先日2日に、北朝鮮が今年初となるミサイル発射を行ったとするニュースが報道されていました。
日本から距離的に近い国ではあるものの、その内部の実情を把握するのは非常に難しく、どのような国なのか詳しく知らないという方も多くいらっしゃるかと思います。
また新聞や本など文字で言い表されてもあまりピンと来ないこともあるでしょう。
そこでこの記事では、北朝鮮の姿をドキュメンタリータッチで描いた映画『太陽の下で -真実の北朝鮮-』について触れるとともに、この映画から垣間見える北朝鮮の人々の生活についてご紹介します。
北朝鮮がミサイル2発を発射
2020 年3月2日、韓国軍合同参謀本部よって北朝鮮が元山付近から日本海へ向けてミサイル2発を発射したとされる旨が報告されました。
同本部によると、このミサイルは短距離弾道ミサイルだと推定されています。
北朝鮮が短距離ミサイルを発射するのは今年初とのことで、昨年の11月末以来となっています。
最近は軍事的な挑発を控えていたかのように思えていましたが、このミサイル発射を機に軍事挑発を再開する可能性があることが懸念されています。
また日本政府の見解としては、「わが国の領域や排他的経済水域への弾道ミサイルの飛来は確認されていない」と発表されており、航空機などからの被害報告は出ていないとしています。
北朝鮮といえば今回のミサイル問題をはじめとして、核兵器開発問題、拉致問題など多くの問題を抱える国としてメディアで報道されています。
北朝鮮とは一体どのような国なのでしょうか?
もし北朝鮮で生まれたら、どのような生活になるのでしょうか?
これらのことを把握するためのヒントして、2016〜2017にかけて公開された映画『太陽の下で -真実の北朝鮮-』が役に立つでしょう。
以下では、この映画の内容や見所についてご紹介します。
映画『太陽の下で -真実の北朝鮮-』について
映画『太陽の下で -真実の北朝鮮-』は2015年にロシアによって製作されたドキュメンタリー映画で、日本では2017年に公開されています。
これまで世界中の映画関係者が「北朝鮮で暮らす人々の日常生活を撮影したい」と懇願してきましたが、北朝鮮当局の統制によって断念せざるを得ない状況でした。
本作もドキュメンタリー映画でありながら、北朝鮮当局の統制による影響をモロに受けた作品となっています。
そのことを表す以下のような注意書きが映画の冒頭に挿入されています。
この映画の台本は北朝鮮に渡されたものだ ロケ地には常に監視が同行し、映像もチェックした 最高の国の「普通」の生活を撮影させるためだ
映画『太陽の下で -真実の北朝鮮-』より
当初の予定では、ロシアのドキュメンタリー映画監督であるヴィタリー・マンスキーと北朝鮮当局とで共同制作されるはずでした。
1年の撮影期間をかけて、撮影当時8歳だった少女リ・ジンミが「朝鮮少年団」に入団するところから、故・金日成(キム・イルソン)主席の誕生日である太陽節を祝う行事までを記録する映画として撮影が始まりました。
ところが、ドキュメンタリー映画であるにも関わらず、北朝鮮当局はシナリオを作成しており、演出に対して過度に干渉してきます。
簡単に言うと、北朝鮮当局員による“演出のやらせ“が行われていたのです。
「このままではドキュメンタリー映画が撮れない」と悟ったマンスキー監督は、演出について過度に干渉してくる当局員の姿を隠し撮りすることにしました。
本作を見てみると、当局員と思われる人が出演者に対して演出指導している姿が多く映し出されています。
この映画の見所としては、このような「国民・入国者問わず、北朝鮮当局によって厳しく統制されること」と、「一人の幼い少女が少年団に入団し、北朝鮮の組織に組み込まれていくこと」の2つが挙げられるでしょう。
映画『太陽の下で』から学ぶ、北朝鮮での生活
さて、ドキュメンタリー映画でありながら演出指導が入っている当作ですが、映画のシーンの中で北朝鮮の人々がどのような生活をしているのか垣間見ることができます。
まず北朝鮮では、現在の最高指導者である金正恩(キム・ジョンウン)氏とその政党に対して、全国民は絶対忠誠を誓って絶対服従することを無条件で強要されています。
映画の中でも、早朝、金日成氏・金正日(キム・ジョンイル)氏の肖像が描かれている大きな看板に向かって順番に一礼していく人々の姿が映し出されていました。
また、教育においてはアメリカと日本に対して敵視するよう仕向けるかのような思想が植え付けられているシーンがありました。
主人公である少女ジンミが通っている学校のクラスで、先生が生徒に向かって以下のように指導しています。
アメリカ人と南朝鮮人、日本人を憎む気持ちは勉学に励むことで貢献できるのです
映画『太陽の下で -真実の北朝鮮-』より
北朝鮮当局のシナリオで、かつ監視がいる中で撮影が行われたことを考えると、このような教育が日常的に行われている実情が見て取れます。
もちろん教室の正面には、金日成氏と金正日氏の肖像画が飾られています。
さらに映画のメインとして、少女ジンミが少年団に入団する姿が描かれています。
少年団とは、小学2年生から初等中学3年生までのすべての子供が加盟する組織で、少年団への入団は北朝鮮の人々にとっては最初の公的な通過儀礼となります。
少年団へ入団してからも、北朝鮮の全国民は何らかの組織に所属して統制されることになります。
例えば、40歳以下の人は青年同盟に、労働者は職業総同盟に、家庭の専業主婦は女性同盟にそれぞれ所属します。
すなわち、北朝鮮で暮らす全ての人々は必ず朝鮮労働党が支配する公的な組織に所属しており、そこで厳しい統制を受けることになるのです。
少女ジンミが少年団へ入団することは、北朝鮮の統制システムに一歩足を踏み入れたことを表しています。
今後ジンミは所属する組織を変えながら、党の方針や金正恩氏の指導に忠実であるかどうかが監視されていくのです。
そのことを悟ったからか、少年団への入団について涙を流して語るジンミの姿で映画は終わっています。
他にも当局員が演出指導している姿が多く撮影されていたりと、北朝鮮という国について知るには良い作品なのではないかと思います。
なお、映画『太陽の下で -真実の北朝鮮-』はU-NEXTにより配信されていますので、まだ見ていないという方は是非一度ご覧になってみてください。
映画『太陽の下で -真実の北朝鮮-』
配信元→U-NEXT
まとめ
今回は北朝鮮の国民の姿を描いた映画『太陽の下で -真実の北朝鮮-』についてご紹介しました。
率直な感想を言うと、かなり不気味な映画でした。
登場している人それぞれが何かしらの仮面を被っているようで、全体的に不気味な雰囲気が漂っています。
この映画の舞台は首都である平壌(ピョンヤン)なので比較的裕福な人々の暮らしが映し出されているのでしょうが、都市部を離れるとまた違ったものになっているかもしれません。
私自身、北朝鮮というと「近くて遠い国」のように感じていましたが、映画を見ることで少し北朝鮮の実情が把握できたように思います。
これからも北朝鮮の報道が続くかと思いますので、北朝鮮という国を知る一助としてこの映画も是非ご覧になってみてください!

普段は教育系の仕事をしているアラサー男子Webライター。趣味はゴルフ、読書、VOD。VODはつけっぱなしで寝てしまう傾向にあり。
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