監督:大友啓史
脚本:岩下悠子、渡部亮平、大友啓史
原作:羽海野チカ『3月のライオン』
製作:谷島正之、竹内文恵、守屋圭一郎
出演者:神木隆之介、有村架純、倉科カナ、染谷将太、清原果那、佐々木蔵之介、加瀬亮、伊藤英明、豊川悦司、他
音楽:菅野祐悟
製作会社:映画『3月のライオン』製作委員会
公開:2017年3月18日
目次
あらすじ
15歳という若さでプロ棋士になった桐山零は、かつて幼い頃に交通事故で両親・妹を失っていた。
ひとりになった零は父親の友人のプロ棋士・幸田に引き取られるも、幸田の実子たちと上手くいかず、中学3年で家を出ることに。
家族も居場所もない孤独な若きプロ棋士・桐山零が、さまざまな人との出会いを通して成長しながら、将棋と向き合っていく…。
『3月のライオン前編』配信先一覧 | |||
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高い評価を受けた原作漫画を実写化
『3月のライオン』といえば、青年向け漫画「ヤングアニマル」で連載されている超人気作品で、「マンガ大賞」や「手塚治虫文化賞マンガ大賞」などといった数多くの賞を受賞するなどし、注目を浴びています。
原作漫画でこれだけの高い評価を得て、さらにはNHKで放送されたアニメ版も高い人気を得ました。
原作漫画もアニメも注目された人気作品が、ついにこの『3月のライオン』(前編、後編に分けて放映されました)で実写映画化となったのです。
原作ファンからは「ついに来たか!」という期待の声も上がったようですね。
映画の話題性
この作品の監督を務めたのは、佐藤健さん主演の『るろうに剣心』シリーズを手掛けた大友啓史監督です。
大友監督はNHKに入局後、ディレクターやドラマ番組部などのさまざまな経歴を経て映画監督となった方で、連続テレビ小説や大河ドラマといった作品にも携わっています。
そして、なんといっても忘れてはいけないのがキャストの豪華さですよね。
主役の桐山零を演じるのは、俳優業に限らず『君の名は。』などの大ヒット作で声優としても活躍している神木隆之介さんです。
また、今や連続ドラマに欠かせない清純派女優の有村架純さん、そして高橋一生さんや中村倫也さんなどが脇を固めます。
原作をどれだけ再現できるか?
原作漫画があるということは、映画でどのように再現するかが見どころになりますよね。
『3月のライオン』といえば、欠かせないのが将棋の対局のシーンですよね。
静かな対局の中にある、棋士同士の熱い闘志がどのように表現されているのかワクワクします!
また、この作品のテーマにもなっている、さまざまな人と出会って成長していく桐山零にも注目したいところ。
零が成長していく過程をどのように表現しているのか?というところも個人的に楽しみです。
有村架純さんがまさかの悪女!?
有村架純さんといえば、朝の連続テレビ小説『ひよっこ』や映画『ストロボ・エッジ』、連続ドラマ『中学聖日記』など、“清純派女優”と呼ばれるにふさわしいピュアでまっすぐな役柄を演じることが多いように感じませんか?
しかし今回は、今までとガラッと変わって悪女を演じています。
“悪女”と聞くと「めちゃくちゃ嫌な役なの?」なんて思ってしまいそうですが、彼女が演じる零の義姉・幸田香子も、零とはまた違った生きづらさを抱えて生きています。
それゆえににじみ出る悪女なのです。
これ以上はネタバレになるので言えませんが(ネタバレ情報も後ほど詳しくお伝えします!)、本編では全く新しい有村さんに出会えます。
乞うご期待!
将棋を知らない人や『3月のライオン』の原作を知らない人でも楽しめる!
実は、『3月のライオン』についてはアニメでほんの少し観たことがある程度で、なおかつ将棋のルールを全く知らないんです…。
原作も将棋も知らない人でもこの映画を楽しめるのか?というところが不安ではありましたが、充分に最後まで楽しく観ることができました。
今回観た前編では、零の生い立ちや人間としての成長を描いたシーンが多かったように思います。
もちろん、対局など将棋にフォーカスしたシーンもあるので、そういったところは将棋に詳しい人の方が楽しめるでしょう。
将棋を知らない筆者は、「これってどういう意味なんだろう?」と、頭の中にはてなマークが浮かび上がる部分もありました(汗)
ここからは、Twitterでつぶやかれていた世間の反応についても紹介します。
3月のライオン、漫画を途中で放棄したのだけど、映画(まだ前編)を観たらめちゃ良い😭
— nanairo (@n_a_n_a_i_r_o) June 24, 2019
3月のライオン前編(映画)観た。アツい。アツすぎる。なぜ今まで観ずにいたんだろう…体の芯に火がつくような映画だった。
— 花田陵 (@owsshanada) February 7, 2019
はい、気持ち分かります!
この映画は「めちゃくちゃおもしろかった~!」という感想よりも、「すごく良かった。じ~んとした。」などの言葉の方がぴたっと当てはまる気がします。
零の成長とともに変わっていく感情の動き(もちろん零だけでなく、他の登場人物の心の機微も)が繊細に描かれていて、とても深い作品です。
映画観てた…
3月のライオン
実写化されてたんたですね。
((((゚A゚)オソー
今日は前編だけ。
役者さんのキャラ再現度☆☆☆
その中でも島田さん、原作そのまま。
— 光・HIKARU(Black Dragon Wave) (@0921Note) September 28, 2019
この方は原作をご存知のようですね。
島田というのは、佐々木蔵之介さんが演じる島田開というキャラのことです。
プロ棋士は名人からA級・B級・C級…などと順位によってランク振り分けられているのですが、中でも島田はたった10人しかいないA級に居すわる凄腕棋士。
“原作そのまま”と評価されると、役者さんも嬉しいでしょうね^^
他のツイートでも、登場人物の再現度の高さ(特に島田開)を絶賛するつぶやきを多く見かけました。
一方でこんな意見も。
3月のライオンの映画版前編を観ました。内容は原作とほぼ同じなのですが、細かく描く軸の部分が違うことによってガラッと変わったものになっていた気がします。終始重くシブい雰囲気で原作の良さが消えているとは感じるが、逆にマンガっぽくなく本格的な映画のような見ごたえを感じた。面白かった。
— エナミカツミ (@enonami) October 7, 2017
原作漫画と比べると、映画の方が少し重い雰囲気があるようですね。
かといってそれが低評価に繋がるというわけではなく、映画には映画の良さがある、といった感じでしょうか。
全体的に、『3月のライオン[前編]』に対しての低評価はほとんど見あたりませんでした。
それほど多くの方が納得できた作品、といっても過言ではないでしょう。
ここから先はネタバレになります。問題ない方は読み進めてください。『3月のライオン[前編]』で特に注目したいシーン
役になりきる俳優、女優たちがすごい!
“有村架純さんがまさかの悪女!?”でも伝えましたが、実際に演技を観たときの衝撃が忘れられなかったので言わせてください!
やはり彼女の演技は想像以上で、衝撃を受けました…。
家族を失った幼い零のことを親戚すら引きとろうとしない、そんなところに声をかけてきたのが、豊川悦司さん演じる幸田柾近です。
零を内弟子として引きとった幸田ですが、彼には実子が二人いました。
その二人というのが、香子と歩(萩原利久)で、零にとっては義理の姉と弟にあたります。
零が引きとられて幸田家にやってきた頃から、香子と歩は零に辛辣な態度を取りつづけるという辛いシーンが何度も登場します。
特に香子は、家を出ていった零のことを執拗につきまとい、強引に部屋に上がりこんだり、かと思えば下着姿で堂々とベッドに座っていたり、突然後ろから抱きついたり…。
この文章だけを見ると不思議な行動に感じてしまいそうですが、彼女は彼女である悩みを抱えており、とても複雑なのです。
ただいやらしいだけでなく、香子の中にある細かい心情を見事に表現されていたと感じました。
そしてもう一人、完全にノーマークだった俳優さんをここで紹介させてください!
零と同じく、若くしてプロ棋士になった二海堂晴信を演じる染谷将太さんです。
二海堂は腎臓病を患っているため体型がふくよかな設定なのですが、あのスリムな染谷さんが見事な特殊メイクでぽっちゃり青年に大変身しています。
見た目からして染谷さんとは思えない出来映えなのはもちろんのこと、声色や喋り方など、染谷さんの面影はどこにもありませんでした…!
ここまで役を作りあげる染谷さんの実力にも、本当に驚きましたよ。
将棋といえば、おやつタイム
何時間にもおよぶ対局はエネルギーを消耗するため、対局中に食事をとったりおやつを食べたりする棋士が多いことはご存知ですか?
この『3月のライオン[前編]』でも、対局中に棋士たちが何かを食べている様子が何度も映しだされます。
中でも印象的だったのが、島田と後藤正宗(伊藤英明)が対局するシーンです。
島田はパックに入れて持参した干し柿を、そして後藤は店で買ってきた豆大福にかぶりつきます。
二人は、おやつを食べながらガンを飛ばしあうのです(笑)
シリアスで重い空気が漂う対局が多い中、この部分はクスッと笑えるシーンになっていると感じました。
本人たちはいたって真剣なので、笑ってしまうと失礼なのかもしれませんが…(笑)
ちなみに零は、『3月のライオン』の中で史上5人目となる中学生でのプロ入りを果たしたというキャラクターですが、現実世界でも零と全く同じ快挙を果たしたのがそう、プロ棋士の藤井聡太さんです。
藤井プロが世間でブレイクしたときに、対局中にとっていた食事も話題となりました。
対局中は※外出を禁止されることになったので、藤井プロは出前をとって食事されていましたよね。
そのメニューについて何度もメディアで報道されていたことが、記憶に新しいです。
※対局中の外出禁止については、2016年12月14日より施行されています。
零の生い立ちをしっかりと表現
『3月のライオン』で重要なのは、零が今までどんな環境で育ち、どのような孤独や悩みを抱えているのか…というところにあると思います。
映画は零の両親と妹のお葬式のシーンから始まりますが、その後すぐに現代(物語の設定では、零が17歳)へと切り替わります。
現代の話を進めていきつつ、過去の話が間に入るという展開なので、映画を観ていて「あれっ?これはいつの話?」なんて少し困惑してしまうときもありました。
しかしながら、観ていくうちに点と点が繋がっていき、次第に理解できるようになっていきましたよ。
実は零、本当は将棋を好きではなかったのです。
零の両親・妹の葬儀に来ていた幸田が「将棋は好きか?」と声をかけられた零は、戸惑いながらも生きていくために嘘をつき、その問いにうなずきます。
こうして零は、好きでもない将棋を生涯をかけて挑むことになるのです。
零が幸田家にやって来た頃から義姉弟との軋轢があり、苦しい環境に居ながらも、いつしか二人より将棋が上達します。
幸田は実子よりも零に期待するようになり、プロ棋士を目指していた香子は、父親である幸田から夢を諦めるよう諭されるのです。
そうしてどんどん居づらくなってしまった幸田家を、零は15歳で逃げるように飛び出します。
家族も家もなく、学校でも孤立状態の零…。
彼の生い立ちを知るとなお、応援したくなりますね。
謎の三姉妹が零を変えていく?
この三姉妹は底抜けに明るく、優しく接してくれる人たちなので、彼女たちに出会うことで零の中に少しずつ変化が起きていきます。
幸田家を飛びだして一人暮らしを始めた零が出会ったのは、川本家の三姉妹でした。
長女のあかり(倉科カナ)は銀座でホステスとして働きながら、家族の面倒を見ているお母さん代わりの存在です(川本三姉妹の母は、物語開始時にはすでに亡くなっています)。
先輩棋士(松本/尾上寛之、三角/中村倫也)らに※飲みに連れられ、酔いつぶれて道端に倒れていた零を偶然拾った(?)のがあかりという、なんとも漫画にありそうな設定ですよね。
彼女は、動物だろうが人だろうが、やせ細っているものを何でも拾ってきては食事を与えて太らせるという、少し変わった癖?を持っているのです。
次女のひなた(清原果那)は零と一番年齢が近く、三女の面倒や家事の手伝いもこなすしっかり者です。
いつも明るく笑顔で振るまう印象ですが、家族には辛いことをなかなか打ち明けられないという面も。
劇中では、零がひなたのことを気にかけるようなシーンも登場します。
三女のモモ(新津ちせ)は、とってもかわいい保育園児の女の子です。
モモを演じる新津ちせちゃんは、『君の名は。』や『天気の子』でおなじみ新海誠監督の娘さんなんですよ!
『3月のライオン』ではこの三姉妹がヒロインという設定で、零にとって重要なキーパーソンとなることは間違いありません。
三姉妹と関わることによって零がどう変わっていくのか、この変化が見どころですよ♪
※未成年の飲酒は法律で禁止されています!皆さんは真似しないようにしましょう。
それぞれに抱える孤独や闇
零の孤独(生い立ち)、そして香子が抱える苦悩はこれまでお話した通りですが、他の登場人物もいろいろなものを抱えながら生きていることが劇中に表現されています。
零とライバル関係にある二海堂は、腎臓病のためいつ命を落としてしまうかわからないという状況にいます。
だからこそ今を一生懸命に生きるという、彼のたくましさがとても印象深いです。
他にも、島田は元々胃痛を持っており、度々プレッシャーで胃痛を起こしてしまいます。
対局中は、お腹を抱えて辛そうにする場面が出てきますよ。
香子と不倫関係にある後藤も、実は妻が長期入院中なんです。
劇中では妻の病状などは明らかにされませんでしたが、後藤もまた抱えているものがあるんですね。
登場人物がそれぞれに孤独や闇を抱えながらも、目の前のやるべきことと闘っているんだなぁと思うと、なんだか励まされます。
零が挑む勝負にも注目!
人間関係や零の成長も目が離せませんが、忘れてはいけないのが零が挑む対局の数々です。
前編においても、零は養父となる幸田や先輩棋士の松本、零と同じ階級の棋士・安井(甲本雅裕)らとの対局の様子が映し出されます。
中でも注目してほしいのは、獅子王戦トーナメントの準決勝・島田との対局です!
島田はA級八段という腕前ですが、零は島田の次の対戦相手となる後藤のことしか頭にありませんでした。
後藤に勝つことばかり考えて目の前の敵の島田が見えていなかった零は、対局中も心ここにあらずといった感じで、いつの間にか島田が優勢に。
零がハッと我に返ったころには、もはや打つ手がない状態となってしまい、島田に敗れてしまうのでした。
ここで改めて自分自身の未熟さに気づいた零は、ひどく落ち込んでいたように見えました。
でも、この対局を経験したことで、零はさらに強くなっていくのですね。
零と宗谷名人の出会い
島田に敗れた零は、島田の研究会に入ることを決めました。
その研究会には、すでに二海堂が在籍していました。彼は昔から島田の元でこうして勉強していたのです。
後藤を下して獅子王戦を制した島田は、名人の宗谷冬司(加瀬亮)と対戦することになります。
零は、その対局を別会場で解説者として見守っていました。
対局は次第に宗谷が優勢となり、もう一人の解説者も、そして二人の解説を見ていた大勢の人々(中には後藤の姿もありました)も、宗谷に軍配が上がると確信します。
しかしこの会場の中で、たったひとり零だけが、島田のピンチを切り抜ける一手を見出すのです!
零は慌てて対局会場へと向かいますが、島田はその一手に気づかず…、残念ながらすでに投了していました。
満身創痍の状態にある島田を見つめる零は、これまでの彼の棋士人生に思いを馳せ、また、口数の少ないミステリアスな宗谷にも惹かれているようでした。
二人の対局を見守った零は、棋士として、また人として成長していくのです。
宗谷名人の印象を言葉に表すのは非常に難しいですが、神秘的といいますか、この世に存在する人ではないようなオーラをまとっていました…。
それだけの風格がある宗谷名人を敗る必勝手を見出した零に、ますます期待が膨らみます!
まとめ
とても気になるところで前編は終了となってしまいました。
前編だけでも二時間越えの長い作品ですが、とにかく無駄がなく、ぎゅうぎゅうに見どころを詰めこんでいるという印象を受けましたね。
どのシーンを切りとっても、零やその他の人物を表現するために欠かせない場面…、そんなふうに感じました。
また、零の幼少期からを細かく描いた作品なので、原作を知らない人でも楽しめることは間違いありません。
時系列での表現ではないので、現在と過去を行ったり来たりを繰り返しますが、それもまた全て観終わったころには腑に落ちるという、なんともいえない感覚です。
ここから後編に続いていくわけですが、川本三姉妹と零のほんわかした絡みに期待しつつ、零が棋士としてどこまで昇りつめていけるのか?という点にも注目したいです。

2人のメンズを育てるシングルマザー。どんなに忙しくても1日1本はドラマを見て癒されています♪特にラブコメディーには目がありません!
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