「アヒルと鴨のコインロッカー」のあらすじ・感想・ネタバレ~復讐の奥にみえる愛するものを失った壮絶な孤独が哀しい~ | VODの殿堂

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「アヒルと鴨のコインロッカー」のあらすじ・感想・ネタバレ~復讐の奥にみえる愛するものを失った壮絶な孤独が哀しい~

   
 

タイトル:「アヒルと鴨のコインロッカー」
公開:2006年
監督:中村義洋
出演:濱田岳・瑛太・松田龍平・関めぐみ・大塚寧々・岡田将生 他
閲覧したVOD:dTV(2018年8月6日時点では配信終了)

数々のヒット作で知られる伊坂幸太郎原作の同名小説の映画化です。
大学進学のために実家を離れ一人暮らしを始めた男が、妙な隣人と出会ったことでおかしな事件に巻き込まれて行きます。

出演は、個性派俳優の濱田岳、瑛太を始め、松田龍平、関めぐみ、と近年の邦画を賑わせているメンツが揃っています。
個性的な登場人物の独特の掛け合いも見どころですが、驚くような展開を見せる物語にどんどん引き込まれる作品です。

では、あらすじと感想をまとめてみましたのでご覧ください!

『アヒルと鴨のコインロッカー』配信先一覧
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Amazonプライム・ビデオ 視聴ページ
※配信状況は2019年12月2日(月)時点のものです。
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【あらすじ】

「ディランを歌う男」

東京から大学進学のために仙台に越してきた椎名(濱田岳)。
アパートに着いてすぐ、粗品を持って隣の部屋の住人に挨拶するも無言のままで素っ気ない。

椎名が部屋の前で段ボールを片付けていると、背後から「ディランか?」と声をかけられた。
椎名はボブ・ディランの「風に吹かれて」を口ずさんでいたのだ。
独特な雰囲気を持つその男の名は河崎(瑛太)。
先ほど挨拶をした隣人とは反対隣の部屋の住人だ。
河崎に誘われて部屋へ行く椎名。
ディランの声を「神の声だ」と言う椎名は、ずっと誰かが来るのを待ってたんだ、と椎名に言う。
まさか、ディランを歌う男が来るとは…と。

河崎は椎名にある計画を持ちかける。
隣の隣の部屋の男はブータン人だ、という河崎。
椎名が最初に挨拶に行った部屋の男だ。
彼の名前はキンレィ・ドルジ。
部屋にずっと引きこもっているドルジは、日本語を勉強するために辞書を欲しがっている。
彼は辞書で「アヒル」と「鴨」の違いを調べたいのだ、と。
だから、ドルジに広辞苑をプレゼントして元気づけたいという河崎は、椎名に一緒に本屋を襲って広辞苑を盗もうと誘った。
初対面で訳のわからない話をされて混乱する椎名。
もちろんその話を断り部屋を出ていく。
帰り際に河崎は「ペットショップの麗子という女には気を付けろ。彼女の言うことは信用するな」とまたもや訳のわからないことを言うのだった。

「河崎とドルジと琴美」

大学の入学式の帰り、椎名はバス停で言葉が通じずに困ってる外国人女性を見かける。
他の誰もが見てみぬふりをしていたが、一人の美しい女性(大塚寧々)が毅然とした態度で女性を無視するバスの運転手を一喝する。
しかし言葉が通じないため結局バスは女性二人を残して出てしまう。
そんな場面に遭遇した椎名は、アパートの前でドルジに会うと思わず「何か困ったことはないか?」と話しかけるも、やはり素っ気なくされてしまう。
ちょうど背後にいた河崎が「ドルジは心を閉ざしているから何も聞くな」と言い椎名を部屋に連れてドルジについて語り始める。

ドルジには「琴美」という日本人の恋人がいた。
ある日、車道で立ち往生している犬を助けたドルジ、それを見ていた琴美が彼に話しかけたのが出会いで二人は一緒に暮らすようになった。
犬を助けるために車道に飛び出すなんて!と驚く椎名に河崎は「ブータン人は死を恐れない」と言う。ブータン人は生まれ変わりを信じているのだ、と。
河崎は琴美が写っている写真を見せるが、琴美の隣にはドルジではなく河崎。
琴美は河崎の元カノで、別れた後にドルジと出会って付き合いだしたのだった。
女好きで軽いノリの河崎は、別れた後もしょっちゅう琴美の前に現れる。
そして、ドルジに「日本語を教えてやる」と申し出、川崎とドルジは親しくなったのであった。
河崎とドルジと琴美、不思議な縁で出会い一緒の時間を過ごした三人。
しかし、琴美は2年前に事故で亡くなってしまい、それ以来ドルジは塞ぎこんでいるのだ、と。

「広辞苑を盗め!」

河崎はどうやら本当に本屋を襲う気だ。
無理やり連れられた椎名はとうとう協力することになってしまった。
二人ともモデルガンを持ち、本屋に襲撃するのは河崎、椎名は裏口で見張ることに。
「悲劇は裏口から起きる」という河崎は、椎名に「風に吹かれて」を一曲歌うごとに裏口のドアを蹴って安全を知らせ、合計で10回歌って待つように要求する。
素直に裏口で歌いながら待つ椎名、しかし一度だけ入口付近を見にに行くと一台の謎の車が停まっていた。
しかし、深く気に留めずに約束通り10回歌ってから車に戻ると河崎もすでに戻っていた。
自信満々に辞書を盗んできたという河崎、しかしそれは広辞苑ではなく広辞林!
「まぁ、でも同じようなものだし」と言う椎名、しかし河崎は思いのほか暗い表情を見せるのだった。

「ペットショップの麗子」

翌日、椎名は大学の構内に以前外国人女性を助けようとした女性を見かける。
彼女に話しかけた椎名、実は彼女は河崎が言っていたペットショップの麗子である事を知る。
琴美が麗子のペットショップで働いていたこと、2年前に犬や猫など動物が虐待される事件が相次いでいたこと、そして河崎に病気があること、などを麗子から聞かされた椎名。
そして「河崎くんには気を付けろ、彼の言うことは信用するな」と忠告されるのだった。

麗子と別れた後、購買部に教科書を買いに来た椎名は、既に購入済みの教科書なのかどうかわからなくなり、河崎に電話をして自分の部屋に入って調べてもらう事にした。
部屋の外に置いてある鍵で椎名の部屋に入った河崎に椎名は「本棚の一番上の棚の本の名前を順番に読み上げるように頼む。
しかし、河崎から「本が無い」と言われてしまう。
帰宅した椎名、本当に上の段の棚の中の本が一冊残らず無くなっている!
もしかしたら、昨夜の本泥棒がバレて仕返しをされたのではないかと思うのだった。

本のことが気になって仕方ない椎名は襲った本屋に客として来店する。
店員に何気なく昨夜何かあったかどうか尋ねると、特に異常はなかったと言われる。

しかし「(騒がしかったのなら)また店長の息子の江尻さんが騒いでいたのかもしれない」と言われる。
その店員から、その江尻は薬をやってるような男だと聞かされた椎名は、もしかしたら河崎は薬の売人で本を盗むというのは口実で昨夜その取引をしていたのでは?と疑うのだった。

そんな矢先、椎名の父に胃がんが見つかったと実家から電話があった。
「大学を辞める気はあるか?」と母に問われ、悩む椎名。

椎名は麗子のペットショップを訪ねる。
麗子が言っていた河崎の病気というのが、薬と関係があるのか気になったからだ。
しかし、そうではなく河崎はHIVに感染していると聞かされる。
病院に行くという河崎に付いていったドルジが、日本語の勉強用に持っていたボイスレコーダーをいたずらのつもりで河崎のコートのポケットに入れたことがあった。
そのレコーダーには医師からHIVの感染を告げられる内容の会話が録音されていたのだ。
琴美は河崎とは体の関係を持つ前に別れており、だから自分には気軽に安心して会えるから最近よく顔を見せるのかな…と考えた。
しかし「俺から逃げる女は女でない」と豪語する河崎を唯一ふった女性は琴美だけ。
「一度でいいからもっと熱く生きなさいよ!」と叱責してくれる純粋で真っ直ぐさな琴美は河崎にとって特別な存在だったのだ。

「河崎の正体は…?」

その夜、河崎と弁当屋にいく椎名。
弁当屋の前に立てられら登りの旗を見て河崎が「ダルシン」と呟く。
ブータンではダルシンと呼ばれる経文を書きこんだ旗が風の通り道に何本も立てられていて、それに似ていると微笑む河崎。
河崎の病気を案じ、それとなく体に不調はないか?聞く椎名。
河崎に不審がられて、慌てて2年前にペットが虐待される事件があったんだって?と話をそらせると「麗子に会ったのか?」と勘づかれてしまう。
河崎はその事件はよく知っている、ドルジと琴美がその犯行現場に遭遇したことがあるのだと言う。
犯人たちに追いかけらたが、ドルジが石を投げて撃退する。
琴美は犯人たちに向かって「あんた達のこと警察に言ってやるから!」と言い放って逃げた。

椎名は考えた。
河崎の話と麗子の話、そして何度か顔を合わせたドルジ。
なんだろう…?何か釈然としない、モヤモヤとしたこの違和感は一体なんなのか?

その夜、椎名は車でどこかに向かう河崎を麗子と共に尾行することにした。
河崎の車が小道を進んだため、尾行がバレるのを懸念して待つことにした二人。
翌朝まで待ち、河崎の車が去った後を調べる麗子と椎名が見たのは、足にナイフを刺され木に縛り付けられている江尻の姿だった。

「河崎がやったのか…?」と聞く椎名に麗子は言う。
「河崎くんはもう死んでいる」と。

アパートに戻った椎名はドルジの部屋を訪ねる。
広辞苑か広辞林を持っていたら貸してほしい、と頼むと、男は東北なまりで「持っていない、国語辞典ならあるけど授業で使うから」と答えた。
ドルジだと思っていた男は、山形出身の正真正銘日本人だった。

椎名は河崎の部屋を訪ね「ディランの詩集だけど読む?」と全く別の本を渡す。
表紙を見たにも関わらず「ありがとう」と受け取る河崎に椎名は「日本語読めないんでしょ?」と詰め寄る。
以前、椎名の部屋の教科書は無くなっていたのは、日本語が読めないことがバレないように河崎が持っていったのだった。
河崎は言う。
「俺の名前はキンレィ・ドルジ。ブータン人だ」。

「そして、真実」

ドルジが今まで河崎として語った話は、立場が違うだけで本当のことだった。
しかし、本物の河崎(松田龍平)はもうこの世にはいない。

ドルジはブータンからの留学生、日本語がほとんど喋れず孤独だった彼にとって琴美と河崎はかけがえのない存在だった。
しかし、幸せな時間は続かなかった。

琴美は、ペット虐待の犯人から逃げる時にバスの定期券を落としていたのだ。
犯人達に名前と住所を知られてしまった琴美は拉致されかけたり、脅迫電話がかかってきたりしていた。
正義感が強い琴美は恐怖よりも犯人達に対して強い怒りを覚えていた。
脅迫電話のバックにボウリングの音が聞こえたので、琴美とドルジはボウリング場に向かった。
犯人達がゲームで遊んでいるのを発見し、警察に通報したのだが裏口から逃げられてしまう。
逃走を阻止しようと犯人達の車の前に立ちはだかる琴美。
犯人の車はそのまま琴美を轢いて去っていくがすぐにトラックに衝突し、3人のうち1人だけ助かった。それが本屋の息子の江尻だ。

琴美は亡くなり、ドルジと河崎は江尻に復讐しようと本屋を襲撃することにした。
しかし、河崎はすでにエイズを発症しており本屋に向かう途中で具合が急変しそのまま死んでしまう。

大好きだった琴美と河崎を失ったドルジ。
彼は河崎の形見のコートを身に付け、髪型を真似て河崎のように振る舞っていた。
琴美と自分の真ん中にいつもいた河崎、彼を真似ることでいつまでも三人一緒の思い出の中で生きていた。
ある日、部屋で一人で三人で喋った会話を録音したボイスレコーダーを聞いていたドルジの耳にディランの歌が聞こえてきた。
河崎と琴美が「神の声」と称していたボブ・ディラン。
慌てて外に出ると、そこにはディランの「風に吹かれて」を口ずさむ椎名の姿があった。
まるで、河崎と琴美に会えたかのようにドルジの顔は喜びで溢れるのだった。

「神様を閉じ込めた」

江尻への復讐を諦めていなかったドルジは椎名を協力者に選んだ。
外国人だと相手にされないと思い、そのまま河崎を名乗ることにしたのだ。
本屋を襲った夜、広辞苑を盗むのは口実でドルジは江尻を拉致していた。
表に停めてあった謎の車は、江尻を一時的に隠しておくための車だった。
しかし、ドルジは江尻を殺さずに足を刺して動けないようにしていただけだ。
ブータンでは葬儀の方法に「鳥葬」というのがある。
江尻を縛りつけたまま鳥葬にするつもりだったのだ。

翌朝、椎名は父の容体が思わしくないので実家に帰ることになった。
ドルジが椎名を送るとアパートの外に出るとは麗子がおり、ドルジに自首するよう説得する。
駅に着くと椎名はコインロッカーを探し「神様を閉じ込める」と言い、ディランの「風に吹かれて」をエンドレスで流したままのラジカセをロッカーに入れる。
これで神様に見ないふりしてもらうから悪いことをしてもバレない、と。
そんな椎名にドルジも笑顔を見せるのだった。

椎名と別れたドルジは、帰り道に横断歩道で車道に飛び出した犬を助けようとし車に轢かれてしまう。
そんなドルジの最期を知らない椎名は新幹線の中で食べかけの弁当を前にして眠っている。

駅のコインロッカーからは閉じ込められた神様の歌声が流れ続けていた。

感想

観終わって、しばらく頭がボーっとしてしまいました。
物語自体が、ミステリーとしてもサスペンスとしてもすごく良く出来ていて面白い。
だけど、それ以上にドルジにめちゃくちゃ感情移入してしまったんです。

異国の地でドルジにとって琴美と河崎の存在はどれだけ大きかったか。
まるで赤ちゃんが母親を慕うように、日本においてのドルジの全ては琴美と河崎だったはず。
その二人が、あんな衝撃的な亡くなり方をしてしまうなんて!

ドルジは2年間復讐の鬼になっていたのではなく、本当に孤独だったんだろうな。
そこに現れた椎名、ドルジにとって二度目の運命の出会い。
椎名が帰って行くとき、めちゃくちゃ寂しそうでしたね…

物語のあちこちに伏線が張られてて、真実に近づいていくうちにゾクゾクしてしまいました。
ストーリーも演者も監督も全て良かったです。

観て絶対に損のない映画でおすすめです!

 

 

 

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