デイミアン・チャゼル監督最新作『ファースト・マン』を『ラ・ラ・ランド』つまらない派が観た感想 | VODの殿堂

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デイミアン・チャゼル監督最新作『ファースト・マン』を『ラ・ラ・ランド』つまらない派が観た感想

   
 

人類で初めて月面着陸を果たした男の物語を『ラ・ラ・ランド(2016。原題:LA LA LAND)』のデイミアン・チャゼル監督が描いた『ファースト・マン(原題:First Man)』が2019年2月8日(金)に公開されました。

主演は『ラ・ラ・ランド』のライアン・ゴズリングとなり、2作連続でタッグを組むことになりました。

世の中では大絶賛されている『ラ・ラ・ランド』は、正直、個人的には「うーん…」な作品でしたが、嫌いではない監督なので、私タカノツメは予告を見た段階から、観に行こう!と決めていました。

そんな『ファースト・マン』。

人類で初めて月面着陸を果たした男の物語と書きましたが…

ここで問題です!

Q1.人類で初めて月面着陸を果たした人物の名前は?
Q2.上記の人物が乗っていた宇宙船の名前は?

答えはCMの後!

『ファースト・マン』公開直後に観に行ったけど、前作の『ラ・ラ・ランド』は微妙だった…!


デイミアン・チャゼル監督であれば、デビュー作の『セッション(原題: Whiplash)』のほうが断然面白いです。

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さて、それぞれ答えが出ましたか?

A1.ガガーリン(ユーリイ・アレクセーエヴィチ・ガガーリン)
A2.アポロ13号(アポロ・サーティーン)

ですよね!

…と答えてしまった方は、残念ながら不正解なので、このまま読み進めてください。『ファースト・マン』を観る前に知っておいたほうがいい基礎知識をお伝えしますので。

ちゃんと答えがわかってるよ!という方は、こちらをクリックして陰謀論説、あるいはこちらをクリックして映画の見どころや感想をご覧ください。

『ファースト・マン』に関する基礎知識

さて、先ほどの問題の誤回答は、そう答える人がいるのでは?という勝手な妄想から挙げたものですが、宇宙に興味がなくても何となく聞いたことがある、というぐらい有名な名前であることは確かです。

ガガーリンは世界で初めて有人宇宙飛行に成功した人物で、「地球は青かった」という言葉を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか(厳密に原文を訳すと「空は非常に暗かった。一方、地球は青みがかっていた」といったところ)。

ただ、この言葉が有名なのは日本だけで、日本以外では「ここに神は見当たらない」のほうが有名とのこと。

アポロ13号は月に向かう途中で事故に遭い、ミッションを中断。深刻な状況から乗組員全員が無事に地球に帰還したということで有名です。

これは、「成功した失敗 (successful failure)」として後世に語り継がれています。

アポロ13号についてはロン・ハワード監督、トム・ハンクス主演の『アポロ13(Apollo 13)』を見るのが一番早いと思います。

さて、本題である『ファースト・マン』の主人公であり、人類で初めて月に降り立った偉人と乗っていた宇宙船についてです。

まず、人物についてですが、名前はニール・アームストロングと言います。

ガガーリンはソ連人(ソビエト連邦。現ロシア)ですが、ニールはアメリカ人です。当時は冷戦中で、ソ連とアメリカが宇宙開発競争を行っている時代でした。

先に有人宇宙飛行をソ連にされてしまったアメリカとしては、月面着陸は絶対に先にやってやる!という意気込みのミッションだったわけです。

当時の大統領であるジョン・F・ケネディは1960年代に中に人類を月に到達させるという演説を行ったぐらいです。

We choose to go to the Moon! We choose to go to the Moon…We choose to go to the Moon in this decade and do the other things, not because they are easy, but because they are hard;

【訳】私たちは月へ行くことを選びました!私達は月に行くことを選びます…私達はこの10年間で月に行き、そして更なる取り組みを行うことにしました。それらが容易ではなく困難だからです。
(1962年9月12日 ライス大学フットボールスタジアムでの演説より抜粋)

スピーチ内容のすべてを聞きたい方は当時の動画をご覧ください。

そんな中、立ち上げられた計画がNASAによるアポロ計画(1961〜1972年)であり、見事月面着陸を果たしたのがアームストロングが搭乗することになったアポロ11号です(アメリカ合衆国航空宇宙局(NASA)の有人宇宙飛行計画はアポロ計画以外にマーキュリー計画(1958~1963年)、ジェミニ計画(1961~1966年)がある)。

Twitterを検索してみたら、当時の日本の新聞が手元に残っているという方がいて驚きです。

月面着陸における議論

『ファースト・マン』はアポロ11号が月面着陸するまでを描いていますが、実はアポロ11号が月面着陸したのはねつ造ではないか、という意見があります。

俗に言う陰謀論です。

モバイル機器小売企業e2save社が月面有人着陸47周年を記念する調査(2016年7月20日)を行った結果、イギリス人の約52%がアポロ11号の月面着陸を信じていないという結果が発表されました。

中でも、25~34歳の人たちが最も懐疑的で、73%が歴史的な月面ミッションを精巧なデマであると考えているといった結果が出ました。アメリカ人については、信じていない人は7%とのこと。

陰謀論が唱えられる理由はいくつかあります。

  • 月で撮られたものなのに背景に星が映っていない
  • 真空のはずなのに旗がはためいている
  • 月面の砂にしては足跡がハッキリしすぎている

めちゃくちゃ有名なこの写真ですね。

NASAの公式ホームページより引用

これらは科学者たちがしっかりとした根拠に基づき否定をしています。

  • 星が映っていないのは、月では昼間の時間では太陽光で輝く地表が露出しているためで、星が映っている方がおかしい
  • 真空なのに旗がはためいているのは、真空だと空気抵抗がないため旗がより動きやすくなり、宇宙飛行士が動かした旗が止まりにくいため
  • 月面の砂であるレゴリスは砂が細かく、侵食もないので地球のものよりも固まりやすい性質を持つため

中には『2001年宇宙の旅(1968。原題:2001: A Space Odyssey)』のスタンリー・キューブリック監督が映画撮影用のスタジオで撮影したという話まで出ています。

これはキューブリック監督が死ぬ3日前に撮影され、死んでから15年経ってからではないと公開してはならないとされていた動画が公開されたことによるものです。

インタビュー内容はこちらの”Stanley Kubrick Confesses To Faking The Moon Landings”で読めますが、肝心の部分を抜粋するとこう語っています。

I perpetrated a huge fraud on the American public, which I am now about to detail, involving the United States government and NASA, that the moon landings were faked, that the moon landings ALL were faked , and that I was the person who filmed it.

【訳】私はアメリカの大衆に巨大な詐欺行為を犯しました。それは私がいま詳述しようとしている、アメリカ政府とNASAが関与し、月面着陸が偽造されたものであり、月面着陸すべてが偽造されました。そして私がそれを撮影した人物です。

確かに『2001年宇宙の旅』を制作したキューブリック監督であればあのような写真を撮影するのは可能でしょう。映画監督になる前は写真家でもありましたし(超余談ですが、キューブリック監督は好きな映画監督のひとり)。

また、『2001年宇宙の旅』ではアポロ8号が撮影した月方面から見た地球とまったくそっくりだったシーンがあることで、NASAも驚かされたという逸話があります(同作は1968年4月6日アメリカ公開、アポロ8号の写真は1968年12月24日に撮影された)。

そういったことを加味すると、なおさらこのインタビュー動画に真実味が増します。

ただ、この映像に出てくる人物は晩年のキューブリック監督に似てはいるが別人、という感じがあるため、このインタビュー動画自体フェイクと言われています。

この議論に決着をつける一番手っ取り早い方法はNASAが実際のテープを公開すればいいだけの話ですが、月面着陸という歴史的な瞬間を捉えた映像にも関わらず、長らく行方がわからなくなっており、NASAの調査により2009年にテープを紛失したことが明らかにされました。

また、マザーテープも70年代から80年代に上書き利用されてしまったとされています。

これらが50年経った今でも、アポロ11号が月に着陸したのは嘘ではないかという議論に決着がついていない理由として挙げられます。

ちなみに、『ファースト・マン』ではニール・アームストロングとバズ・オルドリンが月面に星条旗を立てるシーンが描かれておらず、2018年8月29日にヴェネツィアで行われた第75回ベネチア映画祭のプレミア上映後に物議を醸しました。

また、主演のライアン・ゴズリングが「アームストロングが成し遂げた偉業はアメリカの偉業ではなく人類の偉業だと思っています」という発言をしてアメリカ保守層の反感を買うという出来事もあり、スタートはなかなか大変だったようです(ライアンがアメリカ人ではなく、カナダ人というのも反感を買う一因だったのでしょう)。

その後、原作者のジェームズ・R・ハンセンとニール・アームストロングの息子2人が『ファースト・マン』を擁護するコメントを発表したり、バズ・オルドリンが自身のツイッターで当時の写真を投稿しています(バズ・オルドリンは存命。ニール・アームストロングは2012年8月25日に他界している)。

デイミアン・チャゼル監督曰く、『ファースト・マン』はニール・アームストロングの知られざる一面を描くことにフォーカスしており、星条旗を立てるシーンはあまりにも有名なので省いたとのことです。

それが見たいんじゃー!という方はこちらのNASAが公開している映像をどうぞ。

『ファースト・マン』はある重要人物の力を借りて制作された

月に行ったか行っていないか…陰謀論を信じるか信じないかはあなた次第!ということで、ここからは『ファースト・マン』について話していきます。

『ファースト・マン』はニール・アームストロングが月に行くまでを描く作品ですが、こちらはデイミアン・チャゼル監督完全オリジナルではなく、ニール・アームストロングの伝記である『First Man: The Life of Neil A. Armstrong(著者:ジェイムズ・R・ハンセン)』が原作となっています。

それだけだとただ伝記をなぞっただけの作品になっていたかもしれませんが、制作にあたり、本作でも出てくるニール・アームストロングの息子であるマーク・アームストロングとリック・アームストロングが協力しています。

作中で家族のシーンが何度か描かれますが、これはかなり正確に描かれているそう。

デイミアン・チャゼル監督だけではなく、主演のライアン・ゴズリングも息子二人や妻のジャネット・アームストロングに実際に会って、ニール・アームストロングがどういう人物だったかを教えてもらったと言います。

月面着陸という部分だけを見るとSF映画では?と思いがちですが、家族のやり取りや心理描写を多めに入れることでホームドキュメンタリ的な映画に仕上げられています。

SFではなく、ホームドキュメンタリなワケ

デイミアン・チャゼル監督がいろいろと調べていく内に一番面白いと感じたこと、それが家族の側面だったといいます。

先ほど挙げた家族のやり取りなどはまさにそうです。

ただ、『ファースト・マン』が普通の映画ではなく、ドキュメンタリ映画のように見えるのには、家族の協力以外に、もうひとつ理由があります。

それは、クランクインする2、3週間前に主演のライアン・ゴズリングと妻役のクレア・フォイと子役とが、当時のアームストロング宅を再現したセットに一緒に暮らしながらリハーサルを行ったということ。

リハーサルと言いますが、その間にもカメラは回し続けられ、実際にそれを本編でも採用している部分が多々あります。演技っぽくなく、素の感じが出ているのはそのためだそうです。

また、本作はIMAXカメラ(IMAXカメラのレンズは、アームストロングが月面でスチル写真を撮った時に使用したものと同じ型のハッセルブラッドレンズを使用というこだわりぶり!)で撮影されているため映像が美しいのですが、一方で手持ちカメラで撮影するということもしています。

実際に映画館で観るとメチャクチャキレイな映像とそれこそホームビデオのようなちょっと雑な映像が混在しています。

手持ちカメラで家族を追いかけるシーンがあるのですが、そういうところはまさに、という感じです。

本作において、「ホームドキュメンタリ的な映画」というのは非常に重要なポイントです。

なぜなら、SF映画と期待して観に行くとその落差に、「あら?」となる可能性が高いからです。

『ファースト・マン』を観たけどつまらなかったという評価の人は、まさにそっちのタイプだと思います。

映画館で観るか、自宅で見るか

映画は絶対に映画館で観るべき!というものと、正直、家で十分、という2パターンがあります。

『ファースト・マン』はというと…

絶対に映画館で観るべき!です。

ストーリー面だけを見ると、人によってはレンタルなり動画配信なりが始まってからでも十分!となるかもしれません。

しかし、ロケット発射時の轟音は言うまでもなく、緊張感は巨大スクリーンのほうがしっかりと伝わると思います。

なにより、本作の最大の見どころとも言える月面着陸のシーン。

無音で画面いっぱいに広がる月面世界。このすごさは自宅のテレビやパソコン、ましてやスマホでは絶対に伝わりません。

観客全員が月に着陸した。そんな感覚さえ覚えさせるシーンでした。

成功の裏側には…

『ファースト・マン』はニール・アームストロングの伝記ですが、ただ単に彼はすごい!ということだけにフォーカスしているわけではありません。

打ち上げ成功に至るまでの実験や訓練、それをバックアップする家族やスタッフの姿、そして、そういった輝かしい功績の裏で強いられた国民の葛藤なども描かれています。つまり、光だけではなく、影もしっかりと描いているということです。

このアポロ11号が打ち上げられ、月面着陸を果たしたのは1969年、最後に月面着陸を果たしたアポロ17号を見ても1972年12月19日と2019年現在で既に47年も時が経っています。

技術も当時より明らかに進歩しているはずなのに、いまだに月面着陸を果たせないのはなぜか。

最も大きな原因として挙げられるのが、その予算です。

この予算はどこから出たのか。

人類を月に着陸させることは国家プロジェクトであることは既に書きましたが、そこからもわかる通り、費用は税金から捻出されています。

つまり、月面着陸の裏には国民の苦労があったということです。

作中にも出てきますが、アメリカにおける社会文化的および人種的な不平等を扱った歌が作られていることからもそのことが伺えます。

Whitey On the Moon

一部を抜粋すると…

The man jus ’upped my rent las’ night.
(’cause whitey’s on the moon)

No hot water,no toilets,no lights
(but whitey’s on the moon)

【訳】男は夜に家賃を値上げした
(白人が月にいるために)

お湯もトイレも照明もない
(しかし、白人は月にいる)

この『Whitey On the Moon』の歌詞を見ると、当時の苦労が垣間見えます。

さて、月面着陸にはお金が掛かる、という話をしましたが、現在の価値で考えるとどれぐらいの費用が掛かるのでしょうか。

アポロ計画(1961~1972年)で最終的に掛かった費用は約250億ドル、当時は1ドル360円なので、約9兆円もの費用が使われたということになります。

これだけの費用をアメリカ国民が負担して成し遂げた偉業ですから、ライアンの「アームストロングが成し遂げた偉業はアメリカの偉業ではなく人類の偉業だと思っています」に対して怒りを覚える国民がいてもおかしくありませんよね。

現在の貨幣価値で考えると当時の約4倍となるので、仮にまた同じことをやろうとした場合、ザックリと計算して1,000億ドル(11兆円:1ドル110円換算)掛かるということになります。

物価が上がっていることを考えると、もっと掛かることも考えられます。

では、それだけのお金を投じてまで月面着陸をする必要があるのか。

当時はアメリカとソ連(現ロシア)が宇宙開発競争をしていたからこそ行われていたもので、アメリカとしてはソ連に勝利したのでもう行く必要がないのです(事実、アポロ計画は20号まであったが、17号を最後に打ち切られている)。

そういった動機がない状態で、誰がこの巨額な資金を出そうとするのか。

約50年もの間、月面着陸を果たしていないのはそういった現実的な問題が絡んでいるのです。

『ファースト・マン』を観てから見るとさらに面白い!…かも?

最後に、『ファースト・マン』を観てから見ると面白い映画を紹介します。

といっても、すでに最初のほうでも書いた『アポロ13』です。

アポロ11号と同じアポロ計画であること、アポロ11号の後に打ち上げられたものであること、といった単純な話ではなく、アポロ13号の船長であるジェームズ・A・ラヴェルJr.(以下、ジム)はアポロ11号の予備搭乗員だったためです。

つまり、例えばニール・アームストロングが風疹に感染して搭乗できないといったことが起こっていたら、人類で最初に月面着陸を果たしていたのはジムだったかもしれないのです。

『アポロ13』では、アポロ11号が打ち上げられる瞬間を、ジムがテレビを通して見るという描写もあります。

他にも、主席飛行管制官と各管制官とのやり取りを忠実に再現したり、劇中に出てくるニュース映像やテレビ番組『The Dick Cavett Show(ディック・キャヴェット・ショー)』はすべて当時の実際の映像を使用しています。

私は『ファースト・マン』の予告を見たあたりで『アポロ13』をレンタルして見たのですが、もしかしたら『ファースト・マン』を観てからのほうがより面白く見れたのでは?と思えてなりません。

『アポロ13』単独で見ても面白かったですけどね!

もし、『ファースト・マン』を観るなら、こちらも併せてチェックしてみてください。

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