てを超えてやるんだ』とも意気込んでいたようで、その気合の入れっぷりが映像からも伺えます。
まとめると、
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といった感じ。
要するに可もなく不可もなくな作品というのが個人的な評価です。
とはいえ、中途半端な状態ではあるので、もし続編が出たら映画館でまた観ようと思います。

週末は映画を観て過ごす30代半ばの独身男子。観たい映画があれば映画館にGO!なければ週末DVDで過去作を観ています。吹き替え、邦画は観ない派。ホラーは嫌い、他は基本ジャンル不問。
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