「しゃぼん玉」のあらすじ・感想・ネタバレ~犯罪に手を染める孤独な青年が初めて見つけた居場所!~ | VODの殿堂

映画

「しゃぼん玉」のあらすじ・感想・ネタバレ~犯罪に手を染める孤独な青年が初めて見つけた居場所!~

   
 

タイトル:「しゃぼん玉」
公開:2017年
監督:東伸児
出演:林遣都、市原悦子、藤井美菜、相島一之、綿引勝彦 他
視聴したVOD:dTV(2018年11月1日までは視聴可)

原作は、ミステリー作家の名手、乃南アサの小説です。
ファンの間でも泣ける!と人気のベストセラーの映画化!

孤独な生い立ちから、犯罪を繰り返す青年がひょんなことから田舎に身を潜めるように。
生まれて初めて人の温かさに触れる青年の心情や葛藤が描かれて生きます。

主演は若手演技派俳優の林遣都が熱演。
老婆役に、唯一無二の存在感を誇るベテラン大女優の市原悦子。
人気ドラマ「相棒」で長年監督を務めてきた東伸児の劇場デビュー作としても話題になりました。

大自然に包まれ、初めての愛情と安らぎを得た青年はどうなるのか?
あらすじと感想をまとめてみましたのでご覧ください!

『しゃぼん玉』配信先一覧
動画配信サービス 配信状況 見放題 配信先
U-NEXT 視聴ページ
hulu
dTV
Amazonプライム・ビデオ 視聴ページ
※配信状況は2020年2月26日(水)時点のものです。
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【あらすじ】

『出会い』

雨の夜、若い女性が通り魔に襲われた。
揉み合った末に男の持っていたナイフに刺されてしまい、女性は倒れ込んだ。
男は女性のバッグを引ったくり逃走する。

男の名は伊豆見翔人(林遣都)、人生に挫折し女性や老人ばかりを狙う引ったくりの常習犯だ。
しかし、刺すつもりはなかった。
ナイフはいつも脅しに使うだけだ。
殺してしまった、と思った翔人はできるだけ遠くに逃げることにした。

長距離トラックの運転手を脅して逃亡するが、途中で蹴り降ろされてしまう。
山中で一晩を過ごした翔人、夜が明けてあてもなく山道を歩く。
すると、目の前に一台の古いカブが転がっていた。
これ幸いとカブを起こし、エンジンをかけようとした時だった。
「ぼう…ぼう…」
茂みから声が聞こえ、驚いて振り向くと頭から血を流した老婆が自分を呼んでいた。
「ぼう、ええとこ来た、やれ助かった」
と、老婆はどうやら自分に助けを求めているらしい。
「はよ、乗して」
「俺が?」
「他に誰がおる?」
そのまま逃げようと思ったが、今にも死にそうな老婆を見るに見かねて助け起こす。
翔人は、老婆をカブに乗せて送っていことになった。

 

『椎葉村』

老婆の名は、椎葉スマ(市原悦子)。
スマを病院に連れていき、家まで送り届けた翔人の元に三人の婆さん達が訪ねてきた。
皆、ここ椎葉村の住人でスマを心配してやってきたのだ。
手料理をふるまわれ、翔人は勧められるままに次々と口に放り込む。
イノシシのホイル焼き、菜豆腐、焼いたキノコ、素朴な田舎料理ばかりだったが、荒んだ生活をしてきた翔人には珍しくて美味しくてたまらない!
婆さんたちは美味しそうに食べる翔人にすっかり満足し、名前を聞いてきた。
「伊豆見…」と言いかけると、みんな一斉に「いずみ!」と声をあげる。
お父さんは良い水の湧き出るこの村の事を思って付けたんじゃねぇ、と言い合う婆さんたち。
「椎葉いずみ、いい名前じゃねぇ」
どうやら、翔人はスマの孫と勘違いされているようだった。

たっぷり昼寝をした翔人が起きると、スマは怪我人とは思えないほど元気に立ち働いていた。
翔人はスマに助けた礼をせがむ。
すると、スマはにっこり笑って「おおきにじゃった、ぼうは優しげなええ子じゃ」と皺だらけの手で翔人の手を握りしめた。
「ええ子に育った」と親し気に頭まで撫でてくる。
拍子抜けした翔人はスマに「俺と婆ちゃん、知り合いか?俺の名前知ってる?」と聞く。
「いずみ、ってみちよが言うちょったけど…いずみねぇ、本性の名前かい?」と平然と答えるスマ。
みちよ、と言うのはさっきの婆さんたちの一人だろう。
スマはボケてはいないし、翔人が孫でないことも分かっている。
しかし、翔人のことを詮索しようとも追い出そうともしない。
そうして二人は、まるで本当の祖母と孫のように一緒に暮らすようになった。

 

『翔人とスマ』

スマは、老齢で怪我人にも関わらず毎日達者に畑仕事に向かう。
翔人は、毎日昼まで寝てダラダラと過ごしていた。
家のどこかにお金はないかと探しているが一向に見つからない。
スマは何もせず寝てばかりの翔人を責めることもなく、毎日美味しいご飯を作ってくれた。

ある日、翔人が庭先でぼんやりと過ごしているところに1人の老人がやってきた。
山の向こうに住むシゲ(綿引勝彦)と名乗る爺さんは、日がな一日ゴロゴロしてばかりの翔人を叱咤する。
「いい若いもんがそんなんでどげんすっとや!」と怒られるが、翔人は何もやることがない。
見かねたシゲ爺は翔人に「わしの手伝いをせんか?」と誘う。
もうすぐ、椎葉村では「平家まつり」という大きな祭りが行われる。
県外からも観光客が訪れる、村にとっては年に一度の大イベントだ。
その祭りで売るものを山へ採りに行くのを手伝うように言われるが、気の進まない翔人。
しかし、採ったものは祭りで売ったらええ、と言われ金欲しさに引き受ける。

晩御飯の時に、翔人がシゲ爺を手伝うことになったと聞いたスマは「そりゃ、ええ!」と喜ぶ。
翔人はスマに「なんでこんなに俺によくしてくれるの?」と聞いてみた。
スマは、なんでじゃろうねぇ、と言い「ぼうは、ええ子じゃ」と言葉を重ねる。
思わぬ温かさに触れ、翔人は自分の離婚した両親のことを話してしまう。
父親は借金を作って家を出ていき、母親も若い愛人を作った、どっちもろくなもんじゃない。
翔人の話を聞き、スマも息子「豊昭」のことを話し始めた。
村を出ている息子も離婚して勝手をしている、あの子も息子に同じように思われているのかもしれない、と。
スマと翔人は、それぞれ自分の家族について複雑な想いを抱えていたのだった。

 

『シゲ爺と翔人』

翌朝、まだ暗いうちにシゲ爺にたたき起こされた翔人。
早くせえ!と怒鳴られながら慌ててシゲ爺の車に乗り込む。
車中で、スマが持たせてくれた大きなおにぎりを朝食代わりに食べる翔人。
スマが握ってくれるおにぎりはいつも特大で海苔にグルっと包まれており、とても美味しい。

山は翔人が考えていたよりずっと大変だった。
険しい山道をどんどん登っていくシゲ爺についていくのがやっとだ。
ヘトヘトになりながらも、なんとか無事に一日目を終えスマの家に帰ってきた。
シゲ爺は「初めてにしちゃすげえぞ」と、ちゃんと最後までついてきたことを褒めてくれた。
それを聞いたスマも「ぼうがあの山奥まで入っていけたとね!そりゃ、すげえわ!」と喜び翔人の頭を撫でるのだった。

それから毎日、翔人はシゲ爺と山に登った。
山仕事は大変だが、徐々に慣れていきシゲ爺との呼吸も合ってきた。
シゲ爺は翔人に言う。
「おまえはいつも逃げる事ばっかり考えとる。もういい加減、自分から向かっていく力をつけにゃあ」
図星なだけに翔人の耳は痛かった。
しかしシゲ爺は「やれば出来るってことはわしが一番ようわかっとる」と一週間やりきった翔人を認めるのだった。

その夜、翔人は遅くまで針仕事をしているスマに気付く。
スマは針になかなか糸が通らず難儀していたので、翔人は黙って糸を通してやった。
翔人が去った後、スマは一人「ぼうはええ子じゃ」と呟くのだった。

 

『美知との出会い』

平家まつりも間近に迫り、シゲ爺と翔人は祭りの準備をするようになった。
祭りに飾る花の鉢植えの植え替えに人手が足りないと頼まれ、連れていかれた公民館には若い女性がいた。
その女性、黒木美知(藤井美菜)は10年ぶりに村に戻ってきたらしく、翔人より少し年上のようだった。
村に来てから老人ばかりに接していたため、久しぶりの若い女性にドキドキする翔人。
落ち着いた雰囲気の美知は翔人にテキパキと指示をだし、二人は黙々と作業を進める。
翔人は「平家まつりってどんな祭り?」と美知に訊ねてみた。

昔、この椎葉村は平家の落人部落だった。
追ってきた源氏の那須大八郎は、平家の末裔の鶴富姫と恋に落ちた。
大八郎は幕府には落人を滅ぼしたと嘘の報告をし、自分はこの地に留まって落人のために尽力したと言う。
しかし、大八郎は幕府に呼び戻され鶴富姫は二人の間に出来た子どもをこの村で育てた、という伝説から平家まつりが始まったとされる。
遠い昔の恋物語から発した祭りの由来について語る美知に、翔人はときめいてまうのだった。

帰宅した翔人はスマに「黒木美知って子、知ってる?」と聞いてみた。
翔人の口ぶりから気持ちを察したスマは、美知に自分の素性を話したのか聞く。
翔人は、スマの孫と紹介された、と口を濁す。
「大事にしたいと思うもんには嘘はいかんよ」と、スマは翔人に言った。

 

『自分を見つめ直す時』

翌日、美知とまた作業ができると思っていた翔人だったが、あちこちから手伝いを頼まれて大忙しだ。
しかし、翔人が手伝うと誰もが感謝し、何やかやと手土産を持たせてくれる。
やっとのことで美知の元に向かうと、なんとお弁当を用意してくれていた。
一緒に食べながら二人は次第に打ち解けていく。
翔人を都会から帰省しているだけと思っている美知は「良いなぁ、自由って感じで」と羨ましがった。
しかし、翔人は自分についてこう話す。
「しゃぼん玉みたいなもんかな。風に吹かれてふらふらするしかねぇ」
「自由なんかじゃねぇよ。帰る場所がないだけ」

平家まつり当日、携帯番号を交換した翔人と美知は祭りの途中で連絡を取り合い何度も落ち合った。
美知が自分の話を聞いて笑ってくれる、それだけで翔人は嬉しくてたまらなくなる。
夜の鶴富姫法楽祭を一緒に観ようと約束し一旦二人は別れた。
その後、村の女性が翔人に近寄ってきて「みっちゃんが元気になってよかった」と意味ありげに言う。
何かあったのか?と聞くと、美知は大阪で働いていたときに通り魔にあったのだと教えられた。
ショックのあまり都会を引き払って帰ってきたのだ、と聞かされ翔人は凍り付いてしまった。
とてもじゃないが美知と顔を会わすことが出来ず、そのまま帰ってしまった。

美知を襲った通り魔は自分ではない。
それはわかっている。
だけど、自分は今までどれだけの人の人生を狂わせてきたのか?
これまで自分が襲った人たちは傷つき怯えながら暮らしているのかもしれない。

打ちひしがれ部屋にこもっていたが、夜中に空腹を覚え冷蔵庫の中を探った。
すると、冷蔵庫の奥にビニール袋に入った封筒が貼り付けられているの見つけた。
中を開けてみると、そこには現金の束が入っていた。
そこに懐中電灯を持ったスマが現れ「泥棒!」と叫ぶ。
翔人は慌てて自分だと言うが、スマは翔人の手に握られた札束を見て誤解してしまう。
自分を疑いの目で見るスマに翔人はショックを受けてしまう。

しかし、そこにスマの息子の豊昭が突然帰ってきた。
スマは慌てて翔人を部屋に隠し、出てくるんじゃないよと念を押す。
豊昭はスマに金をせびりにやってきたのだった。
翔人は部屋で息をひそめていたいたが、男が乱暴をしているようなので飛びだしてきた。
怪我をしたスマに寄り添う翔人を見て「財産目当てで居座ってるんだろ!」と豊昭は言った。
しかし、スマは「この子は欲のにゃあ子じゃ!」と翔人を庇う。
豊昭と翔人は取っ組み合いになり、襲い掛かってくる男の顔が翔人には一瞬自分の顔に見えた。
騒ぎを聞きつけたシゲ爺がやってきて、豊昭は逃げるように帰っていった。
卑屈で自分勝手な豊昭の姿に自分を重ねた翔人は、自分はこのままではいけない、とある決意をするのだった。

 

『決意』

翌日、翔人は美知と二人で祭りの行列を観に行った。
美知は「祭りが終わったら、これからのこと考えようと思う」と明るい笑顔を見せる。
「いずみ君はどうするの?大八郎みたいに出て行っちゃう?」と冗談めいて聞く美知に答えることはできなかった。
「また明日」と手をふりながら帰っていく美知の姿を翔人は眼の中に収めた。

その晩、翔人はスマに向かって静かに話し始めた。
「婆ちゃん、まだ当分死なねぇで生きててくれるかな、俺がもどってくるまで」
そして「俺、翔人っていうんだ」と初めて本名を告げる。
さらに、自分が今までやってきた犯罪の数々を包み隠さずに明かした。
全てを聞いてもスマの翔人を見つめる眼差しは変わらない。
「ちゃんと償っておいやれ。婆ちゃんはここでこうして待っちょるよ」と言い、「ええ子じゃ、ぼうはええ子じゃ」と翔人の頭を何度も撫でるのだった。

翌朝、迎えに来たシゲ爺の車に乗り込む翔人にスマはいつものようにおにぎりを渡してくれた。
いつまでも見送るスマの姿を、翔人はずっと見つめていた。
シゲ爺に、連れて行ってほしいところがある、と頼む翔人。
「今からか?今日も祭りやぞ」と不審がるシゲ爺に翔人は言った。
「そうじゃないと、俺また逃げるかもしれねぇから」
翔人の言葉に何かを察したシゲ爺はそれ以上詮索はしなかった。
交番の前で降ろしてもらい「いってこい」とシゲ爺が見守る中、翔人はゆっくりと歩みだした。

三年後、椎葉村はまた平家まつりの時期を迎えていた。
一台のバスから、出所したばかりの翔人が降りてきた。
椎葉村はあのころのままだ。
祭りの準備をするシゲ爺の姿を見つけ翔人の目は涙で滲む。
そして、スマの家を目指し歩きだした。
婆ちゃんは元気に待っていてくれるだろうか?
懐かしいスマの家には明かりが灯っていた。
翔人は、やっと自分の居場所に帰ってきた。

 

感想

ミステリーが苦手だった私に、その面白さを教えてくれたのは、乃南アサさんの「幸福な小説」でした。
主人公の心理描写がものすごく繊細で、読んでいて息苦しくなるほど、そして文句なしに面白いストーリーにハマってしまったのです。

乃南アサさんは、人間の怖い部分や恐ろしいほどの孤独の描き方が素晴らしいです。
だけど、読後感は人間を嫌になったりせず、登場人物に感情移入してしまいます。
この「しゃぼん玉」を読んで、乃南アサさんは人間に対して温かい愛情を持って物語を紡いでいるのだなと思いました。
だから、人の本性を暴くような話でも人間不信を感じなかったんだな、と勝手に思ってしまったのです。

この主人公、翔人は愛情を知らず自分の欲だけを考えて生きてきました。
だけど、心根は純粋で優しかった。
スマそんな翔人の心の真ん中だけを見つめてくれたんでしょうね。
スマ爺も、翔人はやればできると言ってくれた。
人は、信じてくれる、認めてくれる人がいるだけで強くなれるのだと思いました。

翔人を演じた林遣都さん、瞳がとても印象的でした。
自堕落な光が宿っていた瞳が、だんだん純粋な幼い子供のような瞳になっていくのがとても良かったです。
そして、スマ役の市原悦子さんは最高に良かったです!
「ぼう」と呼ぶ声が映画を観終わってもしばらく頭に心に響いていました。
シゲ爺役の綿引勝彦さんも、とても渋く映画を引き締めるキーパーソンでした。

ラストが翔人とスマが再会して喜び合う姿ではないのが、また良かった!
明かりが灯った家に翔人が入っていく、まさに自分の場所に帰ってきたという感じにグッときました。
椎葉村の自然と人の優しさに、心が洗われた本当に良い作品でした。

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