タイトル:映画けいおん!
公開年:2011年
監督:山田尚子
キャスト:平沢 唯 :豊崎愛生/秋山 澪:日笠陽子/田井中 律:佐藤聡美/琴吹 紬:寿 美菜子/中野 梓:竹達彩奈
視聴したVOD:Amazonプライム・ビデオ(2018年05月10日時点で視聴可)
「けいおん!」といえば、2009年に一大ブームを巻き起こした伝説のアニメです。
アニメが好きな人からの評価はもちろん、これまでアニメを見たことがない人でも、一度はキャラクターの絵を見たことがあるとまで言われるほどの有名な作品です。
アニメの中で演奏された関連曲の多くがオリコンチャート上位にランクインしたり、コンビ二などのコラボも積極的に行われていたことを今でも覚えています。
けいおんとは、とある女子校に通う4人の女の子が廃部寸前の軽音部に入部し、放課後にティータイムを楽しみながらゆるく活動する姿を描いた、ほんわか系のアニメです。
・平沢 唯…ボーカル・リードギター
・秋山 澪…ボーカル・ベース
・田井中 律…ドラムス
・琴吹 紬…キーボード
そこへ1年後、新入部員が1人入部します。
・中野 梓…サイドギター
5人となった軽音部は、「放課後ティータイム」としてバンド活動を続けていくのです。
映画けいおん!は、唯たちの卒業が間近に迫ったところからスタートします。
卒業を目前に控えたある日、唯たちはクラスメイトが卒業旅行に行くことを知り、軽音部も卒業旅行に行こうと言い始めました。
たった一人の後輩、梓は4人で卒業旅行に行くのだと思っていたら、卒業旅行には梓も同行する方向で話が進んでいたのです。
卒業旅行先は、イギリス・ロンドン!
音楽の歴史も深く、また放課後ティータイムに因んだ紅茶の国は、まさに軽音部にふさわしい旅行先でした。
そして旅行の中で、4人はたった一人軽音部に残される梓に、先輩として何か贈り物をしたいと考えるのですが、なかなか名案は思い浮かびませんでした。
けいおん!らしく、ゆるくゆるくふんわりと!
しかし残される後輩に先輩として何か贈り物をしたいと考える4人の姿は、巣立っていく子供たちの成長を感じることができる物語です。
卒業とは何か、去って行く者、残される者、いろいろな視点に立ってみることが出来る映画ですよ!
『映画けいおん!』配信先一覧 | |||
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あらすじ
【音楽性の違い】
ある日の放課後、中の梓は友達に別れを告げて軽音部の部室へ。
すると階段の途中で、軽音部から聴きなれないロックな音楽が流れていることに気が付きます。
梓が首を傾げながら部室のドアを開けると、平沢唯が「スカイハーイ!」と叫んでいるところだった。
「違う。放課後ティータイムが目指してる音楽は、こんなんじゃない!」
そう言って、軽音部部長でもある田井中律が立ち上がる。
しかし唯は眉をグッと寄せて「私はこの路線で行きたいよ。」と強い意思を持って告げた。
2人の険悪なムードに、梓が「何かあったんですか?」と尋ねたところ、琴吹紬から軽音部が解散してしまうと言う話を聞かされてしまう。
「みんな…目指す方向性が違ってきたんだ。」
視線を反らして梓に告げたのは、秋山澪である。
なんでも音楽性の違いによって、放課後ティータイムは解散の危機に陥っているそうだ。
「梓ちゃんはどう思う?」
紬の問いに、梓は「放課後ティータイムは明るくて元気な曲が…。」と言葉を口に出す。
「正直、ふわふわしてしてるのはもう…きついんだよね。」
「どの口が言うー!!お前が入部してきて、軽音部って軽い音楽をやるんでしょ~って言われた日にはババつかまされたと思ったぜ!」
再び言い争いを始めた唯と律に、梓は「あの、ババ抜きしませんか!!」と声をかける。
「馬鹿野郎、梓!軽音部が生きるか死ぬか大事な話をしてるんだぞ!」
「あずにゃん…あとで、やろうね。」
唯の言葉に、律も厳しい表情のまましっかり頷き、再び2人は言い争いを始める。
その様子に違和感を感じた梓は、部室の中に足を進め、椅子の上にあったラジカセのスイッチをおもむろにスタートさせる。
すると、流れてきたのは先ほど階段のところで耳にしたロックな音楽だった。
どうやら4人はカセットテープを使って、【DEATH DEVILごっこ】をして遊んでいたのだ。
「お芝居ですか。」
「そだよー!一度はやってみたいじゃん。音楽的な対立ってやつ。」
「バンドの定番だしなー。」
先ほどまで言い争いをしていた唯と律が、「ねー!」と声を揃えて笑い合う。
そんな先輩たちに、梓は「そんなことだろうと思いましたけど。」と言いつつ、どこかホッとした様子だった。
「じゃあ梓ちゃんも来たことだし。」
「あ、待ってください。」
紬の言葉を聞いた梓が、慌ててギターケースのチャックを開こうと手を伸ばす。
「お茶にしよっか。」
「へ?え??」
【先輩らしいこと】
紬が入れた紅茶を飲みながら、唯はこれまでの日々を思い出している。
唯たちはすでに全員同じ大学に合格しており、後は卒業を待つばかりであった。
しかしのんびりした様子の唯たちに、いつの間にか部室にやってきた顧問、山中さわ子がある爆弾を投下する。
「とにかくこれであとはもう送り出すだけね。留年しなければね!」
どうやら来週会議が行われ、そこで出席日数が足りているか、赤点が多くないか審査されるらしく、その会議で問題があれば留年になる可能性があるそうだ。
あまり成績が良くない唯と律は、大慌てでさわ子にゴマをするが、さわ子は眼鏡を光らせて笑顔を見せるだけだった。
放課後、唯、澪、律、紬の4人は部室のごみを持って焼却場へ。
その途中で、唯が足を止めたことに3人が近づき「どうした?」と声をかける。
「もしかして私達、先輩としての威厳がないまま卒業しちゃうんじゃないかな?」
「私、最後になんか先輩らしいことしたい!」
唯の言葉に、他の3人も大賛成。
たった一人の後輩、梓に何ができるか4人で考えた結果、贈り物をすることに決まったのである。
「わくわくするね。」
「内緒にしとかなくちゃね。」
「先輩!」
そんな話をする4人の背後に梓が立つ。
梓は唯がゴミ袋から落としていたゴミを拾って追いかけてきてくれたのだ。
4人は話をごまかしつつ、梓もつれて焼却場に向かって行った。
帰宅後、唯は梓と仲が良い妹の憂に、梓が喜びそうなものは何かインタビュー。
すると、梓は「軽音部と軽音部の音楽が大好きだから、お姉ちゃんたちが一緒に卒業してあげるとかどうかな?」という答えが返ってきたのだった。
唯は憂の意見も参考にしつつ、梓に贈るプレゼントを懸命に考えるのだが、いったい何を贈れば喜んでもらえるか全く見当がつかなかった。
【卒業旅行】
登校日。
唯は真っ白な息を吐きながら学校へ。
教室の中には、すでにクラスメイトが揃っていて、その中のグループが卒業旅行について相談をしていた。
彼女たちは部活で卒業旅行に行く計画を立てているらしい。
唯と紬は、慌てて律に声を掛け、「軽音部でも卒業旅行に行こう!」と提案。
しかし「よそはよそ!うちはうち!それよりも梓に何をしてやれるか考えなくちゃいけないだろう?」と言われ、軽音部の卒業旅行計画は白紙となった。
しかし放課後。
「というわけで、卒業旅行に行こうと思います!」
と、律が朝の言葉を撤回したのである。
以前、軽音部でパスポートを取得していたことを思い出し、軽音部で卒業旅行に行きたいと考えを改めたのだ。
「だーめ。そうやってすぐになんでも後回しにするんだから。」
律と付き合いが長い澪が、卒業旅行計画に待ったをかける。
彼女は先に梓へのプレゼントを考えるべきだと主張。
澪の言葉に、紬は少しだけ肩を落とした。
「あ、私憂にインタビューしてきたよ!」
唯は3人に憂が、一緒に卒業するのがいい、と言っていた話をする。
「プレゼントは留年…?」
唯の言葉に、律は呆れた様子で言葉を返す。
「そう!留年!!」
そう言ったタイミングで、梓が部室のドアをあける。
梓は【留年】という言葉に驚き、4人は梓にプレゼントを贈る計画を聞かれたのではないかと焦る。
幸い、プレゼントについては聞かれておらず、紬が、卒業旅行でどこに行くかという話をしていた、と誤魔化したので気づかれることはなかった。
4人は話の流れで、卒業旅行に行くこととなり、どこへ行くか話し合いが行われることに。
律はドバイ、唯はヨーロッパ、紬は温泉、澪はロンドンに行きたいと主張するので、軽音部で飼育しているスッポンもどきのトンちゃんに決めてもらうことになった。
しかしトンちゃんはいつまでもティーカップに触れることはなく、トンちゃんの動向を見守っていた4人も飽きて各々の席に戻っていく。
しばらくして、トンちゃんがようやくティーカップの前に。
トンちゃんが触っていたのは、ロンドンと書かれたティーカップだった。
卒業旅行先はロンドンに決まり、ロンドンを希望していた澪は声にならない歓声を上げたのである。
「アフタヌーンティーできるね。」
カップを片付けながら紬が言う。
イギリスは紅茶の国なので、まさに【放課後ティータイム】にあった卒業旅行先だった。
「5人だったら、部屋は2つかな?」
「3対2??」
紬と律の言葉に、梓は首をかしげる。
梓は4人の卒業旅行だと思っていたが、唯たちは梓も一緒に行くものだと考えていたようだ。
「梓ちゃんも行くでしょう?」
「いえいえ、先輩たちの卒業旅行ですから…。」
梓は後輩の自分がいては邪魔になると、遠慮しようとする。
「あずにゃんがいないと軽音部じゃないよ!」
という唯の言葉に背中を押され、一緒に卒業旅行に行く決心を固めた。
その後、5人は保護者の許可を取り、後日旅行代理店に申し込むことに。
梓はたくさんの旅行雑誌を買い込み、のほほんとして4人の旅行を全力でサポートする決意を固めていた。
【梓へのプレゼント】
数日後、改めて集まった5人は、ロンドンでそれぞれやりたいことを提示。
それを梓がまとめて、回りやすいように旅行の行程を決めてくれるそうだ。
「頼んじゃっていいのか?」
「はい。私こういうの好きなんです。」
梓は澪にそう返して席を立ち、荷物を纏める。
「みなさんは帰らないんですか?」
自分とは違い、帰る様子のない4人に首を傾げる。
律は梓と一緒に帰りそうになる唯を止め、紬は「もう一杯お茶してから帰るわ!」と言って梓にお土産のお菓子を渡して見送った。
梓がいなくなった後、4人は梓へのプレゼントを真剣に相談し合うことに。
しかしいい案は思い浮かばず、頭を抱える唯の視界に梓のギターが入る。
どうやら梓はギターを忘れて帰ってしまったようで、唯はパタパタと足音を立ててギターの元へ。
「ムッたんに聞いてみよっか!あずにゃんへのプレゼント、何がいい?なーんちゃって!」
唯がそう言いながら、梓のギター、ムスタングに触れた途端、ムスタングがバランスを崩して床に倒れていく。
唯が慌ててギターケースを抱え込んだので、大事には至ることはなく、振動で揺れたギターをの音を聞いた唯に名案が思い浮かぶ。
「はっ!!ムッたんが…曲って言った。」
唯はギターの音を聞いて思い出したのだ。
憂から梓は、「軽音部と軽音部の音楽が大好きだ。」という話を聞いた事を。
「いいじゃんそれ!」
「いいよね!先輩から後輩に贈る曲!めちゃくちゃかっこいいよ。」
梓へのプレゼントは曲ということになり、コンセプトは【今までにないスケールの大きな曲】と決まった。
「で、例えばどんな??」
律の言葉に、4人はふたたび頭を抱える。
そこへギターを忘れたことに気が付いた梓が帰ってくる。
梓が帰ってきたことに気が付いた4人は、その真剣な表情をひっこめてしまう。
そして梓は先ほど帰ってきたことを聞き、あからさまにホッとした表情をした後、ギターを梓に渡して再び見送ったのである。
ギターを受け取った梓は、帰り道、4人が何か隠し事をしている事に気が付いていた。
(怪しい…。)
しかし何を隠しているかまでは、悟っていないようであった。
【ロンドン】
いよいよ卒業旅行当日。
唯たちは日が昇らない時間に家を出発。
唯と梓はギター、澪はベース、律はドラムスティックを持ってきていたので、キーボードを持ってきていなかった紬は「私も持ってくればよかった!」と残念そうに叫び声をあげていた。
空港に着いた4人は、手続きを済ませ飛行機へ。
暗い機内で目を覚ました唯は、梓へプレゼントする曲の歌詞を考えようとノートを取り出す。
ただ歌詞らしいことは何も書けず、【ワールドワイド】【ロック】【スケールでっかい!】【アウトロー】とかいて眠ってしまい、そのメモをみた梓に妙なイメージを植え付けてしまうことになった。
(なんだろう…まさか今さらだけど、本当に放課後ティータイムの方向性変えるつもりじゃ。)
梓の脳裏にゆるゆるフワフワな4人が浮かぶ。
(もしくは本当に留年しちゃって、今後の事考えなくちゃいけないとか…。)
(アウトローで、ロックで、スケールでっかい先輩って…。)
それからしばらくして、梓はいつの間にか眠っていたようで、目を覚ますころにはイギリスに到着していた。
空港の外に出た唯たちは、タクシーで予約してあるホテルへ。
しかしロンドン市内にいくつかあるホテルだったらしく、予約していたホテルとは違ったため、5人は地下鉄に乗ってホテルへ移動することに。
「どうしたのあずにゃん?」
ふと、唯が梓の異変に気が付く。
梓は新しい靴を履いてきてしまったらしく、靴擦れを起こしていたのである。
4人は新しい靴を買うことを提案し、荷物を持ったまま澪が行きたいというガイドブックに載っている場所へ向かうことに。
梓は新しい靴を購入し、靴擦れ問題は無事解決。
しかしすでに時間は夜となり、歩き疲れた5人は偶然回転ずしを見つけ、そのお店に入ってみることに。
5人を出迎えたのは、大きなイギリス人男性だった。
英語で話しかけられるのだが、何を言っているかまったくわからない唯は、とりあえず「YES.」と言ってその場を切り抜けようとする。
しかしそれがある重大な問題を引き起こしてしまった。
5人は店員に言われるがまま、荷物を預け青いハッピを身に纏う。
「すごいね。ロンドンのお寿司屋さんってハッピ着て食べるんだね。」
「焼肉屋さんのエプロンみたいなもんか?」
そこへ店員がやってきて、「OK!Would you like to get on the stage?」と言ってステージに上がるように促されてしまう。
ステージには先ほど唯たちが預けたギターとベースが用意されている。
唯たちは慌てて演奏しに来たのではなく、ご飯を食べに来たことを伝えようとするが、英語が上手く伝わらず、止むを得ず演奏をすることに。
演奏する曲は、唯がご飯繋がりということで選んだ【カレーのちライス】である。
ライブは無事に成功し、店員もお客も満足そうであった。
「Woo foo!Thank you!アリガトウゴザイマス!」
店員にお礼を言われた唯たちは、今度こそお寿司を食べようとするが、「Thank you!!Love Crisis!」と言われてそのまま店の外に見送られてしまった。
5人は店の前に座り込み、途方に暮れてしまうが、いつまでもそこにいては邪魔になるからと移動を開始。
そのタイミングで、「りっちゃん、澪ちゃん!」と日本語で声をかけられる。
声をかけたのは、以前ライブハウスで一緒になった【ラヴ・クライシス】だった。
【ラヴ・クライシス】はライブハウスの店員、川上さんの紹介で寿司バーの開店祝いとして演奏することになっていたそうだ。
つまり唯たちは【ラヴ・クライシス】と間違えて演奏することになったのである。
こうなった事情を察した5人は、【ラヴ・クライシス】に別れを告げ、とりあえずホテルへ向かうことにしたのだった。
幸い、食事の問題は直ぐに解決した。
憂が唯の荷物を用意するとき、日本食をたくさん持たせてくれたので、5人はそれを仲良く食べることにしたのである。
深夜、梓は唯のベッドサイドが光っていることに気が付く。
唯は何か書いている途中に力尽きて眠ってしまったようだ。
梓は電気を消そうとベッドから起き上がるが、ノートを見て固まってしまう。
ノートには【あずにゃんLOVE】という文字が残されていたのだ。
(ゆ、唯先輩、怖っ!!)
梓はそのまま唯から距離を取り、ベッドに戻り布団を被る。
唯に狂気を感じてしまった梓は、翌日から唯と微妙に距離を取ることになった。
翌日、5人は梓の決めた行程に従ってロンドン市内を観光することに。
夜、あちこち観光して疲れた5人はホテルの自分の部屋へ。
唯と2人きりになることを警戒した梓は、部屋に入るなり飛びついてきた唯に思いっきり肘鉄を食らわせてしまう。
「す、すみません、大丈夫ですか!?でも…私、そういうんじゃないんです!!」
「ど、どういうの…?私はギー太に抱き着こうとしただけなのに…。」
梓は唯にしっかりそういう気はないことを告げるが、それはただの勘違いで、床に伏せた唯は涙目で自分のギターに向かって手を伸ばす。
「え!?」
自分の勘違いを悟った梓は、顔を真っ赤にして「勘違いでした!!」と言いながら布団にもぐりこむ。
唯も特に怒った様子はなく、梓のベッドに上がり、よしよしと布団の上から頭を撫で、眠り込んでしまった。
【ライブ】
目を覚ました唯は、眠る梓を置いて律たちの部屋へ。
梓にプレゼントする曲の歌詞を相談するためだ。
旅行中、それぞれで歌詞を考えていたが、結局いい案は思い浮かばなかったらしい。
翌日、唯は梓のことをジッと観察しながら、歌詞を考える。
しかしロンドンの街中に佇む梓を見ても、いい歌詞が浮かぶことはなかった。
そんな時、律の携帯にライブハウスの川上から電話がかかってくる。
川上はラヴ・クライシスから放課後ティータイムもロンドンにいることを聞き、日本のポップカルチャーを紹介するイベントに出演してほしいと言ってきたのである。
明日は帰国する日であることから、どうしようか迷う一同だったが、唯が「私、演奏したい。」と声を上げたことで、イベントに参加する決意を固める。
翌朝、唯たちは揃ってホテルで朝食を食べるために移動していると、紬が慌てた様子でロビーに向かう。
「ひょっとして、ムギのキーボード?」
「だってみんな持ってきてたんだもの。」
紬はみんなが楽器を持ってきていたことを知ってすぐに、家に連絡を取ってホテルに自分のキーボードを送ってもらっていたのである。
唯たちは荷物を持って、イベント会場へ。
そこはロンドン・アイにほど近い場所である。
放課後ティータイムが出演するのは、外に用意されたステージだった。
5人は係の人に「セッティングをしてください。」と言われたので、それぞれ楽器のチューニングを始める。
その中で、唯がギターをアンプに繋げようとした時、ふいにホテルでドライヤーのコンセントを入れた時、火花が出た記憶が脳裏を過ぎった。
「これ…挿していいのかな?火花が出たりしない…?」
唯の言葉にハッキリ答えられる人はおらず、5人は困惑してしまう。
「私、スタッフの人呼んでこようか?あっ!」
紬がスタッフを呼ぶためキーボードの前を離れようとした時、唯の背後からニュッと手が伸びてきてギターケーブルを奪われてしまった。
「そのまま挿せばいいのよ!」
「っ!!さわちゃん!?」
現れたのは、さわ子だった。
「そもそもそのギター、日本のメーカーじゃないでしょう?」
呆れたように話すさわ子はマイルを使ってロンドンにやってきたそうだ。
ライブハウスの川上とは旧知の中であり、ロンドンでライブをすると聞いて、顧問としてやってきたらしい。
「とっておきの衣装も持って来たわよ!ジャパニーズ、レディス、忍者!!」
さわ子のスーツケースから出てきたのは、お手製のくの一衣装だった。
観客には大うけであったが、律が部長権限で却下。
「はい、スタンバイ、スタンバイ。」
律の合図でそれぞれステージに立つ準備を進め、いよいよ放課後ティータイムライブはスタート。
いくつか曲を演奏した後、【ごはんはおかず】を最後に演奏。
その途中、唯がステージの傍に赤ちゃん連れの家族がいることに気が付いた。
赤ちゃんにカッコイイところを見せたいと思った唯は、曲の終盤で、「もう一回!」と声をかけサビの部分をもう一度歌い始める。
「スカイハイ!!」
結局、ライブが終わったのは空港に向かうギリギリの時間だった。
唯たちは荷物を抱えながら走り、タクシーに飛び乗って空港へ向かった。
空港へ向かう中、梓は疲れて眠り込んでしまう。
その願いを見つめながら、唯は「すごいことに気づいたよ。」と小さな声で律たちに話しかける。
「いつもの自分達の曲でいいんだよね。」
「あら?今ごろ気づいたの?」
「え?」
「私もそう気づいてたわよ、唯ちゃん。」
「え?ムギちゃん。」
「私もとっくの昔に気づいてたぞ。」
「え~…。」
こうして、軽音部の卒業旅行は終わり、唯たちは日本へと帰国したのだった。
【卒業ライブ】
登校日。
唯たちが学校へ向かうと、ロンドンでライブをしたことを知ったクラスメイトたちから、卒業ライブをやってほしいと頼まれる。
卒業ライブという発想がなかった4人は、さっそく担任でもあるさわ子の元へ。
さわ子はもともと軽音部のOGで、教室でライブを行うことを承諾しようとしたのだが、他の教師に止められそうになったので、口頭では反対しつつ、近くにあった紙に【朝とかどう?】と書いて承諾の意思を見せた。
実はその教師とは、さわ子が高校3年生の時に担任だった教師なのだ。
(あの時、なんか知らないけどめちゃくちゃ怒られたのよね。)
さわ子はかつての自分とは違い、フワフワした後輩たちが無事に卒業ライブができるように守る決意を固めたのである。
そして最後の登校日、唯たちは楽器を教室へ。
教室ではクラスメイトたちが机を黒板の前に並べて、ステージを用意していて、いよいよライブがスタート。
さわ子は教室に向かわず、ソワソワと職員室を行ったり来たりしていた。
「おや?山中先生、お早いですね。」
そこへかつての恩師が出勤してくる。
最初は和やかなムードだったが、職員室にまで響く音を聞いた恩師が「この前話していたのはこれか!怪しいと思ってたんだ。」鞄を置いて職員室を飛び出していき、さわ子はそれを慌てて追いかけていった。
教室では最後の曲【U&I】の演奏がスタート。
唯は演奏の途中、ステージから飛び降りる。
そして教室中にいるクラスメイト、そしてステージに残る仲間を見つめながら歌い続けた。
卒業ライブは無事に終わり、ライブを行ったことによるお咎めもなかった。
唯たちに残されたのは、梓へ贈る曲を固めることだけだった。
【完成】
唯たちは卒業式まで、何度も集まって歌詞は無事完成。
「唯、まさかとは思うけど、このことは梓に…。」
「大丈夫だよ!憂にも内緒にしてるもん。」
唯がそう言ったように、梓は唯たちの計画にまるで気が付いていなかった。
ただ何か隠していることには気が付いていて、それに疎外感を感じているようだ。
その落ち込んだ様子に、憂はたまらず「大丈夫だよ、梓ちゃん!」と声をかけていたのである。
夜になり、唯の部屋に憂が訪ねてくる。
梓に贈る曲の歌詞を考えていた唯は、慌てて歌詞を書いてあるノートを机の下に投げ捨ててベッドに潜り込んだ。
「お姉ちゃん、またほっぺに玄の痕が付くよ。あっ…。」
机の下にあるノートに気が付いた憂は、そっと視線を反らし、「早く寝てね!」と伝えて部屋を出ていこうと足を進める。
しかし唯が憂を呼び止めた。
「ありがとうね。私、ちゃんと卒業できるよ。」
「うん!」
ギターを撫でながら感謝の気持ちを伝える唯に、これまで様々な面で支えてきた憂は嬉しそうに頷く。
「憂、大学行っても、みんなでお茶できるよね?」
「もちろん。出来ると思うよ。」
「そっか、よかった~!」
唯は憂の言葉に安心したようで、今度こそ「おやすみ。」と告げて憂は部屋を出て行った。
その後、憂は梓に【何も心配ないと思うよ。】とメールを送り、卒業式前日の夜は更けていった。
【卒業】
卒業式の朝、唯は梓に贈る歌を歌いながら首を傾げている。
【でもね 会えたよ 素敵な君に】という歌詞が、どうしてもしっくりこなかったのだ。
卒業式の後、唯は軽音部の部室へ向かう。
すると、部室の前にある屋上の入り口から、律が唯の名前んだ。
「唯!開いてたぞ!!」
4人はそれぞれ荷物を置いて、「わー!」と叫び声を上げながら走り回る。
そして荒く息を吐きだしながら、ギュッと互いを抱きしめあう。
「ねぇりっちゃん…私、上手く演奏できるかな?今までで一番緊張してるよ。」
「私も…手がすごく冷たいの…っ!」
普段どれだけ寒くても、手が温かい紬の指は氷のように冷たくなっていた。
4人はとても緊張していて、梓が喜んでくれるか不安だったのだ。
「よかった!みんなドキドキしてたんだね。」
「当たり前だ!」
その時、風が強く吹き、空高く跳んでいくハトが唯の視界に飛び込んできた。
そのハトを見て、唯はあることを思い出す。
「私が初めて律ちゃんたちの演奏を聞いたのって【翼をください】だったよね。」
「それで4人で軽音部が始まって…。」
「梓が入ってきてくれて…。」
「すごくパワーアップしたよね!」
「梓のカッティングで音が閉まるんだよな。」
みんなの言葉を聞いた唯は、あることに行きついた。
「そっか…私たちに翼をくれたのは、あずにゃんなんだ。あずにゃんは私たちに翼をくれた、小っちゃくて可愛い天使なんだよ!」
「天使って。」
「そうかもしれないな。」
律は少し照れくさそうに、澪は素直に同意を示す。
そして【天使】という単語に、ビビッときたのか、ずっとしっくりこないと感じていた歌詞を【でもね 会えたよ 素敵な天使に】というフレーズに変えて歌い始める。
「この曲も、あずにゃんの羽になるかな?」
「なる!…と、思いたい。」
唯の言葉に自信満々に返事をした律だが、最後の方が自信なさげに俯いてしまった。
「なるわ!梓ちゃんへの想い、いっぱい詰め込んだもの!」
「気に入ってくれるといいな。」
4人は空を見上げたあと、「お茶にしようか。」と言って部室に戻っていった。
【天使にふれたよ】
唯たちはお茶を飲みながら、どうやって梓に切り出すか相談を始める。
「あ、ちょっと待って。この話をしてる時っていつも…。」
紬がそう言ったタイミングで、梓が部室のドアを開けて入ってきた。
「すみません…今日くらいはお茶、入れようと思ってたんですけど…。」
そんな梓の言葉に、唯たちは顔を緩ませて笑みを浮かべ、お茶をいつも入れている紬はお盆を持ったまま「だめよ~。」と微笑みかけた。
「あずにゃん、こっちにおいで。」
唯は梓を椅子に座らせる。
そしてチューニングを済ませたあと、梓の為に作った【天使にふれたよ】を歌い始める。
唯、澪、律、紬は、梓の為に心を込めて作った歌詞を歌う。
そんな先輩たちの姿を、梓は一瞬たりとも逃さないように、瞳を潤ませながら見つめていた。
演奏が終わった後、梓はすぐに立ち上がり、頬を真っ赤に染めて一生懸命両手を叩いていた。
【いつまでも】
唯たちは夕焼けに染まる道を歩いて行く。
演奏は大成功で、梓は曲を気に入ってくれたようだ。
澪は感激のあまり泣いてしまったようで、それを律にからかわれていた。
「そうだ!来年はどこいく?」
唯が駆け出し、他の3人もそれに続く。
「来年?」
「あずにゃんの卒業旅行!」
「行くのかよ。」
「行こうよ!」
唯は両手を広げて真っ直ぐ走り、友人と共に先の方を歩いていた梓に思いっきりダイブしたのだった。
感想
今でこそ珍しくなくなりましたが、コンビ二などで展開するコラボーレーションの先駆けともいえるアニメが「けいおん!」だと思います。
アニメ放送当時、「けいおん!」の楽曲がオリコントップ10入りするなど、考えられない偉業を達成したという経歴もあります。
ちなみに「けいおん!」というアニメは、ビジュアルから萌えアニメのように思う人もいますが、圧倒的に緩い日常アニメです。!
女子校に通う女の子たちが、バンド活動2割、ティータイム8割くらいの割合で日々を過ごすという内容です。
疲れた時、何も考えたくない時、可愛い女の子に癒されたい時、いつでも何度でも見ることができるアニメが「けいおん!」というアニメだと思います。
しかし、ただ緩い日常アニメというだけでは、世間に一大ブームを巻き起こすことはできません。
「けいおん!」は何と言っても歌がいいんです。
OP・ED、そして劇中歌もすべて放課後ティータイムが歌っています。
可愛い曲からカッコイイ曲まで揃っていて、今回の映画では特に人気がある曲が複数使用されました。
さて「映画けいおん!」は、卒業間近のストーリーが映画化されています。
アニメ放送は卒業式まで放送されているのですが、卒業間近の話はほとんどなかったのです。
映画ではロンドン旅行の話が中心で、ロンドンの街並みの美しさは本当に感動してしまいます。
まるで本物のような背景なのに、アニメキャラクターたちが動いても違和感がない、いい仕事がなされています。
あとアニメだと青空が多く描かれたりするのですが、ロンドンってほとんど晴れの日がないそうなんです。
その辺もちゃんとわかっている背景がばかりで、さすが京都アニメーションであると言えるでしょう。
ストーリーの軸として去る者と残される者の複雑な気持ちが描かれていたと思います。
唯たちは同じ大学に進学し、今後も放課後ティータイムとして活動できることに喜びと、たった一人の後輩を残していく寂しさの狭間にいたんだと思います。
逆に梓は、大好きな先輩たちがいなくなる寂しさを一生懸命隠しているいじらしさがあって、高校生に戻りたい!という気持ちになることができました。
そして、そんな気持ちに区切りをつける曲【天使にふれたよ】が最高なんです。
「けいおん!」の数ある楽曲の中で、【U&I】に並ぶ名曲ですから、どちらも聞いたことがないという人は、これを機会に聞いてほしいと思います。
ちなみに【天使にふれたよ】を演奏をした後の梓の感想は、アニメ版で知ることができますので、気になる方はぜひアニメ版を見ましょう!
「けいおん!」というアニメ作品は、この映画でピリオドが打たれているのですが、原作はもう少し続いていて、唯たちの大学生編と、軽音部に残された梓のことが描かれた漫画が発売されています。
放課後ティータイムのその後が気になる人は、ぜひそちらも読んでみてください。
「けいおん!」はストーリーがあって無いようなもの作品ですから、どこから見始めても楽しめると思います。
特に映画は、どんなストーリーなのか大まかに知ることができるのでオススメですよ。
劇中かも実際に演奏しているシーンがすごいので、ぜひ聴いて観て、感動してみてください。

小学生と幼児のママ。常に娘のコスネタを模索中。育児のストレスはアニメ鑑賞と妄想でリカバリー中。今のブームは型月&刀剣乱舞。
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