「手紙」のあらすじ・感想・ネタバレ~犯罪を犯した兄と加害者の家族として苦しむ弟、二人をつなぐ手紙の物語~ | VODの殿堂

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「手紙」のあらすじ・感想・ネタバレ~犯罪を犯した兄と加害者の家族として苦しむ弟、二人をつなぐ手紙の物語~

   
 

タイトル:「手紙」
公開:2006年
監督:生野慈朗
出演:山田孝之、玉山鉄二、沢尻エリカ、吹石一恵、尾上寛之、吹越満 他
閲覧したVOD:dTV(2018年2月20日時点では閲覧可)

人気ミステリー作家の東野圭吾の小説が原作です。
刑務所に服役している兄と弟がやりとりする手紙をテーマに、兄が犯した罪によって苦難と苦悩の連続となった弟の人生が描かれます。

犯罪者とその家族、そして周囲の人間、それぞれの心情を描き、理不尽さで息苦しくもなり、しかし愛で繋がった絆の強さを確認することのできる内容は秀逸の一言です。

弟役に山田孝之、兄役に玉山鉄二、演技派の二人が表す兄弟の人生に胸が締め付けられます。
ラストシーンは涙腺崩壊必至の名作です。

罪を償うということの意味を問う映画「手紙」
あらすじと感想をまとめましたのでご覧ください!

『手紙』配信先一覧
動画配信サービス 配信状況 見放題 配信先
U-NEXT 視聴ページ
hulu
dTV 視聴ページ
Amazonプライム・ビデオ 視聴ページ
※配信状況は2019年12月2日(月)時点のものです。
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【あらすじ】

『兄の罪と弟の憂うつ』

武島直貴(山田孝之)は、勤務先の工場でも寮でも親しい者はいない。
常に人との距離を置いて生きているからだ。
直貴が唯一親しくしている幼馴染の親友、祐輔。
二人はお笑いコンビを組んでおりプロを目指している。
仕事の昼休みになると祐輔がやってきて一緒にネタの練習をするのが直貴にとっては自分らしくいられる唯一の時間だった。

工場の食堂で働く由美子(沢尻エリカ)は直貴に想いを寄せていた。
毎朝バスで一緒になるが話したことはなく、直貴らの昼休みのお笑いの練習を食堂の窓からいつも眺めていた。
ある日の昼休み、由美子は思いきって直貴に話しかけリンゴを渡す。
驚く直貴に由美子は「毎朝バスで一緒やん!」と明るく言うが直貴は素っ気なくしてしまう。
祐輔から、お前に気があるんじゃないか?誘えよ、と冷やかされるが直貴は「人と距離を置いてるって言ってるだろ?」と返す。

直貴が頑なに人と交わらないのには理由があった。
直貴には剛志(玉山鉄二)という兄がおり、幼いころに両親を亡くし二人で暮らしていた。
剛志は運送屋で懸命に働いて生活を支え、直貴を大学に行かせたくて無理をし腰を痛めて仕事をクビになってしまったのだ。
直貴の進学を諦めきれず、剛志は裕福そうな家に泥棒に入ってしまう。
お金を盗んで帰ろうとしたときに、家の住人の老婦人に見つかってしまった。
元々気の弱い剛志は「ごめんなさい!許してください!」と謝りお金を返そうとするが、老婦人はすっかり狼狽してしまい叫び声を上げ助けを呼ぶ。
そんな老婦人を鎮めようとするも、襲い掛かられたと思った老婦人はハサミを持って反撃する。
そうやってもみ合っているうちにハサミは老婦人の胸を貫いてしまった。
剛志は、強盗殺人の罪で刑務所に服役している。

兄が殺人犯であるということが直貴の人生に重く圧し掛かっていた。
進学は諦め、仕事に就くも剛志のことが知られるとクビになってしまう。
住居に関しても同じで、今まで3度の引っ越しを余儀なくされた。
なので、今の職場ではなるべく人と関わらず剛志の事がバレないように過ごしている。

直貴と剛志は度々手紙のやりとりをしていた。
元々仲のいい兄弟であり、直貴は兄を気づかいながら自分の近況も報告している。
剛志も直貴からの手紙を楽しみに刑務所での生活を送っていた。
しかし兄は自分のために罪を犯したが、今の直貴は兄のせいで窮屈な人生を送っているのも事実だ。
そう考えると手紙を書くことも、剛志からの手紙を読むことも直貴にとっては辛く感じることもあるのだった。

『初めて味わう希望と幸せ』

由美子は直貴たちが出演するお笑いライブに足を運んだり、クリスマスプレゼントをくれたりと果敢にアタックしてくる。
いくら冷たくあしらっても直貴にまとわりついてくる由美子に「俺の兄貴は殺人犯だ」と自らカミングアウトしてしまう直貴。
そして、工場を辞め寮を去っていくのだった。

直貴はバーテンの仕事をしながら精力的にお笑いの活動をしていた。
直貴と祐輔のコンビ「テラタケ」は徐々に人気が出てテレビに出演することが決まった。
そんな折、直貴の勤めるバーに由美子が現れた。
由美子も工場を辞めて、現在は美容師の専門学校に通っており学校がこの近くだと言うのだ。

テラタケはテレビでも大ブレイクし、CMのオファーもやってきた。
剛志からはテレビで直貴を見た、自慢の弟だ!と喜びの手紙が届き、直貴もこれからは自分の元気な姿をもっとテレビで見せられる、と返事を書くのも楽しくなっていた。

直貴は、先輩芸人から誘われたコンパで朝美(吹石一恵)女性と出会う。
直貴はコンパのような席が苦手だが、朝美も同様で同じ空気を感じた二人。
帰り道で偶然一緒になりテラタケの笑いが一番好きだという朝美と直貴は意気投合するのだった。
朝美の父は大企業の専務で、大変裕福な家のお嬢様だった。
朝美は明るく無邪気で、今まで陰で生きてきた直貴はそんな彼女が眩しく大切な存在になっていった。
仕事でも夢が叶い、運命の女性にも出会えた、直貴は人生で最高の喜びに包まれていたのだった。

『また兄のせいで人生が奪われる』

しかし、幸せは続かなかった。
ネットで直貴の兄が殺人犯だという書き込みが広まり、テラタケの所属する事務所に抗議の電話がかかってくるようになった。
直貴は祐輔だけは巻き込みたくないと、騒ぎが大きくなる前に自ら事務所を辞める決意をする。
祐輔には「朝美と結婚して逆玉に乗るからお笑いやめるわ」と嘘をつき、激高した祐輔に殴られながらも決して本心は言わなかった。
そんな辛い状況でも、剛志からは「お笑いの仕事の方はどうだ?」と手紙が届くがとても返事を書く気にはなれない。

そして朝美とも破局が訪れた。
朝美には親が決めた婚約者がおり、その男が朝美が直貴の部屋にいるところに乗り込んできた。直貴の身上を調べたと、剛志の存在をほのめかす男は「下に届いていたよ」と剛志からのハガキを渡す。
朝美から「武島剛志って誰?」と聞かれ、正直に話す直貴。
直貴は「いつか話そうと思っていた」と弁解するも、朝美は部屋を出て行ってしまう。
朝美の父親から剛志の犯した罪について「君に罪はないだろうが、君の存在を不快に思う人間は大勢いる。私もその一人だ」と言われ手切れ金を渡される。
また、兄貴が俺の人生を奪っていく…、剛志から届いた呑気な内容のハガキを破り捨て直貴は絶望するのだった。

『差別のない場所はない』

直貴は秋葉原の家電量販店に就職をし生活を立て直していた。
仕事ぶりが認められ評価があがり由美子が居酒屋で祝ってくれた。
由美子は直貴のよき理解者として今では仲のいい友達付き合いをしている。
そこに、かつての相方、祐輔が現れた。
喧嘩別れしたままになっていた二人を心配し、由美子が連絡を取って引き合わせたのだ。
祐輔はマネージャーからすべて聞いたと謝り、二人は仲直りをすることが出来た。
祐輔に剛志のことを聞かれたが、直貴は新しい就職先のことも引っ越し先の住所も剛志に知らせていない、と答える。
もう兄貴のことは思い出したくない、という直貴に由美子は不満気な顔をする。

直貴の勤める店舗で窃盗騒ぎがあり、警察が出動する騒ぎがあった。
嫌な予感がする直貴、その予感が的中し直貴は突然埼玉の倉庫への異動、つまり左遷を言い渡される。
今回の窃盗が内部の人間の犯行の可能性があり、従業員の身上調査が行われ剛志の存在がわかってしまったのだ。
この件に憤慨したのは直貴より由美子だった。
社長に抗議したる!と息巻く由美子をなだめ「兄貴がいる限り俺の人生はハズレ、そういうこと」と開き直る直貴。

異動した埼玉の倉庫で働く直貴の元に、一人の老紳士がミカンを片手にふらふらとやってきた。
直貴は不審に思い話しかけると、老紳士は会社の会長だった。
会長は直貴に今回の人事異動は不当だと思うか?と問いかける。
答えることのできない直貴に「君の配置転換は会社として間違っていない。当然なことをしたまでだ」ときつい言葉を投げかけた。
さらに「差別は当然なんだよ」と言われ、驚く直貴。
どんな人間だって犯罪から遠くへ身を置きたい、犯罪者やそれに近い人間を排除しようとするのは真っ当な行為なんだ、と会長は続ける。

直貴は憤りを感じ「私が犯罪者に近い人間だから、差別を受けるのは当然だと言うのですか」と抗議する。
すると会長は「君の兄さんはそれまで考えなくてはいけない、自分が刑務所に入ってそれで済む問題じゃない、君の苦しみもひっくるめて兄さんの犯した罪なんだ」と断言する。
それでは、自分はこのままどうすればいいのか…一生兄の罪の影で生きていくのか…と絶望する直貴。
会長は「ここから始めるんだ。この場所からコツコツと少しづつ君と社会の繋がりを増やしていくんだ」と言い、君の事を知らせてくれた人がいると一通の手紙を取り出した。

その手紙には直貴のこれまでの不遇、努力、直貴の人柄の素晴らしさが切々と綴られていた。
手紙の差出人は、自分が勝手にしたことなので、もし不愉快に感じても直貴を責めないでほしい、と書いていると言う。
会長は差出人を明かさないが、直貴には由美子が書いたものだとわかった。
「君はもう始めているじゃないか。少なくともこの手紙の主とは心が繋がっている」と言い、差別のない場所を探すんじゃない、君はここで生きていくんだ、と言い残して去っていくのだった。

『家族を守るための決意』

由美子が直貴のために書いた手紙はこれだけではなかった。
直貴が剛志に手紙を書かなくなってから、由美子は直貴になりすまして剛志に手紙を送り続けていたのだった。
その事実を知り、勝手なことをするな!と怒る直貴。
しかし、由美子は勝手なことをしたのは謝罪したが、手紙を書いたことは間違っていないと言う。
そして「直がどんなに逃げようとあがいても無駄やねんで」と言われ、その言葉が会長の言葉と重なる。

ー差別のない場所を探すんじゃない、君はここで生きていくんだー

由美子の部屋で、剛志が直貴からの手紙だと信じて届いた返事を読む。
手紙の中で、剛志は直貴の手紙を心から喜び励みにしているのがわかり涙が滲む。
由美子は子どものころ貧しい家に育ち借金取りから逃げる日々だったと言う。
だから逃げてもどうにもならない、直貴にはもう逃げてほしくないと願っていたのだった。
自分のことを本気で心配し考えてくれる由美子に直貴は「これからは俺がお前を守るから」と約束するのだった。

年月が過ぎ、直貴と由美子は結婚して娘のミキも産まれ幸せに暮らしていた。
ある日由美子はいつものようにミキを連れての公園に行くと、いつも遊ぶ社宅の子どもたちが親に連れられて一斉に帰ってしまった。
社宅では剛志の存在が知られ釈放されたらここに住むなどという噂が広まっていたのだ。
そのことを知った直貴は「引っ越そう」と言うが由美子は何も悪いことしてない、どこにも逃げないと主張する。
自分たちだけならいい、だけど何もわからないミキまで差別されるのはたまらないー。
直貴はある決意をする。

この四年間、剛志への手紙はやはり由美子が代わりに書いていた。
直貴は兄の犯した罪の呪縛から逃れたい、しかし兄を裏切りたくもない、という葛藤からどうしても手紙が書けなかったのだ。
しかし、この手紙は自分が書かねばならない、そう決意し筆をとった。

ー兄貴、元気ですか?
あの事件からずっと自分は強盗殺人犯の弟というレッテルを貼られて生きてきた。
お笑いの夢も、大好きだった女性との結婚も諦めた。
そして、今度は俺の家族というだけで由美子もミキも差別を受けているー

直貴は剛志の犯した罪によって今まで自分がどれほど差別を受けてきたか、何もかも奪われていったことを全て明かした。
この現実から目を背けたままでは兄貴の刑は終わらない、もっと早く兄貴にちゃんと伝えなければいけなかった、と。
この手紙が最後の手紙、もう二度と自分たち家族に手紙を書かないでくれ、出所しても会いにこないでくれ、由美子とミキを守るために兄貴を捨てる、と綴った。

ー兄貴、ごめん。体に気をつけてなー

直貴が剛志におくった最後の言葉だった。

『俺の兄貴、バカな兄貴』

直貴は、剛志が殺害した老婦人の息子の家を初めて訪ねた。
その息子、緒方忠大(吹越満)は直貴の手土産も焼香も断り、冷たくあしらわれる。
忠大は手紙の束を持ってきて直貴に見せる。
剛志は緒方家に毎月謝罪の手紙を送り続けていたのだ。
忠大は、罪を悔いもらったところで母は帰らない、と手紙に返事も書かず徹底的に無視していた。
それでも手紙は届き続けた。
剛志の懺悔の手紙は6年間欠かさず、般若心経のように続いた。

忠大は剛志からの最後の手紙を直貴に渡す。
手紙には、弟からの手紙を読み自分のせいで弟とその家族が受けている差別と苦労を知ったこと、6年経って、自分はようやく何も償っていないとわかった、と綴られていた。
私がいる限り、緒方さんや弟、たくさんの人々に罪を犯し続けているのだと。
私は手紙など書くべきではなかった、と謝罪し、この手紙を最後にすると結ばれていた。

忠大は「この手紙を読んで思ったんだ。もう、終わらせようとね」と直貴に告げる。
もう終わらせよう、何もかもー、忠大の言葉を聞き直貴は号泣するのだった。

祐輔はピン芸人として活躍しており、最近は刑務所の慰問活動を行っているという。
一緒にステージに立たないか?と誘われたのは剛志の収容されている刑務所だった。

一日限りの「テラタケ」の復活ステージ。
沢山の受刑者を前に最初こそぎこちなくスタートした漫才だったが、徐々に会場の笑いを誘っていく。
しかし、ネタが家族の話題になり祐輔に「そういうお前の兄貴だって…」とツッコミを入れられると直貴の表情は固まってしまった。
客席で、剛志は嗚咽しながらずっと手を合わせていた。
大切な大好きな弟、直貴、ごめん…本当に、ごめん…

直貴は「うちの兄貴は、兄貴は…ほんっとうにバカなんですよ!」と漫才を続けた。
バカな兄貴のエピソードに会場は大いに沸き、剛志の涙は止まらなかった。

 

 

慰問のステージを終え、由美子とミキと共に帰る直貴。
これからも直貴は家族を守るために剛志に会う事はないだろう。
しかし、二人の道は交わることが無くてもずっと兄弟だ。

ーバカな粗大ゴミみたいな兄貴、でもアスベストみたいなもんで簡単に捨てるわけにはいかない、どんなバカな兄貴でも俺の兄貴ですからー

ステージで直貴が言った漫才のセリフ、それはこれからも決して消えることのない兄弟の絆だった。

感想

この映画の原作、東野圭吾さんの「手紙」は私にとって「人生で読まなければいけなかった本」として大事にしています。

直貴は兄の事件以来、本当に理不尽な目に遭い続けます。
最初は直貴をそんな目に合わせる周囲に嫌悪を感じます。
剛志は理由はどうあれ、殺人を犯した罪人、だけど直貴は関係ないのに、って。

だけど、会長が直貴に語る言葉が本当に全てをひっくり返すほどすごい。
私も、自分と家族を守るために犯罪やそれに近いものは絶対に遠ざける。
何も悪くない犯罪者の家族を差別することは、おそらく誰もがそうするであろう当然のこと。
そうなると「酷いなぁ」と思っていた朝美の父親の言葉も全く酷くないのです。
朝美の父親は「私の理不尽な申し出も、君がいつか親になったらわかるだろう」と言うのですが、あの父親も娘を守ろうとしただけなのです。

それだけでも、どっひゃ~とひっくり返ったのですが、会長の言う「君の苦しみもひっくるめて兄さんの罪なんだ」って言葉に悶絶しました。
いや、悶絶って言葉は正しくないのかもしれないけど、価値観のちゃぶ台をひっくり返されました!

会長の言葉以降、この物語は私にとって全く違う話になったような気がします。
直貴は剛志のせいで自分の人生狂ったと思ってましたが、だけど直貴の苦しみもひっくるめて剛志の罪ならば、剛志という兄を持った人生こそ直貴の人生なんですね。
直貴は自分の人生を別の人生と比べて上手くいかない、ハズレだと考えていたけど、そうじゃない、この人生、この場所こそが剛志の人生でありそれに気づかず逃げたままではダメだったんです。

映画と小説、設定などに若干の違いはありますが(直貴が目指していたのは映画ではお笑いでしたが、小説ではミュージシャンだったり)真髄はとても忠実に表現されていました。
山田孝之さんと玉山鉄二さん、この二人が兄弟の役で本当に良かったです。
そして、出演場面は少ないですが母親を殺された息子役の吹越満さんの演技はすごかったです。

テーマは重いですがとても観やすい、そして観終わって多くの人が温かで前向きな気持ちになるのではないでしょうか?
余談レベルでいいのですが、沢尻エリカの関西弁は変でした(笑)

 

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