タイトル:魔法使いの嫁 第3話 ーThe balance distinguishes not between gold and lead.ー
放送局:TOKYO MX、MBSほか
アニメーション制作:Lerche
キャスト:羽鳥チセ:種﨑敦美/エリアス:竹内良太/ルツ:内山昂輝/シルキー:遠藤綾
視聴したVOD:dアニメストア(2017年12月14日時点では閲覧可)
突然ドラゴンによって攫われたチセは、ドラゴンの国へ辿りつきました。
チセを攫った犯人、リンデルはエリアスの師匠にあたる人物でした。
はじめてドラゴンを目の当たりにしたチセは、ドラゴンがすでに滅び行く運命にあることを知ります。
土へ還るというドラゴンと共に、チセは空を飛ぶ夢を見るのです。
悲しい過去を持つチセは、土へ還るドラゴンと言葉を交わすことで、少しだけ前を向くことができたのでしょうか?
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あらすじ
ードラゴンの国ー
ドラゴンに咥えられたまま、いずこかの土地に攫われていくチセは、どうしてこんなことになったのだろうと考えていた。
アイルランドは、絶滅寸前のドラゴンを管理している土地であった。
人が少なく、またなかなか人が入ってこないため、目くらましにもってこいの土地なんだそうだ。
そんな話をしている最中に、チセはドラゴンにガブリと噛まれて攫われてしまったのである。
「フン。あやつもなまじ力があるだけに、油断ばかりするのは変わらんな。」
ドラゴンを操る人間のフードが風にあおられ、その姿が露わになる。
「そら。もう見えたぞ。ドラゴン達の最後の地だ。」
男の指差す先には、様々な種類のドラゴンたちが過ごしていた。
ドラゴンを地上に下ろすと、男はドラゴンにチセを離すように命じる。
しかしドラゴンはチセを地に降ろすのではなく、ペッとばかりに放り投げ、チセはそのまま湖の中に落ちてしまった。
「おい!!」
男は慌てて湖に駆け寄るが、チセが浮上する気配はない。
「…そのまま沈む気か?」
ーリンデルー
湖に落ちたチセは、体が重くて、思うように動かず、そのまま深い湖の底へ沈んでいく。
『チセ…チセ…チセ!!』
意識が途切れそうになる中、チセはエリアスの呼ぶ声を聞いた。湖の底から浮上したチセは、なんとか岸に這い上がる。
その先にいたのは、岩のような体のドラゴンがゆったりを寛いでいた。
「おや…?珍しいお客だ。魔法使いのような匂いがする。しかしまだ柔らかい…若めの匂いだね。それにここではない…緑や花や石の匂いも。いい匂いだ。」
(この人、目が…それに体中コケだらけの森みたい…。)
チセは自分を観察するドラゴンを、じっと見つめる。
「それはウーイルという種のドラゴンだ。森の父にして母。朽ち往く巨体に緑を宿す者よ。手荒にしてすまんな。ドラゴンの国へようこそ。影の茨<ソーン>の娘よ。」
チセを攫った男がドラゴンの説明をしながら、にんまりと笑みを受かべる。
「エアリエル達が騒いでおったのでな。あの影の茨<ソーン>がとうとう弟子を取ったと。あやつらの噂はまさに風のごとし、此度は素早かったのう。いつまで弟子の影にひっついておる。影の茨<ソーン>…いや、エインズワーズ。」その声を合図に、チセの影が大きく揺らめき、影の中の茨が人の形を取り、エリアスが姿を現した。
「年寄りのくだらない話が終わるまでだよ。他人を玩具にするのは300年前から変わらないな。白花の歌<エコーズ>。」
エリアスはずぶ濡れになったチセを湖から抱き上げて、魔法によって濡れたチセの服を乾かした。
傍らにいた男は、ニヤニヤとその様子を観察している。
「何をニヤニヤしてる。」
「ん~。ガキが一丁前に親の真似事なぞしておるなと。」
「うるさい。」
エリアスは改めて、チセに男を紹介する。
「チセ、あいつはリンデル。このドラゴンの巣の管理者で僕と同じ魔法使いだ。」
リンデルはドラゴンの国を人間から隠す役目を担っている管理者だった。
そして若そうな外見をしているが、エリアスよりも年上の爺だと言う。
ーネヴィンー
話が終わった頃合いを見計らって、小さなドラゴンたちがチセの周りに集まった。
エリアスとリンデルがお使いの内容について話をしている間、チセは小さなドラゴンたちと遊ぶことになる。
小さなドラゴンたちは人間がめずらしいのか、チセの周りではしゃいでいる。
一匹のドラゴンが、高い崖から滑空の練習をしようとチセを誘う。
「今の人間って飛べるんでしょう!!」「それは骨格と筋肉を遺伝子レベルで改造しなきゃ、ちょ~っと難しいかな。」
滑空遊びを回避したチセは、小さなドラゴンたちを追いかけっこをしたりしながら、ドラゴンの国を散策する。
ふと、チセの視界に、大きなドラゴンが入った。
チセはゆっくりとドラゴンに近寄り、その皮膚を撫でると、皮膚は簡単に剥がれおちてしまった。
(翼がある…ってことは飛べるのかな。でもぼろぼろ…。)
チセは大きなドラゴンをじっくり観察していた。
「ドラゴンを見るのは初めてかい?」
「す、すみません!勝手に!!」
チセは自分が不躾なことをしていると思い、反射的に謝罪の言葉を述べる。
しかしドラゴンは、悪い意味で言ったわけではないようだった。
小さなドラゴンたちが、「ネヴィンのおじちゃん起きた!」と近寄ってくる。
「私はもうすぐ還る身だから、転がる雛を見てる方が楽しいんじゃないかとね。」
「ネヴィンのおじちゃん、もうそろそろだね!」
小さなドラゴンたちの言葉の意味が分からないチセは、「そろそろ?」と首をかしげる。
「ネヴィンのおじちゃんね、もうすぐ樹になるの!」
「ね~!」
「ムーレ達はみんなそうだよ。とってもいい樹や草になるの!」
小さなドラゴンたちは、何も知らないチセにキャッキャッと教えてくれる。
チセが周囲を見渡すと、ドラゴンの慣れの果てのようなものを見つけることができた。
ー還るー
「還るって…どういう…。」
戸惑うチセに、小さいドラゴンたちが再び話し始めた。
ドラゴンという生き物は、死んだら樹やコケ、岩になる生き物なのだそうだ。
しかしチセは「死」という言葉を、飲みこむことができない様子。
「私達は人間のように死ぬことを恐れない。いつだって悔いのないよう生きられるだけ生きるものだから。」
ネヴィンの言葉を聞いたチセは、顔を俯かせて、ゆっくり近寄っていく。
そして優しい手でネヴィンの体に触れる。
「痛く…ないですか?」
「お前は優しい子供だね。」
ネヴィンは見えない目でチセをとらえる。
「私達は訪れるそれがこの星の生き物全てに等しく与えられるものだと知っているんだ。生きる事の苦痛も楽しさも、死ぬことの寂しさも悲しさも。それに私は十分生きた。ドラゴンにとっても長い、長い年月をね。次の命は次の世代が引き継ぐ。君が悲しむ必要はない。」
ネヴィンの言葉を聞いたチセは、そのままネヴィンに体を預け、座り込んでしまった。
(違う…悲しんでなんかいない…できない…そんな…。)
チセの脳裏に、記憶がよみがえってくる。
死んだ母。
一人ぼっちの教室。
屋上の金網。
空を飛ぼうとした、チセ。
「生きる者が、死者を羨むものじゃない。」
ネヴィンの言葉は、チセに深く突き刺さる。
「飛べない君が飛ばなくてよかった。君に会えなかったら、彼は誰を弟子にしていいのか、わからなかっただろうからね。」
「もしかして…私の記憶を…。」
「人間には不躾だった。すまない。」
クッと眉を寄せ、悲しみに耐えようとするチセに、ネヴィンはある提案を持ちかける。
「飛べない君には本当に飛ぶ楽しさを教えた方が良さそうだ。」
ネヴィンの体が、淡い発光を始める。
「今の私に飛ぶ力はないけれど、私の心にある空は見せる事ができる。それを見せよう。」
ー最後の夢ー
「ネヴィンは最後の夢を見ておるようじゃ。チセと共に。」ネヴィンとチセを遠くから見つめていたリンデルが呟く。
代替わりが激しくなったドラゴンの中で、ネヴィンは最後の古いドラゴンとなるようだ。
魔法使いもドラゴンも、人間の増加によって減少しており、チセが魔法使いになった時、最後の世代と言われる可能性も高いそうだ。
「気がかりかのう?」
リンデルはジッとチセを見つめるエリアスに言葉をかける。
「チセの魔力が、ネヴィンに流れ込んでおる。ネヴィンには良き力添えになるだろうが、【夜の愛し仔-スレイ・ベガ】の過ぎた魔力は、時にその者自身を傷付ける。」
「あの子は加減を知らないんだ。」
エリアスの言葉を聞いたリンデルは、困ったように眉を寄せる。
「それを教えるのがお前の役目じゃろう。このまま思うに任せていれば、あの子の体は3年ともたんぞ。」
それからリンデルは、【夜の愛し仔-スレイ・ベガ】が、多くの者に狙われる存在であること、さらによくない噂も聞いていると警告する。
(無事育てばよいのだがのう…。あの【夜の愛し仔-スレイ・ベガ】。)
ー夢の終わりー
「我々の一族は空を捨てたが、いつだってこの空の下で生きていく運命だ。その名にある鳥のように、君も生きるためにこの空の下を飛びなさい。」「生きるために…飛ぶ…。」
ふっ…と、チセが目を覚ますと、ネヴィンの体から樹が生え始めていた。
「ありがとう…君が来てくれたおかげで最後に…飛べた…。」
樹はどんどん成長し、弱り切ったネヴィンの体を砕いて天へ伸びていく。
ネヴィンは嬉しそうに、最後の言葉をチセに残す。
「少し前に…リンデルが小さな種を、体に植えてくれた…。白い…綺麗な花が咲くらしい…。君は魔法使いだろう…?いつか杖が必要になるだろうから、私の枝から、作るとよい。」
「お休み…小さな魔法使い…。」
ネヴィンは、大きな大樹となって、土へと還っていった。
その周囲では、小さなドラゴンたちが「いつか大きな樹になれるかな?」とはしゃいでいる。
「おかえりチセ。ネヴィンの空は、綺麗だったかい?」
「とても…綺麗でした。」
「珍しいものを見れたな。ドラゴンが地に還るのを見る機会はとても少ないんだ。」
エリアスは、スッと視線を上に上げる。
「リンデンバウムだ。白い綺麗な花が咲いてる。」
ー羨ましいー
「悲しむ必要など一欠片もないぞチセ。これは摂理よ。遥か昔から、ドラゴン達が育んできた生死の末。ドラゴン達は皆穏やかに、他の生物の苗床になるのだから。」
リンデルはネヴィンの樹の前に座り込むチセの頭を撫でる。
チセは納得をしていない様子だが、リンデルは穏やかに笑っている。
「必要になったら、ネヴィンの言った通り、杖に使う枝を貰いにこよう。とりあえず今回の件は終わったからね。そろそろ帰ろう。」
エリアスは帰路につこうと歩きはじめる。
「なんじゃ?もう帰るのか?」
「他にも押し付けられた要件があるんだよ。」
「すっぽかせばいいのに。案外真面目じゃのう、主も。」
「ほっとけ。」
チセは一人、ネヴィンの樹に残る。
落ちてきた葉っぱを掌に取り、思考する。
(これが自然…か。)
遠くから「チセ、行くよ。」とエリアスの呼ぶ声がする。
(悲しくは、ない。通りすがりに優しくしてもらっただけのような人だったし…。なんか眩暈がする…空…飛んだ…せいかな…?)
エリアスの元に歩き出したチセは、くらくらとする感覚に頭を抱える。
(でもやっぱり…あの穏やかな還り方は…少し…羨ましい。)
感想
魔法使いの嫁ほど、感想が言い表しにくいアニメもないかもしれません。
まずリンデルについて触れておきましょう。
まさか声優が浪川さんだとは思いませんでした。
私的にリンデルは、もっと女性に近い声だと思っていたので、原作では綺麗な人だと考えていました。
しかし浪川さんが声を当てているからか、すごく凛々しい、かっこいい男性になっているではありませんか。
声優さんの力とは、偉大なものなのだと改めて実感しました。
さて、真面目な感想を書こうと思います。
第3話では、死とは何か、という部分に焦点が当てられました。
サブタイトルの「The balance distinguishes not between gold and lead.」とは、「天秤は金も鉛も区別しない」という訳になるのですが、つまり「人間はみな平等である」という意味になります。
死とは、みな平等に訪れるもので、怖がるものではない、という意味なのでしょうか?
母親が目の前で自殺をしたチセにとって、死とは怖いものだと思います。
私達にとっても、死は突然やってくる恐ろしいものではありますが、それでも等しく生き物のすべては死ぬのです。
いつか訪れる死を怖がっていても、人生って楽しくないから、明日死んでもいいように、今を楽しく生きていきなさい、という話だと私は思いました。
とはいえ、チセの境遇から考えると、ネヴィンの話も「わかりました。」と納得できるものではありません。
だからこそチセは、人生に満足して、穏やかに死んでいったネヴィンがうらやましいと感じたのでしょう。
ですがドラゴンの国を訪れたことによって、チセの世界は広がったでしょう。
少しでも前を向いて歩くために、チセの世界をどんどん広げてほしいと心から願います。
そして今からでもいいので、アニメを視てほしいです。
空を飛ぶネヴィンのシーンは、涙が出ます。
それほど、美しい映像と挿入歌でした。
次回は教会からの依頼2つ目、猫の国を訪れるチセとエリアス。
そこでは痛ましい事件が起こっていたのです。

小学生と幼児のママ。常に娘のコスネタを模索中。育児のストレスはアニメ鑑賞と妄想でリカバリー中。今のブームは型月&刀剣乱舞。
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