合唱コンクールが近い知世は、放課後練習に打ち込んでいました。
今回のコンクールでは、知世はソロで歌うことが決まっていたのです。
しかし練習の最中、知世の声が全く出なくなってしまいます。
犯人はクロウカードで、知世の声が気に入ったため、盗んでしまったらしいのです。
自分のせいで知世を巻き込んでしまったと落ち込むさくらに、小狼がある策を提案します。
それは【歌】を使用して、犯人をおびき出そうという作戦でした。
小狼の作戦は成功し、知世の声は無事に戻るのでしょうか?
さくらと小狼が急接近するお話です。
落ち込むさくらの力になろうとする小狼は、とてもカッコイイですよ!
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あらすじ
【元の姿】
今日は友達と一緒にお花見。
お弁当を食べたり、話をしたり、和気あいあいと楽しそうな姿だ。
知世は母の会社で作った試作品のマイクを持ってきていて、皆で順番に歌を歌っている。
最後に知世が歌い、その美しい光景に誰もがうっとりとした表情を浮かべていた。
そんな知世の歌声を、桜の木から覗いている存在がいることに、さくらと小狼は気が付くことができなかったのである。
「ええなぁ、お花見!わいも行きたかった!!」
夜、さくらの髪を乾かしながらケルベロスが吠える。
ケルベロスの存在をしらない千春たちも一緒だったため、自宅でお留守番だったのだ。
「ねぇ、元の姿戻ったら、お昼にお花見できる??」
さくらの問いかけに、ケルベロスはギクリと体を震わせる。
「もっと無理や…。」
ケルベロス曰く、元の姿はすごくカッコイイらしいが、クロウカードを全部集めるまでお預けとのこと。
さくらはムッとした表情を浮かべつつ、ケルベロスから離れてドライヤーや鏡を片付けにいく。
「けど…その時は奴にも会うことにはなるやろうけどな…。」
ケルベロスは夜空に輝く月を見上げて呟いた。
【観月】
翌日の放課後、さくらは知世に「クラブが終わったら一緒に帰ろう。」と声をかける。
しかし知世は合唱コンクールの練習で遅くなるかもしれないらしい。
「今度の課題曲難しくて…。」
課題曲は合唱なのだが、序盤に知世がソロで歌う部分があり、せっかくの合唱を台無しにしたくないから一生懸命練習しているそうなのだ。
「それに…私あの曲大好きなんです。」
「大丈夫!知世ちゃんならきっと素敵に歌えるよ。」
さくらと知世は、それぞれのクラブに向かうため、渡り廊下の所で別れる。
「木之本さん。」
知世の姿が見えなくなったタイミングで、観月が声をかける。
「大道寺さん、コーラス部の練習?」
「はい。」
さくらが答えると、観月は微笑みを浮かべたまま、言葉を発する。
「大道寺さん、大変だと思うから、力になってあげてね。」
「え…?」
言葉の意味がわからないさくらだが、観月はそのまま校舎の中へ消えて行ってしまった。
【出なくなった声】
放課後、チアリーディング部の練習中、さくらはポンポンを遠くに投げ飛ばしてしまった。
練習から離れ、ポンポンを取りに行くと、音楽室で練習している知世の歌声が聞こえてくる。
(知世ちゃんの声だ…きれいな声だなぁ…。)
桜がもっとよく聞こうと校舎に近づいたとき、風が吹き、近くにあった桜の木が揺れる。
「っ…クロウカード…。」
さくらはすぐに周囲を観察。
するとピンク色の何かが校舎に侵入していく姿を目撃したのである。
「どうしたの大道寺さん!?大道寺さん、大道寺さん!!」
先生の慌てた声に、さくらはポンポンを放り出して駆け出す。
「知世ちゃん!!」
音楽室の床に、知世が喉を押さえてしゃがみ込んでいる。
「………。」
知世はパクパクと口を動かしているが、声が全く出ていない。
「声…出ないの…?」
さくらの問いかけに、知世はすぐにコクコクと頷いた。
「そんな…。」
その後、知世はSPのお姉さんたちに連れられて帰って行った。
【盗まれた声】
自宅に帰ったさくらは、ケルベロスにクロウカードの気配がしたことと、知世の声がでなくなってしまったことを報告。
知世は病院で診察を受けたそうだが、まだ声は出ていないらしい。
「その時見たクロウカードの仕業やな。感じたんやろ?気配。」
「私が、もっと早く気づいて、カード封印していたら…。」
「元気だし。さくらがそんなんやったら、知世も落ち込んでまうで。」
ケルベロスは俯くさくらの頭をよしよしと撫でる。
「う~ん、声がでえへんようになったちゅうことは…間違いない。【声ーボイスー】のカードやな。」
【声】は知世の声を気に入り、盗んでしまったのだ。
ケルベロスの説明を受けるさくらの脳裏に、観月が浮かぶ。
「観月先生が言ってたのって、この事だったの…?」
「ん?わいもいっぺん会うた方がええかもしれんな、その先生に。」
【大道寺家】
知世は自室のベッドで、ジッと楽譜を見つめている。
その表情は、ひどく落ち込んだ様子だ。
「知世!!」
その時、廊下を走ってくる足音と名を呼ぶ声が聞こえたので、知世はそっと楽譜を枕元に隠した。
やってきたのは普段忙しくて、なかなか自宅に帰ってこない園美だった。
「声が出ないんですって!?お医者様は風邪じゃないかって言ってたけど…熱は?寒気は?どこか痛いところは?」
必死に尋ねる園美に、知世はニコリと笑って首を振る。
園美はひとまずホッとしたようで、肩の力を抜いた。
「明日は会社休むわ。心配だし。」
園美の言葉に、知世はスケッチブックを取り出して返事をする。
それを見た園美は、困ったように笑ってから知世をギュッと抱きしめた。
「大丈夫じゃないでしょう。こんな時くらい、思いっきり甘えてちょうだい。」
「あなたは、私のたった一人の娘なんだから。」
【さくらと小狼】
翌日、知世は学校を欠席していた。
やはり声は出ないままだった。
クロウカードの封印するまで戻らないことを理解していても、知世の姿が見られなかったことにさくらはひどく落ち込んでいた。
放課後、さくらは音楽室へ向かったが、クロウカードの気配を感じることはできなかった。
「なにやってるんだ?」
「李君…どうしてここに…。」
「お、お前が気になって…っ。ク、クロウカードを見つけたのかと思って…。」
顔を赤く染め、そっぽを向いてそう言うと、さくらは俯いてしまった。
その後、公園に場所を移動した2人。
さくらは小狼に、知世の身に何が起こったのか説明した。
「大道寺が休んでいたのは、クロウカードのせいだったのか。」
「知世ちゃん、今度のコンクールは合唱で、ソロのところがちゃんと歌えないと、せっかくの歌が台無しになっちゃうって言ってたのに…。」
さくらはずっと知世の声がでなかったらどうしようと、不安でいっぱいだった。
「泣いてもしょうがないだろう。クロウカードを封印する方法を見つけるんだ。俺も一緒に考えるから。」
小狼の言葉に、さくらは顔を上げる。
「俺はただカードを集めたいから…。」
「…ありがとう。」
さくらの視線に耐えられなくなった小狼が勢いよく立ち上がる。
2人は知世の様子を確認するため、大道寺家へ向かうことにした。
【知世の指摘】
大道寺家を訪れると、元気そうな知世が二人を出迎える。
さくらが具合を尋ねると、知世は笑顔でハンドサインを出す。
「やっぱり声出ないんだね…ごめんなさい、私が早く気が付かなかったから…。」
落ち込むさくらを見て、知世はすぐにスケッチブックに文字を書きはじめる。
『さくらちゃん、元気出してください。さくらちゃんが悲しい顔をなさってますと、私も悲しいですわ。』
知世はにっこりほほ笑む。
「コンクールまでにカード捕まえるよ!絶対!!」
さくらの言葉に、知世はコクリと頷く。
それは知世がさくらを信頼している証拠である。
「こんにちわ。」
園美がさくらと小狼の為にお茶を運んできた。
初めて園美と顔を合わせる小狼は、立ちあがって挨拶。
さくらは園美を手伝うため、園美の元に向かった。
「さくらちゃんは座ってて?」
「お手伝いさせてください。」
笑顔で園美に手伝いを申し出るさくらを、小狼はジッと見つめている。
そんな小狼に向け、知世はスケッチブックに言葉を綴る。
『ずっと見てらっしゃるんですね。さくらちゃんのこと。』
知世の指摘に、小狼は顔を真っ赤にして動揺してしまうのだった。
【声ーボイスー】
さくらと小狼は、知世の部屋を行ったり来たりしながら、クロウカードを捕獲する方法を考える。
「ボイスは気に入った人の声を全部盗まないと気が済まないんだって。」
そして【声】は盗んだ声を奪われないように、姿を隠してしまうそうだ。
桜と小狼は必死に【声】を探す方法を考えるが、いいアイディアが浮かばず、焦りが募る。
『元気出してください。』
そんな2人に、知世は笑顔で言葉を伝える。
知世の優しさに、さくらの瞳に涙が溜まり始めた。
「知世ちゃんの方が…ずっと悲しいのに…。」
「これで2回目だよ…。知世ちゃんばっかり、知世ちゃん、ソングの時もカードにマネされて!!」
「ソングだ!!ソングを使うんだ。」
さくらの叫びを聞いた小狼に、【声】を捕獲するアイディアが浮かぶ。
小狼は【歌】に知世の歌が録音されていたことを思い出したのである。
【歌】を使用して盗んだはずの知世の声が聞こえて来たら、【声】をおびき出すことができると告げた。
「我に至上の歌声を届けよ!ソング!」
【歌】は知世の声で歌い始める。
その澄んだ声は遠くまで響き渡り、隠れていた【声】をおびき出すことに成功。
さくらたちは【声】を封印するため動きだす。
小狼は【声】が逃げられないように部屋に結界を貼り、さくらは杖を振り上げる。
「汝のあるべき姿に戻れ!クロウカード!!」
【声】を封印すると、カードからピンク色に発光する何かが飛び出してくる。
それは知世の元に向かい、喉のあたりに吸い込まれていった。
「……さくらちゃん。」
「本当に…ありがとうございます。」
知世は泣き続けるさくらをギュッと抱きしめ、しっかりとお礼を伝えたのである。
【合唱コンクール】
後日、合唱コンクールが開催された。
さくらは舞台袖にいて、知世を激励していた。
「私、心を込めて歌います。この歌は、さくらちゃんの為に歌いたいと思った歌ですから。」
知世は舞台に上がり、スポットライトを浴びる。
美しいピアノの旋律のあと、知世の澄んだ声がホールの中に響き渡った。
感想
知世の声がクロウカードに気に入られるのは、これで2回目ですね。
それだけ知世の声が魅力的だという証拠ですね。
【歌】が登場した第23話でも紹介しましたが、知世の歌声は本当に透き通っていて、心が浄化されるような歌声ですから、ぜひ一度聴いてほしいと思います。
ですが、大好きな友達が2回もクロウカードのせいで困った思いをするのは、とてもつらいことです。
特にさくらは心優しい女の子なので、自分の傍にいたせいで知世に迷惑をかけたとなれば、落ち込んでしまうのもしょうがないと思います。
しかし、それを慰め支えてくれたのが小狼でした。
「お前にクロウカード集めは無理だ。(第8話より)」と言い放った男の子が、こうも変わるとは思いませんでした。
もともと女の子に優しい小狼ですが、さくらを心配する姿は恋する男の子そのものです。
大好きな人が困っていたら、どうにかしてあげたいと思うのが、恋心というものでしょう。
そしてそれを見守る知世の姿は、まるで聖母のようだと思いませんか?
知世は、さくらに対して恋に近い愛情を持っています。
ですが自分の気持ちを伝えず、さくらの恋を見守り、時に力になり、さくらに好意を抱く小狼も応援する。
こういう心が、知世の歌には表れていたのだと思います。
だからこそ、2枚のクロウカードが知世の声を欲しがったのでしょうね。
第37話は、それぞれの優しさと愛について知ることができたいい話だったと思いました。
今後も、この3人の絆が深くなればいいですね。
アニメ『カードキャプターさくら』クロウカード編 第38話はこちら
アニメ『カードキャプターさくら』クロウカード編 第36話はこちら
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小学生と幼児のママ。常に娘のコスネタを模索中。育児のストレスはアニメ鑑賞と妄想でリカバリー中。今のブームは型月&刀剣乱舞。
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