「しあわせのパン」のあらすじ・感想・ネタバレ~「マーニ」が教えてくれる、一つのパンを大事な人と分け合う幸せ~ | VODの殿堂

映画

「しあわせのパン」のあらすじ・感想・ネタバレ~「マーニ」が教えてくれる、一つのパンを大事な人と分け合う幸せ~

   
 

タイトル:「しあわせのパン」
公開:2011年
監督:三島有紀子
出演: 原田知世、大泉洋、あがた森魚、余貴美子、本多力 他
視聴したVOD:dTV(2018年5月3日時点では視聴可)

北海道の洞爺湖の湖畔にある小さなパンカフェ「マーニ」を営む夫婦。
店に訪れる様々な客たちとの交流を描いたハートフルな物語です。

主演の夫婦役、大泉洋が包み込むような温かな演技、原田知世が透明感のある演技を見せています。

オール北海道ロケで撮影された、美しい風景も見どころです。
あらすじと感想をまとめてみましたのでご覧ください!

『しあわせのパン』配信先一覧
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Amazonプライム・ビデオ
※配信状況は2020年1月28日(火)時点のものです。
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【あらすじ】

『月とマーニ』

りえ(原田知世)の初恋の相手は「マーニ」だった。
小学生の時、図書館で読んだ絵本「月とマーニ」の主人公の男の子だ。
マーニは自転車のカゴに月を乗せて運ぶ少年。
ある日、月はマーニに「太陽の光が眩しすぎるから取ってほしい」と頼む。
だけど、太陽がないと月はいなくなり、夜道を歩く人を照らすこともできない。
マーニは月にこう言った。
「大切なのは、君が照らされていて、君が照らしているってことなんだよ」

大人になっても、りえはずっとマーニを探していた。
東京で働くうちに、たくさんの好きじゃないものが増えていき、りえの心にはどんどん「大変」が増えて行った。
大変なことは増え続け、たった一人の家族の父が亡くなり、りえはもうマーニはいないのだと思うようになった。
そんな時、水縞尚(大泉洋)から「月浦で暮らそう」とプロポーズされたのだった。

 

『パンカフェ「マーニ」』

北海道、洞爺湖の湖畔の町、月浦に「マーニ」がオープンして一年が経った。
オーナーの水縞尚と妻のりえが二人で営むマーニは、尚の焼く美味しいパンとりえの 淹れるとびきりのコーヒー、そして季節の野菜を使った料理が味わえるカフェだ。
遠方からの客のために二階には宿泊施設も備えている。

マーニの常連客はみんなどこか変わっていた。
毎日やってくる郵便配達の男はりえのファン、大きなトランクを抱えてやってくるいつも穏やかな阿部さん(あがた森魚)、地獄耳で情報通のガラス作家の陽子さん(余貴美子)。
繁盛店ではないけれど、地元の人達に愛されるマーニ。
毎日美味しいパンと料理で客をもてなす水縞夫婦も、そんな生活を楽しんでいた。

 

『夏~失恋のお客様』

マーニに東京からの宿泊の予約が入った。
やってきたのは、齊藤香織(森カンナ)という若い女性で最初から妙に不機嫌そうな様子だ。
時を同じくして、尚の親戚の青年、山下時生(平岡祐太)がやってきた。
同じ月浦に住む時生は休暇を取ってふらりと遊びにきたのだった。

夜、夕食のテーブルで香織はワインを浴びるように飲んで酔っ払う。
そして、本当は彼氏と沖縄旅行に行くはずだったのにドタキャンされたことを話し始める。
会社の同僚たちにはフラれたことが言えず、沖縄に行くふりをして北海道まで一人でやってきたのだ。
しかも、明日は自分の誕生日なのに・・・と嘆く香織。
そして、酔っ払った香織は時生に絡みだした。
香織は、ずっとここに住んでいるという時生に向かって、毎日静かに暮らせて羨ましいと言う。
「知らないと思うけど、東京で働くのってとっても大変なの」と話す香織に時生は不機嫌な顔を見せる。
「ここにだって色々ありますよ」と言い、生まれも育ちも東京の香織に対して、恵まれてると言い捨て去っていった。

夜中、時生が目を覚まし窓の外を見ると、香織が庭で彼氏への恨みを大きな声で叫んでいた。
転んで泣きながら転がっていく香織の姿に、時生は思わず笑ってしまうのだった。

 

『時生と香織』

時生は香織に興味を持ち始めた。
翌日、時生は誕生日のプレゼントとして香織にひまわりの花を渡す。
香織は会社の同僚達への沖縄土産を探すのに時生を付き合わせた。
しかし、当然どこにも売っておらず、地獄耳の陽子さんからコロポックルという北海道の伝統的な木彫りの人形を貰った。
コロポックルは小さな幸せを運んでくる、と陽子が言うと「私は大きな幸せがほしい!」と言う香織にまたもや時生は笑ってしまった。

その夜はマーニで香織の誕生会が行われた。
尚は「クグロフ」という特別なパンを焼き、バースデーケーキのようにろうそくを灯した。
水縞夫妻の心のこもった料理ともてなしに、香織は素直に感激した。
りえに、大きなパンを半分に割って渡す尚。
一つのパンを分かち合う二人の幸せそうな姿が香織には眩しかった。
そんな二人にならい、差し出された大きなクグロフを時生は半分に割って香織に渡すのだった。

パーティーの後、香織は時生に自分のことを「カッコ悪いと思ったでしょ?」と聞く。
時生は「カッコ悪い自分を知っている人が大人だと思う」と言う。
幸せになる人は、もがいたことがある人間だ。
一生懸命幸せになろうともがいている香織、しかし自分は北海道から出られずもがくことも出来ない。
そんな時生に香織は「それってもがいてるじゃん、一緒に東京行こう?」と誘う。
しかし、時生は無理だと断るのだった。
明日、香織は東京へ帰ってしまう。

翌朝、香織のチェックアウトの時に時生はもうすでに帰ってしまっていた。
香織はショックだったが、気を取り直してマーニのパンを「月浦のお土産として皆に渡す」と買った。
今までで一番の誕生日だったとりえに伝え、またいつでも来てくださいという尚の言葉に送られて香織は帰っていった。
しかし、バスを待っている香織の元にバイクに乗った時生が現れた!
東京まで送っていく、という時生の後ろに香織は喜んで乗った。
香織のカバンの中でコロポックルが揺れる。
東京までの1000キロの道、二人なら大丈夫。
香織と時生、一人から二人になった瞬間だった。

 

『秋~小さなお客様』

美しい三日月の夜。
りえは、時生が東京までちゃんと運転できるかな?と尚に聞いた。
しかし、月を見上げるりえは何か他に想いを馳せているようであった。
「大丈夫、僕だって出来たんだから」という尚に、「ここまで遠かったね」とりえは言う。
尚は、そんなりえに「ここで無理して笑うことはないよ、僕の欲しいものは一つだけですから」と言った。
しかし、それが何かと尋ねると「内緒です」と言うのだった。

そして、季節は秋になった。
ある日、夫妻は店の前のバス停で一人立ちすくんでいる悲し気な少女を見かけた。
りえは、その少女、未久を店に招きホットミルクを出してあげた。
ちょうど店には沢山の常連客が詰めかけ賑わっていたが、未久はずっと体を固くして背を向けたままだ。
尚が小学校にパンを届けるついでに未久を送っていく。
学校ではクラスメイト達と楽しそうに過ごしているが、帰りのバスの中では未久の笑顔が消えた。
誰もいない家の鍵を開け、テーブルの上には晩御飯代と書かれたメモと千円札があったが、未久はそれを使わず学校から持ち帰ってきた給食のパンを食べた。
父親が帰宅すると、未久は「ママのかぼちゃのポタージュが食べたい」と言うのだった。

未久の父親が、マーニを訪ねてきた。
りえに、かぼちゃのポタージュがあるかどうかを聞きかけ、すぐに言葉を濁したがりえは何かを察した。
後日、店の前に佇んでいる未久をりえは中に招いた。
そして「どうぞ」と未久の前にかぼちゃのポタージュを出した。
未久はママが作るかぼちゃのポタージュが大好きだった。
しかし、父と母は喧嘩をくり返すようになり、ある日母親は出て行ってしまった。
家族三人で食卓を囲み、かぼちゃのポタージュを飲んだ幸せな記憶がよみがえる。
未久は「いらない、絶対にいらない!」と叫んで店を出ていくのだった。

 

『未久とパパ』

水縞夫妻は、未久を夕食に招いた。
「あったかい夕食を作っています。お腹が減ったら食べにきてください」と書かれた招待状を受け取り、未久はマーニを訪れた。
すると、そこに未久の父親もやってきて二人は驚く。
未久と父親、それぞれに招待状を出していたのだ。
夕食を向かい合って黙々と食べる二人、しかしそこにりえがまたかぼちゃのポタージュを持ってきた。
未久はまた逃げ出してしまい、りえは後を追おうとするが、尚は「未久ちゃんは大丈夫」と制した。
外に出た未久の頭上には美しい半月。
その月を見上げた未久は、決意したように店内に戻ってきた。

かぼちゃのポタージュを一口飲んで「美味しいね」と言う未久。
しかし「でも、違うね。ママのかぼちゃのスープとは違うね」と呟く。
そして、父親に「ママはもう戻らないんだよね?」と聞いた。
父親は悲し気に「ああ、戻らない。ごめんな・・・」と答えた。
すると、店内にいた阿部さんが突然立ち上がり、いつもの大きなトランクからアコーディオンを取り出し演奏を始めた。
アコーディオンは美しく切ないメロディを奏で、親子は涙を流しながら聴き入る。
未久は父親の側に行き「パパと一緒に泣きたかった」と言う。
二人は手を握り合い、初めて一緒に悲しみを分かち合った。
そして、一つのパンをちぎりあってかぼちゃのポタージュに付けて食べたのだった。
二人は夫妻に礼を言い、手を繋いで帰っていった。
一人じゃなく、二人だと気づいた瞬間だった。

 

『冬~月を見に来たお客様』

月浦に厳しい冬がやってきた。
ある、月も凍りそうなとても寒い晩に一組の老夫婦がマーニを訪れた。
少しだけ休ませてほしい、と駅から電話をもらい尚は車で迎えに行った。
車中で、その老夫婦、阪本史生とアヤは前にも一度月浦に来たことがあると言う。
旅行中に、この月浦の有珠駅でプロポーズし、生まれた娘は有珠と月浦を合わせて「有月」と名付けたこと、あの時二人で見た月をまた見に来たのだ、と話した。
喋るのは夫の史生ばかり、尚は穏やかに話しを聞きながらもどこかおかしいと感じていた。

店に着き二人に食事を出そうとするりえ。
しかし、アヤがパンが嫌いだと聞きご飯を炊こうとするが、ちょうど米を切らしていた。
外は吹雪になっていたが、尚は米を買いに車を出した。
出かける際に、りえに二人をしっかり見ているようにと念を押した。

阪本夫妻は互いに寄り添って座っていた。
外の雪がやみ、月が顔を出すと「そろそろ、月を見に行こうか。有月も待ってるわ」と史生はアヤに言った。
食事を作っていたりえが振り向くと、二人は店を出ていこうとしていた。
ちょうど尚も戻ってき、二人で必死に止める。
月を見に行く、と言い張る史生に尚は大きな声で言った。
「月ならうちから見えますから!この窓からよーく見えますからっ!」

 

『史生とアヤ』

店に戻り、少し落ち着いた史生。
りえは、二人は連れ添って何年になるのか訊ねた。
50年になる、と答え夫婦が過ごした半生を話し始める史生。

神戸で銭湯をやってきたが、阪神大震災で失ってしまったこと、そして娘の有月も亡くしてしまった。
露わになった風呂桶を見てアヤは「これが本当の露天風呂だ!」と笑った。
失意の中でも明るく前向きなアヤと一緒に、何とか銭湯を立て直したが、日毎に体は衰えていく。
昨日出来たことが今日は出来ない、明るかったアヤも今は認知症を患っている。
もう、十分じゃないか・・・、十分生きた。
史生はアヤと心中しようと、思い出の月浦にやってきたのだった。

食事の準備が出来て、二人の前には炊き立てのご飯と温かいポトフが置かれた。
ポトフを喜んで食べていたアヤは、ふと後のカウンターに置かれた焼き立ての豆のパンに気が付く。
ふらふらと立ち上がって、おもむろに豆パンを掴むアヤに史生は慌てた。
そして、アヤは豆パンを美味しそうに無我夢中で食べ始めた。
史生は「パン、美味しいんか?」と聞くとアヤは「美味しい、お豆が入ってて美味しい」と子どものように答えた。
そして「明日もこのパン食べたいな」と呟き、史生の顔に驚きが広がった。
「お父さん、ごめんなさいね」と言うアヤに史生は涙を流しなら「判った」と答えた。
そして、アヤは食べていた豆パンを割って史生に渡し、二人は一つのパンを味わった。

その夜、仕込みのパンをこねている尚のところに史生がやってきた。
「パンもええですなぁ」と言う史生に尚は「はい、いいです」と笑った。
尚は史生に、自分の好きな言葉は「カンパニオ」だと教える。
そして「カンパニオ、さてどんな意味でしょう?」と唐突に質問する。
元々の語源はパンを分け合う人達、という意味だとヒントを出すが、当然ながら史生にはわからない。
尚は答えを明かす代わりに「しばらくうちで過ごしませんか?もう少しいてくれたらここから満月が見えるんです」と笑顔で言った。

 

『カンパニオ』

マーニに常連たちが、それぞれ手土産を持ち寄って集まった。
阿部さん、郵便屋さん、陽子さん、いつも野菜や米を売ってくれる広川夫妻。
持ち寄った食べ物をと焼き立てのパンとワインを並べ、楽しいパーティ―が始まった。
阿部さんのアコーディオンに合わせて、輪になって踊り、史生もアヤも楽しい時間を過ごした。

そして、満月の夜。
史生とアヤはマーニから満月を眺めた。
アヤは「月は、いつもここにあるね。お父さん、ありがとうね」と笑顔で言った。

翌日、二人は帰ることにし、水縞夫妻は駅まで見送った。
史生は、カンパニオの意味は「家族」ではないか?と尚に言う。
尚は、惜しいと言い「仲間って言う意味なんです。でも、それが家族の原点だと思う。」と答えた。
笑顔で帰っていく二人を見送った後、りえが言った。
「ずっと見てて、私のこと。水縞くんのことも見てるから。」
そして、「ありがとう、水縞くん。私のためにここに来てくれて。」と言うりえに、尚は笑いながら「頼んだのはこっちだよ。」と言った。
二人は手を繋いで家路についた。

 

『春~しあわせ』

そして、春が訪れた頃、マーニに一通の手紙が届いた。
差出人は阪本史生、手紙にはアヤが亡くなったことが綴られていた。
あの時、もうすでにアヤの余命は長くなかった。
自分はアヤと一緒に月浦で死のうと思っていたこと、しかしそれは自分の傲慢だったと書かれていた。
嫌いだったパンを美味しそうに食べるアヤを見て、人間は最後の最後まで変化し続けるのだと知った。
そして、最後まで懸命に生きたアヤを見届けることが出来て良かった、マーニで仲間たちと過ごした時間にこそ、しあわせがあるのだと思うと手紙は結ばれていた。

手紙を読み終え、アヤの死に心を痛めるも、史生とアヤの夫婦の絆に感銘を受けた二人。
ある日の食卓で、りえは尚に言った。
「見つけたよ、私のマーニ」
りえの心からの幸せそうな笑顔に、尚はうれし泣きをしてしまう。
尚が本当に欲しかったものも手に入ったようだ。

マーニはもうすぐ開店二周年を迎える。
今まで店を訪れた大切なお客様たちにパンを送る準備をする二人。
パンには「しあわせのパン」と書かれてあった。
後日、外から帰宅したりえが珍しく大きな声で言った。
「来年のお客様が決まったよ!」
尚は驚いて「随分先のお客様だね。どこから来るの?」と聞く。
りえは自分のお腹を指さした。

 

感想

おとぎ話によくあるような、不思議な魅力を持った特別なお店に出会いたい!
そんな願望、女の子には案外あるのではないでしょうか?

このパンカフェ「マーニ」も、そんなおとぎ話の中に出てきそうなお店です。
美しい自然の中に佇む、美味しいパンとコーヒーが味わえるお店。
そこに訪れる、問題を抱えた客たちが心を満たして帰っていく。

よくある話といえば、そうなんです。
だけど、よく出来たストーリーと、観ていくうちに自然にたどり着くテーマが心にストンと落ち着く映画です。

それぞれの客たちには、みんな一つのパンを分け合うシーンがあります。
尚とりえもいつも分け合って食べています。
人生、辛い時や悲しい時はとことん孤独になってしまいます。
だけど、自分の悲しみも苦しみも喜びも分かち合える人は必ずいるのかも、と思わせてくれます。

一つ、消化不良な部分は、りえの東京での生活で何があったのかよくわからなかったところです。
冒頭では、大変なことがいっぱいあったとサクッと語られてるだけ。
りえが時折見せる遠い表情の理由が、もう少し知りたかったですね。

北海道の大自然の美しさと、演者の柔らかな演技がとても心地いい映画でした。
あらすじでは表現できなかったのですが、この映画は語りの部分が幼い少女の声なんです。
少女が、マーニの水縞夫妻をずっと見ながら語っている感じで、最初は未久なのかと思ったら違いました。
最後にわかるのですが、実はりえのお腹の中の赤ちゃんが語っていたんです。
なんだか、素敵ですよね。
ちなみの、その声の主はポニョの大橋のぞみちゃんです!

エンディング曲の「ひとつだけ」は矢野顕子さんと忌野清志郎さんが歌っています。
個人的に、忌野清志郎さんが大好きなので、彼の歌声で映画の余韻が増しました!

 

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