「ギルバート・グレイプ」のあらすじ・感想・ネタバレ~家族という「重荷と愛」、その間で揺れる青年の心を描いた名作!~ | VODの殿堂

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「ギルバート・グレイプ」のあらすじ・感想・ネタバレ~家族という「重荷と愛」、その間で揺れる青年の心を描いた名作!~

   
 

タイトル:「ギルバート・グレイプ」
公開:1993年
監督:ラッセ・ハルストレム
出演:ジョニー・デップ、レオナルド・ディカプリオ、ジュリエット・ルイス、メアリー・スティーンバージェン 他
閲覧したVOD:dTV(2018年11月30日までは視聴可)

1993年公開のアメリカの映画です。
問題を抱えた家族の生活を背負って生きる青年ギルバート、ある女性との出逢いで自分の人生を見つめ直す姿と家族への愛を描いたヒューマンストーリーです。

主人公のギルバートにジョニー・デップ、そして知的障害を持つ弟役をレオナルド・ディカプリオ。
二大ハリウッドスターが若き日に共演し、特に知的障害を持つ難役をこなしたレオナルド・ディカプリオの演技は必見です!

名作中の名作と語り継がれる傑作「ギルバートグレイプ」
あらすじと感想をまとめてみましたのでご覧ください!

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※配信状況は2019年10月16日(水)時点のものです。
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【あらすじ】

『僕の家族』

24歳のギルバート・グレイプ(ジョニー・デップ)はアイオワ州の田舎町「エンドーラ」で家族と暮らしている。
母親のボニーは昔はこの地方一番の美人だったが、父親が17年前に自殺してから過食症になり、もう7年もの間家から一歩も出ずに食べ続け、200キロを超える巨漢になっていた。
長男のラリーは家を出て、長女のエミーは失業中で、今は太り過ぎて動けない母の代わりに家事を担い、次女のエレンは高校生で反抗期真っ最中。

そして弟のアーニー(レオナルド・ディカプリオ)には重い知的障害がある。
医者からは10歳までもたないと告げられていたが、アーニーはもうすぐ18歳を迎える。
アーニーはすぐに高いところに登ったり、突拍子もない行動をするので一時も目が話せない。
ギルバートは町の小さな食料品店で働いて家計を支えながら、アーニーの面倒を見る日々を送っていた。

もうすぐアーニーの誕生日、今年は盛大にパーティーをすることになり食事中も家族はパーティーの計画話で持ちきりだ。
しかし、気づくとアーニーの姿がない。
窓から庭の木にぶら下がるアーニーの足が見える。
ギルバートはアーニーが木に登っているのを承知で大きな声で「アーニーはどこだ?」と探す。
木の上から自分を探す兄を見て、アーニーはもう嬉しくてたまらない。
ワっ!とギルバートの目の前に飛び降りて驚かすアーニー。
「僕が木の上にいたの知らなかった?」と得意気に言うアーニーにギルバートも「知らなかったよ!」と驚いたふりをする、いつも繰り返すアーニーが大好きな遊びだった。

体は大きくなったが、まるで幼児のようなアーニー。
ギルバートは可哀想な弟のことを心から愛しく思っていた。

『自由の匂いがする彼女』

ギルバートは職場にもアーニーを連れていくし、友人と食事に行くのだってアーニーと一緒。
家でも毎日アーニーを風呂に入れて、寝かしつけるのもギルバートの役目だ。

ギルバートは店の常連客である人妻のベティと不倫関係を続けている。
ベティに対しては恋愛感情よりも、自由のない日々の中での唯一の刺激だった。
店の配達と称してベティの家を訪れては逢瀬を重ねており、もちろんアーニーも一緒だがそんな時は車の中で待たせるようにしていた。

しかし、ある日ベティの家でいつものように抱き合っているとベティの主人が帰宅しギルバートは慌てて飛び出す。
すると車の中にアーニーの姿はなく、パトカーのサイレンの音が響いている。
アーニーは町の中にあるタンクの鉄塔に登っており、警察が出動していたのだ。
警察が説得しても、もっと高く昇る!と興奮気味のアーニー。

しかし、ギルバートが優しく語り歌いかけるとアーニーは落ち着きやっと降りてきた。
アーニーは今までにも何度もこの鉄塔に登って騒ぎを起こしており、町では名物にさえなっている。
警察に、もう二度とさせませんと頭を下げるギルバートだが、アーニーのことは叱らずに優しく抱きしめるのだった。

その様子を一人の女性が興味深そうに眺めていた。
女性の名はベッキー(ジュリエット・ルイス)、町には年に一度旅行者のトレーラー軍団が通過するのだが、彼女もその旅行者の一人だった。
しかし、トレーラーの故障で部品を取り寄せるのに彼女は一週間の滞在を余儀なくされていた。

ギルバートの唯一の友人は修理屋のタッカーと葬儀屋のボビー。
タッカーは町に新しく出来る大手ハンバーガーショップへの就職を考えており、ギルバートも誘われるがアーニーを抱えているので無理な話だ。
ギルバートは彼らとレストランで食事をしている時にベッキーの姿を目撃し、田舎町に似つかわしくない垢抜けた彼女にときめくのだった。

ギルバートが働く店にベッキーが買い物にやってきた。
配達を頼まれ、ベッキーのトレーラーまでアーニーと一緒に向かうのだが、アーニーに対してもベッキーは偏見無く接してくれる。
アーニーがベッキーの買い物を落としてしまい、慌てて謝まって拾うギルバート。
しゅんとするアーニーだったが、ベッキーに「悪いと思ってる?」と聞かれると首を横にふる。
「私も悪いと思わない。だから謝らないで」と微笑んで言うベッキーをギルバートは眩しそうに見つめるのだった。

『僕はこのままでいいのか?』

母のボニーは家の中ではいつもリビングのソファに座っており、寝る時も二階の寝室ではなくソファで眠る。
その場所の床が抜けそうになっているのにギルバートは気づき、ボニーに内緒で友人のタッカーに修理を頼む。
地下室に角材を打ち込むためタッカーに手伝うよう頼まれるが、アーニーは「あそこはパパがいるから行きたくない!」と逃げ出す。
タッカーが「すまなかった、地下室で親父さんが…忘れてたよ」と謝る。
17年前、ギルバート達の父親は地下室で首を吊って自殺したのだった。

アーニーはまたタンクの鉄塔に登ろうとし、制止しようとしたエレンがアーニーを叩いて引きずっているのを見てギルバートは激怒する。
腕をすりむいたアーニーの手当てをしながら、この弟は自分が一生守ろうと心に決めるのだが、帰宅すると家族からは「アーニーをもっと見張らなきゃ」と責められ複雑な想いにかられてしまう。

気が付けばギルバートはベッキーのトレーラーのところに来ていた。
彼女は喜んで迎えてくれ、たくさんの話をしてくれた。
自分と違い、広い世界を見てきたベッキーは身だけではなく心も自由で、そんな彼女と一緒にいるのが心から楽しいと思うギルバート。

夕方になりアーニーを風呂に入れる時間が迫り、すぐに戻ってくると猛ダッシュで帰宅しアーニーに風呂を急かす。
ギルバートはベッキー会いたさに「おまえはもう大人だよ。体だって自分で洗えるよな?」と言って最後まで体を洗ってやらずに、アーニーをバスタブに残したままベッキーのところに戻ってしまう。
二人で夜更けまで話し込み、帰宅しそのまま就寝したギルバートは翌朝まだバスタブの中にいるアーニーを発見する。
震えるアーニーを抱きしめ謝るギルバート、家族からも責められ猛烈に反省するのだった。

『彼女と一緒いたい、けど僕は行けない』

アーニーはお風呂の置き去り以来、風呂を拒否するようになり日ごとに汚れていく。
ギルバートはというと、ベッキーにますます惹かれていき、ベティに呼び出されてももうその気が無くベティはギルバートを取り戻そうとするが無理だった。
それからすぐに、ベティの夫が心臓発作で亡くなってしまい、住民たちからは保険金のためにベティが殺害したのではないか?と噂をたてられてベティは子どもたちを連れて町を出ていくのだった。

ギルバートはアーニーと一緒にベッキーを訪ねる。
アーニーもベッキーを気に入っているので、一緒に遊ぼうといってはしゃぐのだった。
しかし、ギルバートとベッキーが話している間にアーニーがいなくなってしまった。
パトカーのサイレンの音…アーニーはまたタンクの鉄塔に登ってしまったのだった。

てっぺんまで登ったためはしご車での救出となり、迷惑行為として警察に連行されてしまったアーニー。
ギルバートが必死に許しを請うもアーニーは留置場に拘留されてしまった。
アーニーを溺愛するボニーは、警察へ行くために7年ぶりに外へ出る決意をした。
ボニーの気迫に圧されて警察はアーニーを釈放し一安心するのだが、気が付けば周囲からは好奇の視線が集まりボニーの姿を写真に撮る者さえいた。
自分が笑われ者になっていると知り、ボニーはひどくショックを受けるのだった。

ギルバートとベッキーはお互いに惹かれあうようになっていた。
しかし、ベッキーのトレーラーの故障が直っっため明日旅立ってしまうことに。
明日はアーニーの誕生日、ベッキーは「私を引き留めなくていいの?」と言うがギルバートは引き留めることが出来なかった。

『僕の新しい人生』

ギルバートが帰宅すると、家ではアーニーの誕生日パーティ―の準備で大忙しだった。
しかし、アーニーは風呂に入るのを嫌がり走り回ってせっかくエミーが作ったケーキを床に落とし台無しにしてしまう。
仕方なく新しいケーキを買いにいくも、それもまたアーニーにつまみ食いをされてしまった。
ボニーは明日のパーティーは出席せずに部屋でいると塞ぎこんでいる。
明日は誕生日だから風呂にどうしても入れようとするが、アーニーは言う事を聞かず暴れてばかり…
イライラがつのってギルバートの我慢は限界になり、とうとうアーニーを殴ってしまうのだった。

殴られたアーニーもショックだったが、殴ったギルバートはもっとショックを受けて家を飛びだしてしまう。
車でエンドーラの町境まで来たが、やはりそこから先には進めずベッキーの元へ向かった。
すると、アーニーも家を飛びだしてベッキーのところに来ており慌てて隠れるギルバート。
水を怖がっていたアーニーをベッキーは優しく誘い、アーニーに川で遊ばせて体をきれいにさせているのを見てギルバートは安心する。
ベッキーはアーニーを家まで送り、戻るとギルバートを発見する。
「あいつを殴ってしまった」と深く自分を責めるギルバートをベッキーは優しく抱きしめ、二人は朝まで一緒に過ごすのだった。

翌日、ギルバートが戻るとアーニーの誕生日パーティ―はすでに始まっていた。
アーニーはギルバートを見つけると、いつものように木に登り始める。
それに気づいたギルバートは大きな声で「アーニーはどこ?」と探しはじめ、木の上で嬉しそうにはしゃぐアーニー。
しかし、ギルバートの前に飛び降りると、いつもとは違う少し複雑な表情でおずおずとギルバートの胸をたたく。
いつものように「驚かすなよ」と呟いて、ギルバートはたまらずアーニーを力いっぱい抱きしめるのだった。

ベッキーもパーティーに駆けつけ、ギルバートはボニーに彼女を紹介する。
醜い自分を見せたくないと最初はためらっていたボニーも、ベッキーの心根の良さがわかって笑顔を見せるのだった。

その夜、いつもリビングのソファで眠るボニーが二階の寝室へ上がっていくのを家族は驚いて見つめる。
寝室のベッド横たわり、ギルバートに「おまえは輝く鎧を着た王子様だよ」と言うボニー。
そしてアーニーを呼んで、と言うとボニーは目を閉じた。
しかし、アーニーが側に来た時にはもうボニーは息を引き取っていたのだった。

突然の母親の死に家族は悲しみに暮れるなか、ボニーの遺体は重すぎて運び出すのが困難だと警察に言われる。
クレーン車などで運び出すかもしれない、大騒ぎになって母がまた笑われてしまう。
「笑いものになんてさせない!」ギルバートはボニーを家ごと火葬にすることに決めた。
家財道具を運び出し、住み慣れた家に火をつけるギルバート。
ボニーが眠る燃え盛る我が家を眺めながら、家族はみなどこか安堵した表情を浮かべるのだった。

一年後、ギルバートと19歳を迎えたアーニーが道でトレーラーが来るのを待っていた。
エミーは町のパン屋を任されるようになり、エレンも転校し新しい生活を送っている。
アーニーの「ぼくらはどこへ行くの?」という問いに「どこへでも」と答えるギルバート。
そしてベッキーを乗せたトレーラーがやってきた!
歓声を上げて乗り込むアーニー、抱き合うギルバートとベッキー。
ギルバート・グレイプの新しい人生が今始まった。

感想

う~っ!名作すぎます!!
この映画、20年ほど前に鑑賞していて、その時もどえらく感動したのですが、いま観てみると更に心に染みてしまいました。

物語は、田舎町で家族を支え自分の人生を犠牲にする若者の閉塞的な日常と葛藤を描くというとても重苦しい内容です。
父は自殺、母は病的な肥満体、弟は知的障害がある、なんてのは本当にダーク過ぎて…

だけど、この映画は重い気持ちにならないんです。
その最大の理由、それはアーニーが可愛いからではないか?
それは、なにも若いころのディカプリオが可愛くてイケメン!ってのじゃなくて、アーニーは本当に愛くるしいんです。
アーニーを守るためなら自分を犠牲にしてもかまわないと思ってしまう、ギルバートが彼を溺愛するのわかります。
赤ちゃんや幼い子が無条件で可愛くて愛しい、アーニーの無垢さはその域に達しています。
アーニーの魅力があって、この映画は家族への無条件の愛がど真ん中にある、だから心が重くならないんじゃないでしょうか?

障害はそんな甘いもんじゃない、という見方も出来ますが、だけどこの映画には観ていて苦しくなるリアルさよりもこのアーニーの愛くるしさが必要です。
現実は厳しいもの、せめて映画やドラマの中ではファンタジーを感じて現実と闘うエネルギーにしたい、ですよね。
まぁとにかく、ディカプリオの演技力は半端なかったです。

キテレツな役柄を演じる事が多いジョニー・デップもこの映画では自分の人生と家族の間で悩む青年を自然に繊細に演じています。
ギルバートは本当に優しくて、優しすぎてこの人は辛いことが多いだろう。
ベッキーはそんなギルバートを理解してくれた、そして彼を外の世界へ連れて行ってくれた女性。
二人が出会えて本当に良かった!

家族は誰も憎しみあったり疎ましあったりしていないし、ボニーだって子どもたちに依存して当たり前だなんて思っていないし、お互いを思いやり愛し合っています。
だけど、もうどうしようもない見えない鎖のようなもので家族はがんじがらめになっていました。
ボニーの最期、家ごと葬る場面でのみんなの解放されたような表情がそれを物語っています。

物語、演技、すべて想定外に優れた名作です。
観終わって、またすぐに観たくなる、激おすすめの映画でしたね!

 

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