タイトル:キノの旅 -the Beautiful World- the Animated Series『船の国』
放送局:AT-Xほか
放送期間:2017年10月6日~12月22日
アニメーション制作:Lerche
キャスト:キノ:悠木 碧/エルメス:斉藤壮馬/シズ:梅原裕一郎/陸:松田健一郎/ティー:佐倉綾音/師匠:Lynn/相棒:興津和幸 ほか
視聴したVOD:dアニメストア(2017年11月30日時点では無制限で見放題)
人気投票で3位に輝いた船の国です。
原作ファンに人気がある話だけに、期待値が高まりますね。
海を渡るため船の国を訪れたシズと陸。
そこは塔の一族が収める不思議な国で、旅人のシズは部屋と食事と引き換えに、仕事をすることになります。
そして不思議な少女ティーに出会い、船の国で過ごすシズは、船の国の深刻な現実を目の当たりにしました。
塔の一族に真実を問いただすシズの前に現れたのは、同じく旅人として船の国を訪れていたキノだったのです。
はたして船の国にはどんな秘密があったのでしょうか?
そしてキノは、いったいどういう形でシズの前に現れるのでしょう?
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あらすじ
【船の国】
「あれが船の国か。」
「船というより、浮島みたいですね。」
シズの言葉に陸が答える。
船の国は大陸の間を移動しながら、交易を行っているようだ。
「決めた。多少の心配はあるが、海を渡ろう。いいかい?陸。」
「私の許可など、必要ありません。シズ様。」
船の国へ入国したシズは、船の国を治める塔の一族と面会する。
「旅人、良く来られた。我らはこの国を治める塔の一族である。」どこまで行くか問われたシズは、「西の大陸までお願いします。」と返答。
「ならば丁度良い。この船は大陸沿いに進み、5日ほどで外洋に出る。西の大陸ならば、15日ほどで着くだろう。」
「仕事をすれば、我々と同じ眺めの良い部屋と食料を提供します。」
シズが仕事の内容を聞くと、「民衆の監視と治安維持です。」と塔の一族は答える。
船の国では、民衆による【嘆願】が増えており、多少痛めつけてもいいので、民衆の監視という仕事が旅人に提示されていた。
「もしくは民衆にまじっての肉体労働でもいいが、いかがかな?」
塔の一族は、そんな仕事を引き受ける旅人はいないと思いつつ、シズに問いかける。
しかしシズが選択したのは、民衆にまじっての肉体労働であった。
その選択にざわつく塔の一族。
「私のような下賤の者には、そちらの方が似合っております。」
【民衆の暮らし】
民衆が暮らすエリアを訪れたシズを、民衆はめずらしそうに見つめている。
シズに用意された食事は、一匹の魚だった。
「どうぞ召し上がってください。お口にあえばいいのですが。」そう言うのは、民衆を代表する長老だった。
長老に勧められるがまま魚を口にしたシズは、「とてもおいしいです。」と笑顔で返した。
「それはよかった。」
民衆の中でも長生きな部類に入ると言う長老は、まだ55歳という年齢だった。
船の国を訪れる旅人は、民衆を厳しく監視する仕事を選択していたということが語られる。
「塔から使わされた案内の者を紹介します。ティファナです。ティーとお呼びください。」
いつの間にかシズの後ろには小さな少女が立っていた。
ティーに対する民衆の視線は冷たい物だった。
【ティーとシズ】
船の国での生活スペースにたどり着いたシズ。
何も語らないティーに、「おやすみなさい、ティー。」と声をかける。
就寝時間を迎えた部屋で休むことにするシズは、「向こうの大陸で、私達が落ち着いて住める国があればいいが…。」とつぶやいた。
翌朝食事を済ませたシズは、案内役のティーにこれからのことを問いかける。
「何か仕事があれば、そこに連れて行ってほしい。今無ければ、この付近を出来る範囲で案内してほしい。」
シズの言葉を聞いたティーは、何も言わず歩きはじめる。
船の国の中を歩く2人と1匹。
「どこに行くんですか?」
陸がティーに質問するが、ティーは決して答えない。
「何故無口な人が案内人なのでしょう?」
「さあね。」
シズは陸にそう返しながら、ティーについて歩いて行く。
ティーについて歩きながら、船の国の中を見て回る。
船の国の民衆たちは、シズに対して「こんにちわ、旅人さん。」と和やかに声をかけていた。
翌日も、また翌日も、シズに仕事はなく、ティーの案内で船内を移動したり、用意された部屋で過ごすシズ。
「まだ5日か…。」
何もしない日々に、シズはいい加減うんざりした様子だった。
【船の国の欠陥】
食事にやってきたシズの視線の先で、老人たちが「また旅人がやってきた。」「塔の方に向かいましたけどね。」という会話が聞こえてくる。
そこに突然大きな揺れと、金属がきしむ音が聞こえてくる。
しかし民衆はそれに慣れているのか、特に慌てることもなく、穏やかな表情で日常生活を送っていた。
「ティー!この国は、いやこの船は、どういう構造なんだろう?そんなことが、少しでもわかる所は無いかな?」
シズの言葉を聞いたティーは、ある場所にシズを案内する。
「浸水しているのか。こんな場所が、もし多かったら…。」
ティーはシズを船の構造が分かる部屋へ案内する。
シズは船の見取り図を見つめながら、ティーに浸水している場所や、立ち入ることができない場所を指さすようにお願いする。見取り図にしるしをつけ終わったシズは、深刻そうな表情を浮かべる。
「私が数え間違えて無ければ、143箇所です。」
「どう思う?陸。」
「この国は、と言うよりこの船は、かつての技術を失ってると思います。壊れたり傷んだ場所は、修理せず放置しているのでしょう。ですから…。」
「やがてどこかから…崩壊する。」
「そう推論できます。」
船の国の大きな欠陥を知ったシズは、ティーと共に甲板に出る。
すると外は雨が降っていた。
シズはそっとティーが濡れないように、上着の中にティーを入れる。
上着に弾かれる雨音を聞くティーは、どうやらその音が気に入ったようだ。「この音が気に入った?じゃ、私も一緒に聞こうかな。」
【美しい景色】
船の見取り図を長老に提示したシズは、「船の修繕をしなくてもいいのか?」と問いかける。
しかし長老は、「すべて塔の一族が把握している。」とにこやかに答える。
「そうですか。では食料に不足はありませんか?この国では魚以外の物が手に入り難いようですが…。」
「シズ殿は真にお優しい方ですな。ご心配なく、私達は楽しく生きておりますよ。今までもそしてこれからも。」
まるで危機感がない長老の返答に、シズは眉をひそめた。
長老との会談のあと、気落ちするシズをティーはある場所へ案内する。
そこは船の国の頂上で、海は夕日で真っ赤に染まり、美しい光景が広がっていた。
「綺麗だ。」
「綺麗ですね。」
シズの言葉に陸が返す。
「ありがとう、美しい景色だ。お陰で、とても素敵な息抜きになった。」
ティーに礼を言うと、しばらくその景色を眺めて過ごす2人と1匹。
シズはそっと視線を民衆が住まうエリアに向け、何かを決断したようだ。
【用心棒】
部屋に戻ったシズは、日本刀を静かに帯刀する。
それからティーに部屋で待っているように言って、部屋を出ていくのだが、ティーはその後をついて行く。
塔の前にたどり着いたシズは、塔に向かってゆっくりと歩きはじめる。
ついて行こうとするティーだったが、陸が静かに袖を噛み、歩みを妨げた。
「旅人。そこで止まれ。」
塔の一族の声が響く。
そのとき船が激しく揺れはじめ、軋んだ音が鳴り渡る。
「お話があります。この音が聞こえますか。この国には、看過できない構造上の欠陥があります。民の命を預かる指導者として、どう思っているかお聞かせ願いたい。」
「どうとも思ってはおらん。ここは我らが収める国だ。されば国土も民衆も我らのものだ。何が、そして誰がどうなろうと、それもまた運命だ。」
「お考え、よくわかりました。」
塔の一族の言葉を聞いたシズは、再び歩みを進める。
すると塔の中からショットガンを持った塔の一族のものが現れる。
陸は慌ててティーを物陰に隠す。
「安心してほしい。命まで取るつもりはない。」
シズはそう言いながら歩み続けるが、塔の一族は動く気配がない。
「なかなか…やるね。」
そう言ってシズが刀を抜刀しようとした次の瞬間、ショットガンが火を噴いた。
弾を交わしたシズが応戦しようと構えると、塔の一族は何故かショットガンをシズに向かって投げ、代わりに別の銃を構えた。
その銃を見たシズは、ピタリと動きを止めた。
「驚いたな…。」
「僕も驚きましたよ。」
シズに言葉を返す塔の一族は、かぶっていたフードを上げ、その顔をあらわにする。
「君は…キノさん!」フードを脱ぎ捨てたキノは、「ここは戻ってもらえませんか?」とシズに問いかける。
しかしシズはそれを拒絶するので、キノは思わずため息を吐いた。
「キノ殿、何故戦いを止める?あなた方は仲間だったのか、最初からそのような企みだったのか。」
塔の一族の言葉に、キノは「いえ、そういうわけでは…。」と否定をするが、塔の一族は大陸に向かっていた進路を変更してしまう。
「え!?ちょっと待ってくださいよ。」
慌てるキノだったが、塔の一族は進路を変えることはしない。
「あなた達は死ぬまで民と暮らすが良い。」
【反旗】
反旗を翻したキノとシズ。
「キノさん、彼らの命までは!」
「大丈夫です。人口を減らす訳にはいかないとのことで、すべてゴム弾です。」
向かってくる敵を蹴散らしながら、塔の一族の元へかけていく3人と1匹。
「キノさんは、いつこの国へ?」「5日ほど前です。あなたはえーっと…お名前なんでしたっけ?」
「…シズだよ。」
「あぁそうでした。君は陸くんでしたね。」
そんな2人の会話の下では、ティーが床に落ちているナイフと手榴弾を見つめていた。
【次はお前だ】
塔の一族の前に立ったシズは、日本刀を構えたまま「降伏してほしい。」と言葉を発する。
「シズ殿。この国を陸に上げてどうする?」
「少なくとも、悲惨な環境から人々を救うことが出来る。このままでは全員死ぬ。」
「この国の王にでもなるつもりか?」
塔の一族の言葉に、シズは「…必要なら。」と覚悟を決めて答えた。「いいだろう、次がお前だ。そして一緒に生きろ。」
そんな言葉を残した塔の一族は、ふらりと倒れ込む。
突然の出来事に言葉を失くす3人と1匹。
塔の一族を名乗る者たちは、ただの張りぼての人形だったのだ。
【選択】
陸に接岸された船の国。
シズはティーに「今までありがとう。もう付いて来なくていいんだよ?」と声をかける。
船の国の民衆たちは陸に上がるが、その表情は晴れず、どこか不安そうに怯えている。
「シズ殿、いったい何がどうなったのですか!」
シズに詰め寄る民衆を代表して、長老がシズに問いかける。
シズは塔の一族との戦いのことを話しはじめる。
「彼らは全員、別の船に乗って別の国へ逃げた。もうこの国には居ない。これからは全員、陸の上で自由に生きていくことが出来る。」
しかしシズの言葉を聞いた民衆たちは、途方にくれていた。
次々と船の中に帰ろうとする民衆たちに、シズは船の国がやがて沈みゆく船だと言って説得を試みる。
「そんな嘘には騙されないぞ!今までしっかりと浮かんでいたこの国が、沈む訳がなかろう!」
シズの言葉に激怒する長老。
さらに他の民衆からも「旅人などに、故郷を愛する我々の気持ちは解るまい!」と言う言葉を聞いたシズは、「そうか。ではもう私から言う事はない」と言って民衆の説得を諦めた。
【ティファナ】
「私は失敗した。君も国に戻るといいよ。」
船の国へ戻っていく民衆を見送るシズは、残ったティーに声をかけた。
しかしティーは顔を下に向け、微動だにしない。
「どうした?早く戻らないと、置いて行かれてしまう…よ…っ。」
ティーが隠し持っていたナイフは、シズの腹に深く突き刺さる。「私に戻るところなんてない。」
ティーが初めて言葉を発する。
「シズ様!!」と慌てて駆け寄ろうとする陸と、銃を構えようとするキノ。「待ってくれ!!!」
しかしシズの鋭い声が1人と1匹を制する。
緊張感が漂う中、気の抜けた声が響き渡る。
「その女の子がティファナだね。なるほどー。」一人納得するエルメスに、「何故知ってるんだい?」とキノが質問する。
「倉庫番の黒服さんが教えてくれたんだよ。同じ人間じゃないよしみでさ。彼らの正体とか、その女の子のこととか。」
エルメスが倉庫番から聞いた船の国の話を語り始める。
「ティファナって船の名前だったんだ。600年ほど前、放棄されて無人だったあの国に、流れ着いた漂流船の名前。その船には、幼い数百人の子どもだけ乗っていた。大人は全部新種の疫病で死んじゃったんだってさ。」
「その子供たちの子孫が、彼らか。」
シズは口から血を流し、脂汗をかきながらエルメスに返す。
「そうだよ。そしてティファナ号を制御していた機械、人工知能が、あの船の国に乗り移って塔の一族になったんだ。」
人口知能は民衆をまとめるため、人々を生かすために塔の一族という架空の偉い存在になったのだ。
塔の一族は、民衆を生かすために、何度か陸に上がることを計画していたらしいが、陸で生きるすべを知らない民衆と、機械の身では民衆を他国から守ることができないと判断したのだった。
「それで私に「次がお前だ。」などと言ったのか。ティーのことは?」
シズはエルメスに続きを促す。
「その女の子は、元々船の国の人じゃないんだ。旅人の夫婦があの国で産んだ。そして、捨てられたの。黒服はその赤ちゃんに漂流船の名前を与え、大事に育てた。でも民衆は、血の繋がりがないその子を拒んで、関わろうとしないんだって。」
エルメスは淡々と、黒服から聞いた事実のみを語っていく。
ティーの真実を聞いたシズは、ギュッと口を閉じ、刺された腹部を抑えながら、ゆっくりとティーのに歩み寄る。
地面にはシズから流れ出た血液が落ちていく。
「ティー…、すまなかった。知らなかったとは言え、酷い事を言ってしまった。でも…俺は、君を、見捨てない、よ。これから、一緒に助け合って行こう。」
船の国の扉が閉ざされ、ゆっくり海へと進んでいく。
ナイフを手放したティーは、小さな声で「ありがとう。」とシズに伝えた。
「礼なんていらない。」
シズはゆっくりティーを抱き寄せる。
「でも…どう致しまして。」「俺も君も、あの国とはさよならだ。君はこれから俺、と…。」
シズがゆっくり倒れていく。
血を流し過ぎたシズの命が消えかかっていた。
「やだ…やだ…、置いてかないで…置いてかないで…。やだ…。」ティーはナイフと同時に隠し持っていた手榴弾を取り出す。
「心中するつもりだよ。」
抑揚なくエルメスが事実を述べる。
パースエイダーを構えるキノと、「やめろ!」と叫ぶシズ、そして手榴弾のピンを抜くティー。
キノは冷静にパースエイダーの引き金を引いた。
【渚にて 旅の始まりと終わり】
旅立ちの準備を進めるキノに、声がかかる。
「キノさん、色々ありがとう。」シズの言葉に首を傾げるキノ。
「まだ、ちゃんとお礼を言ってなかった気がする。ありがとう。」
シズの視線の先には、テントの中で気持ちよさそうに眠るティーの姿がある。
「どういたしまして。」
「結果到来だね!」
「…オーライ?」
「そうそれ!」
キノとエルメスの掛け合いを見つめるシズは、「じゃあ、またどこかで。」と別れの言葉を口にする。
「またどこかで。僕が旅を続けていれば、あなたがいつか住む場所に、たどり着くと思います。」「その時は、心から歓迎するよ。」
シズと別れ、再び走り出すキノとエルメス。
「ところでキノ。」
「ん?」
「将来またあの人と会ったら、その時は…。」
エルメスはいたずらっ子のような口調で話す。
「そうだね。あの人は、死ぬほど驚くかもね。」
キノもなんだか楽しそうな声でエルメスに言葉を返した。
感想
船の国は原作8巻に収録されている話です。
2話の出番のあと船の国だと、シズの苦悩とか、考え方がまったく表現されていませんから、アニメしか知らない人は、よくわからない話になってしまったかもしれませんね。
また1話という短い時間の中にまとめてしまったので、船の国の内情もあまり語られませんでした。
最初シズに提示された民衆の監視ですが、実は船の国ではいくつか派閥があって、暴動のようなことがたびたび起こっていました。
この辺を含めて、もう一度船の国を見ると、違った視線で見れるかもしれません。
しかし1話で綺麗に、必要な部分だけをまとめていると感じました。
幸せは人によって決められるものではなく、個人が自分の意思で決めるものだというのが、よく表れた話ですね。
元王子のシズは船の国の民衆を助けたいと考えていました。
しかし船の国の民衆たちは、これまで生活をしたことがない場所で生活をすることを恐れ、終わりが近い世界へ戻っていきました。
人がいう幸せと、自分の幸せの形が違って、だからこそ分かり合うことができないこともあります。
キノの旅は、どこか皮肉めいた話が多いですが、納得ができるように作られているのはお見事というしかないでしょう。
今後ティーはシズの旅に同行します。
その話がアニメで放送されるかどうかは楽しみですね。
ちなみにキノが最後にエルメスと話していた「死ぬほど驚くかもね。」というセリフですが、実は未だに驚かされていません。(笑)
原作でも驚く内容の種明かしがされていないのですが、アニメでもきっと種明かしがされないままでしょう。
次回は「嘘つき達の国」です。
原作では9巻に収録され、人気投票では14位に輝いたお話です。
この話は深いです!
とっても深い愛の話ですから、ぜひお楽しみに^^

小学生と幼児のママ。常に娘のコスネタを模索中。育児のストレスはアニメ鑑賞と妄想でリカバリー中。今のブームは型月&刀剣乱舞。
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