タイトル:魔法使いの嫁 第12話 ーBetter to ask the way than go astray.ー
放送局:TOKYO MX、MBSほか
アニメーション制作:Lerche
キャスト:羽鳥チセ:種﨑敦美/エリアス:竹内良太/ルツ:内山昂輝/シルキー:遠藤綾
視聴VOD:dアニメストア(2018年04月13日時点で視聴可)
ようやく完成した杖に触れた瞬間、チセの景色が一変します。
霧が立ち込める場所にいたのは、かつてチセが見送った竜、ネヴィンでした。
久しぶりに再会したネヴィンに、自分の思いを語るチセ。
それは目の前で自ら命を絶った母のこと、そして自分を置いていなくなった父のことでした。
両親がなぜチセの傍を離れたのか、その疑問がずっとチセを蝕んでいたのです。
しかしネヴィンと話をしたおかげで、チセには思いを伝えたい相手がいる事に気が付くことができたのです。
その想いは、遙か彼方にいる人の元へ飛ぶ力に変わります。
いよいよ前半終了!
チセの中で、気持ちに区切りがついたようです。
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あらすじ
【説明できない感覚】
(何もする気が起きない。夏だし、やることは色々あるはずなんだけど。)
自宅の庭にいるエリアスは、今はいないチセのことを考える。
(見せかけの弟子でよかった。だから適当に買って、適当に観察して…それだけでいいと思って。)
思い出すのは、チセと過ごしたこれまでの事。
(珍しい性質のその子は、意外にも素直に僕に懐いてくれた。でも、彼女はあまりしゃべらない。)
チセはエリアスの弟子でもあるが、エリアスに頼ることはほとんどなかった。
(それを見ると説明できない感覚が二つ沸き上がる。)
【杖】
「エリアス…。」
ルツにもたれかかり、眠っていたチセが起き上がる。
その手には、完成した杖が握られている。
「できてた…。」
「できたか。ならば仕上げをしようかのう。」
いつの間に近づいたのか、覗き込むようにチセの背後にリンデルが立っていた。
リンデルはチセをテントまで連れて行く。
「眠くなるのは知らず知らず魔力を使っておるからだ。だから我々が作るものには、魔力がこもるのよ。」
本来であれば、師匠であるエリアスがチセにこのような知識を与えなければいけない、とリンデルは苦言を呈す。
「私が聞けないのが悪いんです。面倒掛けたくなくて…っ!」
そういうチセに、リンデルはでこぴんを一つお見舞いする。
「ヒヨッコの世話なんぞ、面倒のうちにも入らんわ。わしなどあれに何度手を焼かされたか!」
リンデルは呆れた様子で口を開く。
「何年やってもスキーは下手だ、スープは焦がす。力加減すら覚えんし、火すら満足に扱えんし。チセの方が余程覚えが良くて器用だ。そもそもあの骨はい(ごにょごにょごにょ)。」
たらたらと文句を言うリンデルに、チセは困り顔を浮かべて聞いていた。
「さて、お主の髪とこれ。」
リンデルは丸い宝石のような石を2つ取り出す。
「かなり前に知人に貰ったものだ。湖の底で千年、月の光と火の光を浴びた石だそうだ。淡いが足元を照らす導ぐらいにはなるだろう。」
リンデルはチセが作った杖を手に取り、鳥の目にその石をはめ込み歌い始める。
そしてチセの切った髪が、杖に絡みつき、杖は茜色に染まった。
「少し装いに回させてもらった。綺麗な夕日の色をしているからのう。これがお主の杖だ。大事にしやれよ。」
「はい…。」
チセはソッと、自分の杖に触れる。
【再会】
次の瞬間、チセの目に映る景色が一変する。
チセは霧深い森のような場所で、ブランコをこいでいた。
「ここは…?」
『やあ、久しぶりだね。小さな魔法使い。』
チセはブランコを飛び降りて、声をかけてきた存在に駆け寄る。
『私の枝を杖にしてくれて、ありがとう。』
「大事に、使います。」
そう答えてから、チセは周囲を見渡す。
「ここはどこですか?どうしてここに…。」
『杖によって、君と私に縁の糸が結ばれたから。』
ネヴィンによると、ここは境目。
旅人と旅を終えた者。
あちら側の者とこちら側の者。
決して交わることがない者が、交錯することが許された道だった。
『君の目にはこう見えるのか。美しい道だ。』
どうやらネヴィンの目には、違った景色が見えているらしい。
境目の景色は、見る者によって違う景色が見えるそうだ。
『君はいつも浮かない顔をしているねチセ。どうかな?ここは老いぼれしかいない。独り言でも吐き出してみては?』
チセはネヴィンの言葉に従い、胸の内を吐きだすことにする。
「私は…欲張りになっちゃった。」
チセは、エリアスに初めて会った時、いつ放り出されてもいいと考えていた。
だからエリアスに頼らず、自分の力でなんでも解決しようとしてきたのである。
「あの人が私のこと、どうとも思ってないから安心できて。家族だって、見せかけでも言ってくれたから…でも。」
チセはギュッと身を小さくする。
「いつの間にかエリアスが…あの人が話してくれないのが不満になって…寂しくて…怖くて…。」
何故興味がないままでいられなかったのか。
その気持ちが、チセの心を蝕んでいた。
「そうすれば多分不満なんて持たなくてよくて…いつ放り出されても諦められたはずなのに…。」
チセの言葉を聞いたネヴィンが、ゆっくり起き上がる。
『独り言に返すのは無粋なんだけどね。君のエリアスは、突然に君を放り出すなんてことをする人なのかい?そんなことを言ったりしたのかい?』
「ううん。」
『チセが恐れることが一度だって起きたことが?』
「ない。」
『なら天が落っこちる心配をするようなことはやめなさい。』
しかしチセにはそう考えられない理由があった。
それは自分を大切にしてくれたはずの、母のこと。
突然目の前で死んだ母のことだった。
『…私も独り言を話そうか。私はチセの母君と父君に感謝をしている。』
「え…。」
ネヴィンはチセに、獣の家族について語る。
獣は己が生きることが難しいと感じたとき、真っ先に子どもを見捨てたり、殺したりする。
己が生き残れば、子はすぐに産むことができるからだ。
『でもチセの母親はチセの首から手を離した。どうしてだろう?』
ネヴィンの言葉に、チセは何も返せなかった。
『どうしてそのまま、チセを手にかけなかった?産まなければよかったと泣いておいて、どうして己を断ったんだろう?』
「わからない…そんなの…。」
チセはギュッと自分の腕を握り締める。
ネヴィンは空を見上げる。
『私は…チセが来てくれたおかげで、最後に空を飛べた。』
『チセのおかげで救われた人や獣達がいた。』
『チセがおいでと言ったおかげで、救われた子もいる。』
『己をホイホイと捨てられる物みたいな、そんな風に低く見るということは、君に救われた我々を、どうでもいいものと言ってるのと同じだよ。』
「そんなこと!!」
「私は…でも…そうしようと思ってやったわけでもないのに…。」
しかしネヴィンは、本人に助けるつもりがなくても、わずかな言葉や掌が、誰かを救うことができると説いた。
『だから私は、君に己を誇ってほしいと思っている。誰かに手を差し伸べることができた、君自身を。そしてそんな君を残した、母君と父君に感謝している。』
「ネヴィン…。」
チセはその体に手を添える。
『名を呼んでくれるのか?ありがとう。リンデルに貰った素敵な名なんだ。』
ネヴィンは背中の羽を動かす。
『羽鳥チセ。君は自由だ。』
霧が立ち込める境目に、光が差し込む。
『君が呪いを抱えて生きても、その末にいつか墜ちても、全ては君の自由なんだ。だから誰かの為でなく、君自身がどうしたいかを考えてほしい。』
「っ…!?」
いつの間にか、チセの手には杖が握られていた。
『その杖は私の杖。どこにいても君の往く道を照らす。君はどこにでも行けるんだ。』
『私も、リンデルも、あの茨の子も。何もかもが繋がっていて、全ては等しくここへ戻り、また旅に出る。』
チセがネヴィンの方に視線を向けると、2人の間に濃い霧が立ち込めている。
『しばしのお別れだ。』
いつの間にか、チセの周囲は雲のような霧で覆われていた。
『そうそう。言いたいことも、聞きたいことも、すぐ言葉にした方がいい。言葉は時が経つほどに増えていくが、色を失っていくものでもある、から、ね。』
【今すぐ】
「チセ…チセ…チセ!」
「っ!!」
チセの目の前には、心配そうに見つめるリンデルがいた。
「ネヴィンに…会いました。」
「ネヴィンに?」
チセは唐突に頭を下げる。
「杖と寝床をありがとうございました。すぐに帰らなければならなくなったので、帰ります。お礼はまた今度させてください。」
「それはいいが、どうしたいきなり…?」
突然の出来事に、さすがのリンデルも戸惑っていたが、顔を上げたチセの表情を見て、何かに気が付いたようだ。
ルツも慌てた様子で、どこかへ走っていく。
「エリアスに伝えたいことがあるので。」
せっかくネヴィンに背中を押してもらったから、チセは頑張ってみようと思ったのだ。
「そうか、ではグィーを呼んでこよう。」
リンデルはチセに背中を向け、帰りの便を用意しようと歩き出す。
「ルツ!」
しかしチセはルツの名前を呼ぶ。
どこかに走り去ったルツは、チセの荷物を取りに行っていたのだ。
ルツはそのままチセの影の中に潜る。
(どこにでも行ける。すべては繋がっている。なら…。)
チセは地に杖を向ける。
「お願い。あの人の所へ繋いで。」
『行くの?』
『飛ぶんだ!』
隣人たちがチセの周りに集まってくる。
『助けてあげる。』
『貸してあげる。』
『飛んでいこう!世界を巡る炎の翼で!』
「翼で…。」
チセは炎を纏う鳥に姿を変え、大空へ飛び立っていく。
「いやはや…大人しい娘と思っていたがもしかするとクズリかもしれんな…。」
チセはドラゴンよりも早く、空を駆ける。
それは、ただあの人に会いたい気持ちが、早く早くとチセを囃し立てているからだ。
【BGM:Here/JUNNA】
チセはようやく、帰るべき場所を見つけたのだ。
【ただいま】
チセがいきなり帰ってきたことに、エリアスは言葉を失くしていた。
「チセ…。」
「ほ、本当はエリアスみたく帰ってくるつもりだったんですけど、妖精たちが…。」
チセは必死に、どうしてこのような事態になったか説明するが、その途中でエリアスがチセを力いっぱい抱きしめた。
「ほんと。結構無茶なことするよね、君。」
エリアスはそっとチセを地上に降ろす。
「おかえり、チセ。」
「ただいま帰りました。エリアス。」
そう言ったところで、チセの体がグラリと揺れ、エリアスに抱き留められる。
「やっぱり!ドラゴンの国からどれだけあると思ってるのさ。魔法で飛ぶなんて、バカにも程があるよ。」
「バカ…杖もあるし、大丈夫かと。」
倒れたチセの影から、ルツが飛び出してくる。
「いいからひと眠りしな。」
エリアスはチセを抱き上げる。
(早く…言いたいことが…あるのに…。)
チセは眠気に抗えず、そのまま瞳を閉じてしまった。
「温いなぁ…。」
エリアスの元に、シルキーが駆け寄ってくる。
手には毛布が握られていた。
【夢】
「お母さん。お母さん。怖いのがいる。」
小さなチセが、道の途中にいた黒い何かを指さした。
「そうね。だけど怖がっちゃ駄目よ。怖がったらもっと寄って来ちゃうから。」
母は小さなチセの手をしっかり握る。
それでもチセは怖くてたまらなかった。
「大丈夫。お父さんがいれば寄ってこない!」
父はチセを肩に乗せて笑っている。
「チセはもうお姉ちゃんだからできるよね。」
「うん。」
母のお腹は大きく膨らんでいる。
「えらい、チセ!」
【毛刈り】
ベッドで目を覚ましたチセは、ゆっくりと起き上がる。
「お母さん泣いてなかった。怒ってもなかった。あんなこと…あったんだな…。」
チセがベッドの横にある窓のカーテンを開ける。
するとビシッと何かがへばりついていた。
「っ…。」
驚いたチセが、窓を開けると、外でその何かが悠々と飛んでいるではないか。
「おはよう、チセ。」
「ルツ。おはよう、これ何事??」
「ああ。大変だな。早く散らばってくれないと追いかけたくなる。」
犬としての本能が、ルツをうずうずさせているらしい。
「悪くない夢を見ていたようだな。」
「うん。」
チセはすり寄ってきたルツを優しく撫でる。
そして部屋の前に佇むシルキーにも、笑顔で挨拶をした。
「チセ。」
窓の外からチセを呼ぶエリアスの声がする。
「おはようございます。エリアス。」
「二日で目が覚めてくれて、よかったよ。」
エリアスの腕の中には、謎の生き物がいる。
「これは…。」
「毛刈りの時期だ。」
【美味しい】
(不思議だな…。)
チセは朝食を食べる前に、お風呂場へ向かう。
(少し前までは、自分がこんな暖かい場所にいることなんて想像もできなかったのに…。)
湯船につかったまま、チセは窓の方を見る。
(だけど…今は…。)
その顔はとても晴れ晴れとしていた。
入浴後、チセはシルキーの作った料理を食べる。
「美味しい。」
感想
魔法使いの嫁、前半が終わりました。
魔法使いの嫁がアニメ化すると知って、一番楽しみにしていたのは、第12話のラストシーンです。
火の鳥に姿を変えて、エリアスの元に帰っていくチセの姿は、まるで不死鳥が生まれ変わる瞬間のような感動がありました。
エリアスと離れたことで、チセは落ち着いてエリアスと出会ってからのことを考えることができました。
チセの中の柵は、たぶんほとんど解消されていません。
それでも、エリアスと出会ったことで、チセの中に大きな変化が起こったのは間違いありません。
それがよくわかる演出が、第12話にはふんだんに盛り込まれていました。
特に、私が一番観たかったと紹介した火の鳥に代わるシーンは鳥肌ものでした。
火の鳥に変わって、エリアスに向かって飛んでいくシーンで流れたのは、このアニメのOPです。
JUNNAさんが歌う【Here】です。
この曲は1~12話までのテーマ曲で、力強い歌声なのに、今にも泣きそうな、そんな声で歌われています。
曲の途中で、伴奏が無くなり、歌だけになる部分があります。
無力で無意味な自分がそれでも心で泣くんだ
こっちへおいでと 声が聞こえる
空高く跳び上がったチセが、エリアスのいる場所を見つけて、飛んでいくシーンです。
私はこのシーンで号泣しました。
【Here】は、本当に魔法使いの嫁にピッタリな曲で、第12話で聴けるのが最後だと思っていたファンに、制作サイドは素晴らしい演出をプレゼントしてくれました。
このシーンは、絶対アニメで見なければいけないシーンです!!
アニメが無理でも、あらすじを読みながら曲を聴いてほしい!!
そしてもう一つ。
エリアスの元に戻ったチセが、シルキーの作ったご飯を食べて「美味しい。」と呟きました。
初めてこの家に来た時、彼女の瞳に光はなく、食事も生きるために必要だから摂取するという風体だったのに、初めて「美味しい。」と口にしたのです。
たった一言ではありますが、チセはいい方向に変わったとよくわかる演出です。
さて魔法使いの嫁は、まだまだ続きます。
放送時点では、原作が完結していなかったのですが、アニメは原作のその先まで放送すると決まっていて、ちょっとした騒動になりました。
原作よりも、先にエンディングを放送するアニメで、成功した作品はほとんどありません。
魔法使いは、はたしてどのような結末で終わるのでしょうか?
最後まで魔法使いの嫁という世界観を、楽しもうと思います。
小学生と幼児のママ。常に娘のコスネタを模索中。育児のストレスはアニメ鑑賞と妄想でリカバリー中。今のブームは型月&刀剣乱舞。
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