タイトル:キノの旅 -the Beautiful World- the Animated Series『雲の中で』
放送局:AT-Xほか
放送期間:2017年10月6日~12月22日
アニメーション制作:Lerche
キャスト:キノ:悠木 碧/エルメス:斉藤壮馬/シズ:梅原裕一郎/陸:松田健一郎/ティー:佐倉綾音/師匠:Lynn/相棒:興津和幸 ほか
視聴したVOD:dアニメストア(2017年11月30日時点では無制限で見放題)
旅の一団で働く奴隷の少女は、奴隷として売られ苦労しているにも関わらず、少女を売った人も、冷遇する人も決して恨むことも、憎むこともないと言います。
奴隷を買った人は、そんな少女を気味悪がりました。
しかしそんな少女に転機が訪れます。
キノの旅で珍しい名前があるキャラクター、フォトの過去のお話です。
奴隷として生きた彼女が、辿った道筋とはどんなものだったのでしょう。
残酷で過酷な過去、そして運命に翻弄され、狂ってしまったフォトに胸が痛くなります。
『キノの旅 -the Beautiful World- the Animated Series』配信先一覧 | |||
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あらすじ
【雲の中で・b】
「ちょっと、見えてる?」
「いいや、全然。…ほんの少しの知識だ。ほんの少し知っていればよかったんだ。」
雲で視界が覆われる中、淡々としたキノの声がする。
「厳しいね。」
エルメスは、いつもと変わらない口調で答える。
「ああ。僕も、何か知らないことがあるかもしれない。そしてそれを知らないまま、同じような目に遭うかもしれない。もちろん避けたいけれど、知らなければどうしようもない。」
雲の中に隠れる、キノとエルメスの姿があらわになっていく。
「ねぇエルメス、僕は知っているのかな?」
「さあねぇ…もうすぐ晴れるね、キノ。」
【奴隷の少女】
山岳地帯の一角で、休息を取る旅の一団。
そこには旅を纏める頭領一家と、その召使たちが大勢いた。
その中で一際みすぼらしい恰好をした少女が1人、黙々と仕事をしている。
「奴隷!奴隷!ドンクサい!」
子供たちはのろのろと動く少女を馬鹿にしていた。
少女は首にかけられた鎖にひっぱられ、運んでいる荷物を落としてしまう。
それを見つめる青年は、「おい奴隷、とっとと運べ。」と怪訝そうに言い放った。
しかし青年と共にいた男は、静かに少女に歩みより、荷台に取り付けられた鎖のカギを外し、「ちゃんと働け。」と声をかけたのだった。
「何で頭領は、前の国であんな使えないガキを手に入れたんですかねぇ?」働く少女を見ながら青年は言う。
「あの国は知っての通り宗教国家なんだが、素晴らしい戒律があってな。」
少女を手に入れたことに納得できない青年に、護衛の男は前の国について知っていることを話しはじめた。
「『どんな時でも、人を信じなければならない』んだと。」
「はぁ…。」
「本題はここからだ。いつものように商品を売ろうとしたが、今回だけは連中の払いが少しだけ足りなかった。そしたら『この子はとても良く働きますので召使いにお使い下さい』とあの国の長が差し出してきた。素晴らしい話、だろう?」
それを聞いた青年は愉快そうに声を上げて笑い始める。
つまり孤児だった少女は、前の国に厄介払いされて奴隷に成り果てたのだ。
「ヒデェ国だな!お前さんの故郷は!」
青年は少女に向かって声をかけるが、少女は黙々と仕事をするだけだった。
その態度が気に入らない青年は、ツカツカと少女に近づいて「なんとか言えよ!」と胸倉を掴み、地に倒される。
【いつか分かる】
「何を、言えば、いいのでしょうか…?」
倒れ込んだ少女は、青年に質問すると、青年は愉快そうに顔をゆがめながら、「買った人間、売った人間をどう思う?」と問い、さらに「両方共、さぞかし憎いだろう。」と言葉を続ける。
しかし少女は、青年の言葉を否定した。
「どんな時も、人を憎んではいけません。それが、心理ですから。」
少女の答えを聞いた青年は、大声を上げて笑い、「お前さ、まだお前を売ったヤツの子と信じてるのか?」と涙を浮かべながら質問する。
「きっと教祖様は、私に『広い世界を見て来い』と、命ぜられたのだと思います。もしくはこの方が私にとって、良い運命が開けると。私は今、将来を試されているのだと思います。」
少女の答えに「どうしようもないお馬鹿さんだな。」と護衛の男が頭を抱える。
「お前は売られたんだよ。いたぶられても、殺されても、文句も言えない状況に放り込まれたんだ。それでも恨んだり、憎んだり、隙あれば殺してやると思ったりはしないのか?」護衛の男はしゃがみ込んで、目の前の少女に語りかける。
「いいえ。人を恨んだり、憎んだり、殺したいと思うことは悪です。そのような事は思いません。思ってはいけません。」
しかし少女は、頑なに男の言葉を否定する言葉を発する。
男はさらに少女に言葉をかけた。
「なぁ奴隷、よく聞け。人間の世界はどうしようもなく腐っている。他人を簡単に裏切って、傷つけて、時に殺す。そんな人でなしだけが、生き残れる世界だ。」
「いいえ。世界は、素晴らしいと思います。人は、お互いを愛し合い、尊敬し合い、生きていけると思います。いつの日か皆がそれに気付いて、そんな人だけの、美しい世界が来ると思います。」
少女の言葉が、心底理解できないと言った様子の男たち。
「私は人を恨んだり、憎んだり、殺したりは、決して、決して、しません。それよりも、自分が死ぬ方を選びます。その時に私は、私を殺す人の前で、微笑みながら死んでいくでしょう。そうすれば、私を殺した人も…いつか分かるのです。」
狂気的な笑みに、男は何も言えなくなる。
ちょうどその時、召使の女性たちから、奴隷を働かせるように注意され、男たちは少女のもとを離れていった。
【草】
召使の女性が、籠にたくさん入った草を持って帰ってくる。
それを「洗ってきな!」と命じられた少女は、近くの川で草を丁寧に洗う。
「あ…。」
草を洗っていた少女の手が止まる。
何か思い出しかけたが、召使の女性から檄が飛び、思い出しかけたことを忘れてしまう。
【運】
「例えどうなっても、俺はあんな人生はゴメンですね。」
遠くから少女を見つめる青年が言う。
「アイツは、運命に負けた人間だな。俺の死んだじいさんがよく言っていた。『人間は自分の力では人生を変えられない』ってな。運なんだよ、この世の全ては。俺たちは運が良いから、こうして商人として、国々を渡り歩きながら自由に生きていける。あの奴隷には、それがなかったんだよ。」
「なるほど…。」と納得する青年は、「他には何か教えてくれましたか?」と質問する。
すると護衛の男は豪快に『食べ物の好き嫌いをするな。』と青年に言い放った。
【毒】
沢山の野菜と少女が洗った草が入ったスープが並べられた食卓。旅の一団はともに席につき、「森羅万象に感謝しよう。」と頭領の挨拶のあと、食事をはじめる。
少女にも、小さな器に入ったスープが渡されていた。
地面に生える、スープにも入った草をじっと見つめる少女は、先ほど思い出しかけた、あることを思い出す。
「あ…そうだ、毒、だ。」少女は「死んじゃう!」と、食事をする一団を止めようとするが、首の鎖の存在が少女の足を止める。
小さな声で「だめ。」と言い続けるが、その声は届くことなく、全員がスープを口に運ぶ。
「あ…そんな…そんな…なんで…なんで。」
少女が大粒の涙をこぼしながら俯いていくと、そこにはあの草が入ったスープがある。
「そうだ…私も、みんなと一緒に…。」
そっとスープに口をつけようとしたその時、少女の器に石が投げつけられた。
石を投げたのは頭領の息子で、少女が家畜のように食事をしようとしたから、石を投げたそうだ。
子供の行いを褒める両親は、子供を食卓へ戻す。
「残さず食べますから!」
母親に笑顔で答える子供。
その言葉を聞いた少女は、慌てて「ダメです、坊ちゃま!もう食べないで下さい。お願いします!もうこれ以上は食べないでください!その草には毒が…っ!」と叫ぶが、石をぶつけられてしまい、その言葉が届くことはなかった。
石をぶつけられた少女は意識を失い、気が付いた時には、毒草が入ったスープはすべて平らげられていた。
「あの奴隷ですけど、僕に安く売ってくれませんか?」
子供の声が少女の耳に届く。
「どうするのだ?」という父親の質問に、「殺します。」と答える子供は、戦える立派な男になるため、奴隷を殺すというのだ。
「ですから、アレを散々痛め付けて、その後で手足を撃って、それから腹を切り開いて、殺します。」
子供の言葉を聞いた父親は、「いいだろう。」と子供の主張を認める。
「まだ幼いと思っていたが、お前もそろそろ一人前の男になるべき時が来たと言う事だな。」
「ありがとうございます。敬愛なるお父様!」
そんな会話がなされる中、少女がゆっくりと起き上がった。
【雲の前で】
「ああああああああああああああああっ!!」
突然少女が叫び出す。
その声は、超音波のような、甲高い声だった。
叫び続ける少女を気味悪がった頭領は、「黙らせろ!」と使用人に命ずるが、次々と口から泡を、血を吐いて、人が倒れていく。
次々と人が死んでいく様子を、少女はキョトンとした顔で見つめていた。
【いつか分かる】
鎖を引きずりながら、フラフラと倒れた人々に近寄る少女。
ふと、うめき声が聞こえる。
それは少女に話しかけた護衛の男だった。
苦しそうにうめく男に駆け寄った少女は、「し、しっかりしてください!」と声をかけた。
「な、なにが…。」
突然の出来事に混乱する男に、少女は草に毒があった事、それを思い出すことが遅れたことを語り始める。
「そうか、スープの…。俺は、野菜が好きではないから、あまり食べなかったからか。」
息も絶え絶えの男は、あることを思い出す。
「お前は一口も食べなかった。いや、違う。お前は…あの時、豪快に…食べようとした…。」
男の指摘に、少女は懺悔の言葉を告げ始めた。
「そうです。私は、言えなかったんです。私はひどい人間です。あの時、一瞬だけ思ってしまったんです。『みんな死んでもいい』と思ってしまったんです。みんなを助けられなかったんです。私のせいで、みんな死んだんです。私は人殺しとして生きていたくないから、みんなと一緒に死のうとしたんです!」
その言葉を聞いた男は、「なるほど。」と納得の言葉を返す。
それから少女は、男に「私を殺してください。」と懇願する。
「あぁ、そうだったな。わかった。」
男は静かに少女の願いを聞き届け、自分の持っていた銃を取った。
「ダメだ。もう、力が入らん。お前、持て。」
少女は男から銃を受け取るが、使い方が分からないため、「どうすればいいのですか?」と問いかけた。
男は銃の使い方を教える前に、まず少女の首につけられた首輪を外す。
「どうだ?これで、撃ちやすくなっただろ。」
それから男は、銃の使い方を少女に教える。
持ち方や、引き金の場所を教え、そして少女の指をしっかりと引き金にかけさせた。
「指を外すなよ…っ!」
苦しそうに咳き込む男に、少女は動揺する。
「落ち着け…まだ死なん。それを、ゆっくり…持ち、上げろ。」
男の指示のまま、銃を持ちあげる少女。
その瞬間、男はスッと銃の先を掴み、バランスを崩した少女は、そのまま引き金を引いてしまい、銃弾は男の腹部を貫いた。
「ど、どう、して…?」
男の行動が理解できない少女。
しかし男はそんな少女に笑いかける。
「お前が…言った通り…いつか…わかる、さ。」
そして男は静かに息を引き取った。
【声】
「いやぁ~!お見事だ!みんなくたばっちまいやがったぜ!お前なかなかの策士だな。」
誰もいなくなったはずの場所に、声が響く。
それは旅の一団が使用していたトラックの中から聞こえていた。
「どこですか?どこに…?」
「ここさ。そんなに驚くなよ。さっきから話しかけてんだろ?まったくよ…。」
少女が覗き込むと、そこには小さなモトラドが1台鎮座していた。
「そうだよ。ここだよ?」
【星空の下】
焚火を囲む少女とモトラド。
久しぶりに外に出られたというモトラドの口調は軽く、「モトラド見るの初めてか?『どうして喋るの?』なんて言いやがったら、遠慮なくぶん殴るぞ。『どこが口?』とか聞いたら、蹴りを入れてやる。」と少女に遠慮なく話しかける。
「えっと…どうやって?」
少女の回答が気に入ったモトラドは、さらに言葉を続ける。
「ハッ!いい質問だ!お前ボンクラなのは外見だけで、実はなかなかデキるな。」
しかし明るいのはモトラドだけで、少女の表情は暗い。
モトラドが「自由になったのに、何故悲しい顔をする?」と質問。
「私、私、人殺しだ。」
「バーカ。最後のアレは男の自殺だ。毒草だって、気付かなかった連中のポカだ。」
少女の言葉は、すぐにモトラドによって否定された。
しかし少女はなおも「自分のせいだ。」と言い続ける。
「あの連中が食べるのを止めたってか?なわけねーよ。『嘘を言うな奴隷。』って鞭で打たれておしめぇだ。ま、どっちにしろ、連中は運がなかったんだよ。そしてお前には運があった。お見事!これからお前は自由さ。自由なんだよ?聞こえた?…もしもーし?」
モトラドの言葉を静かに聞いていた少女は、モトラドに質問を返す。
「どうやったら、私は死ねるの?」
「簡単さ!生きれば良い。生き物は生きればいつかは死ぬ。」
「そっか…生きなきゃ…いけないのか。わかるまで。」「そうさ。生きればそのうち人生は終わる。終われば死ねるのさ。」
「そっか…。じゃあ、そうするしかないのか。そうするか。」
少女の目に光が宿る。
それからモトラドは、少女にそうしてもらいたい理由を語り始める。
まずこの場から去ること。
そのために少女にトラックの運転方法を身に着けてもらいたい。
そしてトラックに金目の物を移動させることを提案する。
「それから?」
「それから?決まってんだろ!一緒にどっか行こうぜ。」
その後、モトラドは少女に名前を聞くが、少女には名前がなかった。
名前がないことにモトラドはたいそう驚いたが、「いつか思いついたら付けてやる。」と、少女の名前を付けることを約束するのだった。
「そうだよな。生まれたばかりの人間には、名前を付けねーとな。」
【雲の中で a】
山岳地帯で望遠鏡をのぞき込むキノ。「どう?」
「全員死んでる。たぶん。」
「たぶん?」
キノの足元には、草が生い茂っていた。「知らなかったんだ。これは高いところに生えるものだけには、毒があるんだ。あの人たちは知らなかったんだ。」
「それで全滅か~。」
キノの言葉を聞いたエルメスが、あっけらかんと返す。
「あまり、見たくない光景だなぁ…。」
「目をつぶれば?」
その時、風が吹き、キノとエルメスの姿は雲の中に隠れていった。
【あの日から】
「あいつほど数奇な運命を辿ってきた人間を、俺はまだ知らない。」
大きな屋敷の片隅に置かれたモトラドは語りだす。
モトラドと共にあの場所を去った少女は、放浪者になり、金持ちになった。
「今、カメラマンをやっている。」
少女は今の国にたどり着いたあと、すべてを打ち明けたのだ。「だが凄まじく幸運なことに、あいつは、移民として受け入れられた。そして、カメラマンになったアイツのことを、いつしか皆、【フォト】と呼ぶようになった。」
「かつて毒草が生える山の上でアイツは護衛の男にこう言った。『私は今、将来を試されているのだと思います。』今は同じことを思ってんのかどうか、俺は知らない。聞く事もない。」
モトラドが待つ家に、フォトが駆け足で帰ってきた。
「ただいま!ソウ!」
部屋に入る少女の笑顔に、かつての歪んだ笑顔はない。
「あいよ、お帰りフォト。」
(アイツは今、幸せそうに見えるからな。)
感想
フォトが最後にいい笑顔で笑っていることに、ホッとしました。
アニメ視聴前は、フォトって誰だっけ?と思っていたのですが、アニメ視聴後に思い出すことができました。
1話以来のab構成でスタートしましたが、原作にある手法で、最初は何のことかわからないことも、ちゃんと最後に「なるほど!」と納得できるように仕掛けられています。
しかしアニメも原作通り、主人公が関わりがなく終了したことに驚きました。
原作どおりの展開で、ホッとしましたのですが、主人公の出番があれだけとは(笑)
タイトルの「雲の中で」、ストーリーの間に入った「雲の前で」、「あの日から」は、原作の同じ巻に収録されたお話しではありません。
「雲の中で」は3巻に収録されているのですが、「雲の前で」は12巻、そして「あの日から」で描かれた、幸せになったフォトの姿は、「フォトの日々」として15巻に収録しているお話です。
ライトノベルなので、新刊がでるのに時間がかかりますから、原作を読んでいるときはいつの話かわからなくなったものです。
さて孤児から奴隷になったフォトですが、怖かったです。
原作は文字だけなので、ずいぶん気味が悪い子だな、くらいの印象しかなかったのですが、アニメは絵と音声がついているので、視聴しながら鳥肌がたちました。
フォトから話を聞いていたおじさんも同じ気持ちでしょう。
さらにフォトが叫ぶシーン。
声優さんの本気と言いますか、まるでフォトの声がきっかけで旅の一団が死んだように思ってしまうような声でした。
そして護衛の男についてですが、きっと彼は悪い人ではなかったのでしょう。
だからこそ、最後にフォトの自殺を妨害したのではないでしょうか?
でもフォトが言った「いつか分かる」って、重い言葉です。
何が分かるのか、まだ私には分かりませんが、とても重い言葉だと原作を読んだ時も思った記憶があります。
その後フォトは、モトラドのソウと出会い、カメラマンとして活躍するのですが、カメラマンになった経緯を覚えていないので、もう一度原作を読んでみようと思います。
次回は「歴史のある国」です。
人気投票では、12位に輝いたお話です。
キノの強さの秘密を握る人物、師匠が登場します。
この話は原作を読んだ時も、大声で笑いながら読んだお話ですので、次回が楽しみです。

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