「トイレのピエタ」のあらすじ・感想・ネタバレ~余命三ケ月の青年と少女が過ごした激しく儚い時間~ | VODの殿堂

映画

「トイレのピエタ」のあらすじ・感想・ネタバレ~余命三ケ月の青年と少女が過ごした激しく儚い時間~

   
 

タイトル:「トイレのピエタ」
公開: 2015年
監督:松永大司
出演:野田洋次郎、杉咲花、リリー・フランキー、市川紗椰、宮沢りえ、大竹しのぶ 他
閲覧したVOD:dTV(2018年3月23日時点では視聴可)

手塚治虫が残したメモが原案になった映画です。
人気バンドRADWIMPSの野田洋次郎が初主演し話題となりました。

画家を諦めて、バイトで生活する無気力な青年が余命宣告を受ける。
そして出会った少女との間に芽生える感情と、人生の最後の時間を描いた切ないラブストーリー。
共演に、杉咲花、リリー・フランキーを始め、豪華な俳優陣にも注目です。

青年は、人生の最後に何を思い、描くのか?
あらすじと感想を書いてみましたのでご覧ください!

『トイレのピエタ』配信先一覧
動画配信サービス 配信状況 見放題 配信先
U-NEXT 視聴ページ
hulu 視聴ページ
dTV 視聴ページ
Amazonプライム・ビデオ 視聴ページ
※配信状況は2019年10月11日(金)時点のものです。
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【あらすじ】

『ビルに吹く風』

一人の青年がビルの屋上から街を見下ろしていた。
今日は風が強い。
ビルの窓ふきの清掃にとって、ゴンドラを揺らす風は敵だ。
その青年、園田宏(野田洋次郎)はもう一人の新入りの男と共にゴンドラに乗り込むが、高さと揺れで新入り君は倒れてしまう。
「風も強いし、今日は中止」と、ゴンドラを片付けようとした時、今度は宏が倒れてしまった。
念のため、病院で検査を受け家路についた。

ある日、宏は窓ふき中のビルの中から「久しぶり」と女性に声をかけられた。
声の主は、大学時代の同級生で元カノのさつき(市川紗椰)、今度このビルで個展を開く人気の画家だ。
「最近、絵は描いてる?」と聞かれたが、もう絵はやめた、と答える宏。
宏もまた画家を目指していたが、今は諦めて窓ふきのバイトで生計を立てている。
さつきに個展に誘われたが、宏は行く気にはなれなかった。

 

『余命宣告、そしてエキセントリック女子高生』

後日、宏は病院から検査結果を家族と一緒に聞きにくるよう言われた。
宏は、さつきに姉のふりを頼んで病院に付添ってもらう。
しかし、待っている間に絵の話で口論になり、さつきは怒って帰ってしまった。

途方にくれた宏の耳に女の子の怒鳴り声が響いた。
ロビーで女子高生がサラリーマン相手に「制服が破けたからお金を払え!」と、絡んでいたのだ。
呆気に取られて見ている宏に気付き「何見てんだよ!」と睨む女子高生、宮田真衣(杉咲花)。
しかし、宏は「制服いくら?」と聞き、お金を払うから妹のふりをするよう頼むのだった。

医師から告げられた検査の結果は「スキルス性胃がん」
何もしなければ、余命は三ケ月。
すぐに入院するように言われるが、宏は「無理です」と繰り返す。
帰り道で、真衣が宏に言った。
「今から一緒に死んじゃおうか?生きてるより死んでる方が楽でいいじゃん」

二人はバイクでどこかへ向かったが、しばらく走って宏は真衣を降ろした。
「いくじなし!」と言う彼女を残し、宏は去っていく。
その夜、宏は朝までクラブで飲み続け路上で倒れてしまうのだった。

 

『宏と横田と少年』

病院に搬送された宏は、そのまま入院することになった。
両親(岩本了、大竹しのぶ)がやってきて、宏がもう絵を描いていないと知ると「東京にいる意味はない、帰ってこい」と帰郷をすすめられる。

同じ病室の隣のベッドの男は、飄々とした男だった。
横田(リリー・フランキー)という、その男は食道がんを患っていたが妙に軽く、病院の食事ももりもり食べて宏の食べ残しまでたいらげるほどだ。
しかし、宏は抗がん剤治療の副作用に耐えられず病院を脱走してしまう。
だが、バイトに復帰するも副作用は続き仕事にならない。
ヤケを起こして街で騒ぎを起こしてしまい、また病院に連れ戻されてしまうのだった。

病院で、横田はやたらと宏にちょっかいを出してくる。
横田に連れられて小児科病棟へ行くも、宏は病気の子どもたちを見ても特に興味を示さない。
しかし、患者の少年の一人、拓人(澤田陸)はなぜか宏を慕うようになった。
拓人は、大好きなヒーローのキャラクターの塗り絵とケーキを渡しに、宏の病室にやって来た。
しかし、宏は拓人が帰るとすぐにゴミ箱に捨ててしまう。
「さっきの塗り絵間違って渡しちゃった!」と戻ってきた拓人はクリームで汚れた塗り絵を見てショックを受ける。

申し訳なく思った宏は、以前病院で知り合った真衣に電話をし、そのキャラクターの本とノートを買ってくるように頼む。
そして、手書きで塗り絵を描き拓人に渡しにいった。
ちょうど母親(宮沢りえ)と一緒にいた拓人は大喜びをし、宏は安堵するのだった。

 

『真衣と赤い金魚』

真衣は、働く母親の代わりに、家事と認知症の祖母の面倒を見る日々を送っている。
人生にうんざりし、常に苛立っている真衣、なぜか彼女も宏の元にやたらとやってくるのだ。
ある日、宏は真衣に連れられて外出をする。
金魚屋で大量の赤い金魚を買った真衣に、黙って付いていく宏。
そこで、偶然にさつきに会った。
さつきはライターと名乗る男と一緒におり、その男は宏に「今度君の絵を見せてよ」と言うが宏は断る。
すると「君みたいな人間が必要とされる場所なんてないから」と嫌味を言われるが、宏は何も言いかえせない。
しかし、代わりに真衣が、
「あの、その服ってあえてのあえてで、わざとダサいの着てるんですよね?」
と、男のセンスの行き過ぎた服を揶揄するのだった。

真衣は学校へ忍び込み買ってきた金魚をプールに放ち、制服のまま飛び込んだ。
一緒に泳ごうと誘うが、疲れてると断る宏。
「つまんないヒトだね。だからあんなキモイ男に嫌味言われるんだよ!」
真衣の言葉に、宏は思わず笑ってしまう。
笑顔…宏は本当に久しぶりに笑った気がした。

 

『そして、死が身近に』

横田が退院することになった。
「退院して何するんですか?」と聞く宏に「そりゃ、会社行くよ。俺がいないと大変だから」と答える横田。
しかし、宏はそれは嘘だと知っていた。
以前、見舞いに来た横田の会社の人間が「病気にならなくてもリストラ対象だった」と言っていたのだ。
宏は「横田さん、なんで生きてるんですか?」と聞く。
「そりゃ、死にたくないからでしょ」と横田は答えるのだった。

宏は、拓人と母の三人で教会へ行った。
拓人がどうしても宏と行きたいと言って聞かなかない、と拓人の母はすまなさそうに謝った。
教会には「ピエタ」という像があった。
それは死んだ我が子を胸に抱いた母の像だった。
拓人の母は「死んだ我が子を、どうしてこんな穏やかな顔で抱えていられるんでしょうね」と言う。
そして、余命半年だった拓人は一年生きている、今度の手術が成功すれば退院できるのだ、と。
拓人の病気を不条理だと感じていたが「これを乗り越えればきっと強く生きていける、自分たちには必要な時間だった」とほほ笑むのだった。

しかし、拓人は死んでしまった。
拓人の母は宏に拓人の絵を描いてほしいと頼みに来たが、宏は断ってしまう。
病室を出た拓人の母は「私、どうやって生きていけばいいの…?」と泣き崩れたのだった。

真衣が「外に食事に行こう」と誘いにきたが、宏はそんな気になれなかった。
断ると、真衣は突然烈火のごとく怒り出した。
「あんたよりも大変な人はいっぱいいるんだからね!」と言われ「知らねぇよ!俺が苦しいんだから、苦しいんだよ!」と宏も気持ちをぶつける。
最後にはお互いに「死ね!」と言い合って喧嘩別れしてしまった。

 

『最後の日々』

宏にがんの転移が見つかった。
医師からは、このまま化学療法を続けるかどうか問われる。
つまり、死ぬまでの時間をどう過ごしたいか?ということだ。

宏は実家に一旦戻り、こっちの病院に転院すると両親に言った。
東京に戻って真衣を呼び出し、田舎の病院に転院するからと別れを告げる。
そして、二人は夜の学校に忍び込んでプールで泳いだ。
途中で薬を飲み忘れたから、と帰ろうとする宏に、真衣が怒り出す。
「あんたなんて、自分で死ぬことも生きることもできないじゃん!」
めちゃくちゃに苛立ちをぶつけてくる真衣に、宏の感情も爆発した。
「悔しくて苦しくて情けなくて!俺だってわかってんだよ!」

突然、真衣が宏にキスをした。
初めてだから責任取って、と言う真衣。
「ダメだよ、死んじゃ。私が生きてるんだから生きろよ!」

宏は東京で最後の日々を過ごすと決めた。
病院に行くと、横田は再入院しており、宏は彼をアパートに連れて行く。
横田に手伝ってもらって準備をし、宏はトイレに絵を描き始めた。
なぜ、トイレに?と聞かれ「昇天と浄化がテーマだから」と答える。
横田は手伝いながら、絵を描き続ける宏をカメラの動画で撮影した。

そして、遂に絵は完成した。
描かれたのは、両腕を広げた真衣。
宏は、絵の中の真衣の腕に抱かれて目を閉じた。

 

『生きていた証』

病院の受付で真衣が、宏の転院先を教えろ!と吠えていた。
そこに横田がやってきて、宏の死を告げる。
そして、アパートに連れていき宏の描いた真衣の「ピエタ」を見せた。
真衣は怒り、泣き、包丁で自害しようとするができなかった。
「どうすれば死ねるんですか?」と聞く真衣に、横田は「わかりません」と答えるしかなかった。

横田が撮影した宏の動画を見つめる真衣。
絵を描きながらカメラに向かって宏が言う。

「僕、生きてます?今」

 

 

感想

泣きました。
ちょっと自分でびっくりするくらい、泣いてしまいました。
宏の描く絵、「ピエタを描くんだろうな」って思ってたら、ピエタが真衣だった…
その真衣に抱かれるように目を閉じる宏を見た時、涙腺が壊れてしまいましたね。

観る前は、もっと斜に構えたすかした映画なのかな~、なんて思ってたんだけど、ごめんよ!野田洋次郎!
めっちゃ良かったです!

演技が上手いかどうかじゃなくて、宏は野田洋次郎、もうそれで決まり。
共演が上手い俳優ばかりなのに、野田さんが浮かないってことは存在感がスゴイってことですね。

毎日が苦しくて、しんどくて、死にたいけど生命力に溢れている、真衣。
死んだように生きていた宏は、人生の最後に初めて「生きた」んだと思いました。
真衣の生命力が、宏の最後の時間を躍動させたんだなぁ。
杉咲花ちゃんが、本当にもう最高でしたね。

あと、共演者が豪華キャストなのにビックリ!
大竹しのぶとか宮沢りえとか、なんて贅沢な使い方してるんでしょう。
それに、セリフもない端役で佐藤健が出ています。
これから見る人は、どこで出てくるか見逃さないように(笑)

エンディングのRADWIMPSの曲も映画の余韻を際立たせています。
とても胸がキュっとなる、鼻の奥がツーンとする、良い映画でした。

 

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